啄木鳥(キツツキ)の仲間
*一般にキツツキと呼ばれているが、~ゲラと呼ばれる鳥の総称であり、キツツキという名
の鳥はいない。名前にゲラ(ケラ)がつくのでケラ類とも言われる。ケラの語源は「ケラツツキ」
で「ケラ」は虫を意味し、「木を啄(つつ)き、中の虫を捕食すること」に由来する。
日本で見られるケラ類は、アカゲラ、オオアカゲラ、コゲラ、ヤマゲラ、クマゲラ、コアカゲラ
、アリスイ、エゾアカゲラ、エゾオオアカゲラ、エゾコゲラ、(ミユビゲラ)など。
(1)アカゲラ(赤啄木鳥)・・・ケラ類で最もよく出会うのはアカゲラで、街中の公園などでもよ
く見かける。全長約25cm、背中に大きな逆八の字の白斑があり、下腹部は赤い。雄は
後頭部が赤い。鳴き声は「キョ、キョ、キョ」と鋭い。繁殖期の囀りはしない。また、「ロロロロロ
ロ」と音をたてて木をつつく(ドラミング)。これは、縄張りの示威行動でもあると考えられる。
中部以北の留鳥である。
(2)オオアカゲラ(大赤啄木鳥)・・・アカゲラによく似ているが、やや大きく、全長約28cm、
腹部に黒い縦縞があるのがオオアカゲラの特徴。雄と幼鳥は頭頂が赤い。北海道~九州
の山林にすむ留鳥。鳴き声は「キョッ、キョッ」で、ドラミング音はアカゲラより大きい。
(3)コゲラ(小啄木鳥)・・・北方四島~沖縄まですむ留鳥で、低地から亜高山帯まで生息
する。寒冷地では冬季は暖地に移動する。全長約15cmで、日本では最も小さいキツツキ
。雄は後頭部の両側に数本の赤い羽色があるが目立たない。4~5月に枯れ木に巣穴
を堀り、1腹5個の卵を産む。秋~冬は平地の移動し、カラ類の群れに1~2羽で入ってい
ることが多い。鳴き声は「ギィー、ギィー、キキキ」と聞こえる。餌は虫を好むが、種実も食べ
る。
(4)ヤマゲラ(山啄木鳥)・・・日本では、北海道だけにいるキツツキで、これとよく似たアオ
ゲラは北海道にはいない。全長約29.5cm、背面は緑褐色の羽毛で覆われる。頭部の羽
毛は灰色で、嘴の基部から頸部にかけて黒い筋模様が入る。雄は頭頂部の羽毛が赤い。
春先木の幹の傷からしみ出す樹液を好む。鳴き声は、「ピョー、ピョピョピョ...」と聞こえる。
(5)クマゲラ(熊啄木鳥)・・・東北から北海道にかけての原生林にすむ日本最大のキツツ
キで、全長45~57cm、体重0.2~0.4kg、絶滅危惧種で天然記念物。独特の鳴き方
で「キョーーーーン」を繰り返す。飛び立つとき「ピョッピョッピョッピョッピョッ・・・」と鳴く。
全身黒い羽毛で覆われ、雄は頭頂から後頭にかけて赤い羽毛で覆われる。雌は後頭のみ
赤い羽毛で覆われる。食性は動物食傾向が強い雑食で、主にアリを食べる(1日当たり最
高1000匹))が、その他の昆虫(キクイムシ類の幼虫で1日当たり最高900匹)、果実も
食べる。
(6)コアカゲラ(小赤啄木鳥)・・・日本では留鳥として北海道の落葉広葉樹林が混じった
針葉樹林に周年生息するが群れはつくらず、単独かペアで生活するか、冬季にはシジュ
ウカラ類の群れに混じって行動していることがある。繁殖期には縄張りを形成する。食性
は雑食で、繁殖期には昆虫(甲虫類の幼虫)など動物性のものを食べ、非繁殖期には主
に果実や種子など植物性のものを食べる。
(7)アリスイ(蟻吸)・・・日本では、北海道や本州北部では、、夏季に繁殖のため飛来し
(夏鳥)、本州中部以西では、冬季に越冬のため飛来する(冬鳥)。
全長17~18cm、背面は灰褐色の羽毛に覆われ、褐色や黒褐色の複雑な斑紋が入る。
頭頂から背面にかけて暗褐色の太い縦縞が入り、側頭部から肩部にも黒い斑紋が入る。
喉から胸部にかけて黄褐色の羽毛で覆われ、黒褐色の横縞が入る。尾羽には黒褐色の
横縞が約5本入る。食性は動物食で、主にアリを食べ、和名の由来になっている。
開けた森林、林縁、草原、湿地などに生息する。樹上では木の枝に対して水平に止まる。
警戒のyために頻繁に首をかしげるような行動をとる。鳴き声は「キィキィキィ・・・」と聞こ
える。
その他
(1)石川啄木の「啄木(たくぼく)」の号(ペンネーム)は「啄木鳥(きつつき)」に由来する。
17歳で文壇にあこがれて上京したが、収入の道が得られず、栄養失調になって故郷(岩
手)に連れ戻された。その療養中に彼の心をなぐさめたのは、窓の向こうの深い森から絶
えず響いてくるキツツキの音(ドラミング音)だった。静かな空気を伝わってくるその「閑寂高
古の響」は、失意の彼の心を清め、再び歌に向かう気持ちをかきたてた。
以来、号を「啄木」と改め、そのことを『無題録』という文章に記した。
肺結核で26歳で夭折。歌集『一握の砂』『悲しき玩具』、詩集「呼子と口笛』など。
(2)クマゲラはアイヌの間では「チプタ・チカップ」(=船を掘る鳥)と呼称され、熊の居場所
を教えたり、道案内する神として崇められていた。
(3)ピ(-)クス(picus)・・・ローマ神話に登場する古代イタリアの農業神または王。名前
はラテン語で「キツツキ」という意味で、ピクスは変身することができ、特にマルスの聖烏で
あるキツツキに変身するのを好んだ。別の説では、魔女神キルケの求愛を退けたために
キルケにキツツキに変えられてしまたという。予言の力を持っており、マルスの神殿の木
の柱にとまって神託を下したという。未来のこと、特に天気を予言する力を持つと信じられ、
畑と家畜の守護者として農民や牧人に崇拝された。
(4)ドングリキツツキ(団栗啄木鳥)・・・北アメリカから中央アメリカにかけて分布するキツ
ツキで、森林に生息し、群れ(家族)で縄張りを構えて生活する。枯れた木に大量な穴を
あけ、その中に餌であるどんぐりを1個ずつ貯蔵する習性ががある。その他昆虫や果実も
採食する。(参考)→
http://cgi4.nhk.or.jp/eco-channel/jp/movie/play.cgi?movie=j_darwin_20100808_0516
(5)「啄木鳥や 落ち葉をいそぐ 牧の木々」(水原秋桜子)
*解釈:「や」が切れ字で、「啄木鳥や」の初句切れ。季語は啄木鳥(晩秋)。感動の中心
が啄木鳥あるので、落ち葉(冬)は季語ではない。
「落ち葉をいそぐ」という擬人法の美しさを感じる。落ち葉がしきりという情景を「いそぐ」と
捉えた視線の妙を感じる。また、「いそぐ」という言葉の裏に、{いそいでほしくない」という
「惜秋」の心情がある。「キツツキヤ」「マキノキギ」のように「キ」の音を多用して。啄木鳥
が木の幹を連打して虫を捕食するドラミング音のリズム感が、はらはらと降り急ぐ落ち葉
の印象をより鮮やかにしているようだ。
(6)ネイティブアメリカン(インデアン)フルートはキツツキの贈り物
このフルートは求愛の際に用いられたことから、「ラブフルート」と呼ばれることがある。
一人の若者がいて、ハンターとしては勇敢だったが、酋長の娘に自分の愛を告白できな
い内気な面もあった。狩りの途中で野宿したある夜にキツツキの夢を見た。キツツキは
「若者よ、我々はお前のことは知っている。お前がよい人間だということも。お前が恋に
悩むことも。我々精霊が作る笛をお前にやろう。その音色は精霊の歌であり、愛の歌で
ある。」と言った。若者が目を覚ますと、なんとキツツキが目の前にいるではありません
か。キツツキは若者が起きるのを確認するとゆっくり飛び去った。まるで若者よに「つい
て来い」といざなうように。若者がついて行くと、やがて大きな杉の木にたどり着いた。
キツツキは枝に取り付いて、クチバシで孔を開けはじめ、やがて枝っフルートに変わった。
(7)キツツキのドラミングの回数
* コゲラ・・・1秒間に25回。1スパンが0.3秒で8~9打、1打目が最も強くだんだん
弱くなる。
*アカゲラ・・・1秒簡に18~22回。0.6秒で13打。平均間隔0.05秒。
*オオアカゲラ・・・1秒間に16回。1.8秒で29打。平均間隔0.06秒。
*クマゲラ・・・1秒間に18回。1日9,000~12,000回。
*アリスイ・・・抱卵交代など、繁殖期にドラミングを行うことがある。
秋分の日
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます