すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

欲をかくなと教えてくれる

2020年05月23日 | 雑記帳
 私をタケノコ(ネマガリダケ)採りに連れだしてくれたのは、亡くなった叔父である。学生の頃が最初だったと思う。栗駒のシーズン期に数年兄らと一緒に出かけた。見つけて手を伸ばしながら次を探すような「山菜取りあるある」が身についた。その場で調理したり温泉に入ったり、楽しかったことが思い出される。


 30~40代は休日も忙しくしていたため、ほとんどそうした機会はなかったが、50代から近くの里山に入り、自然から頂く恵みをまた採りはじめた。知識がないので限られた種類しか手をのばさないが、秋キノコを含めてもタケノコが一番面白い。しかし遠くまで出掛ける技量はないので、シーズンはわずか2週間だ。



 4月のタラノメ、スジノコ等が終わり、数本見え始めたのが5月連休の翌週。その週末にはわずか1時間半で結構な量が採れた。残り1週間ぐらいで終わりになるだろうと少し心が逸った。だから木曜朝は小雨ではあったが、もう一度入ることにし合羽姿でポイントへ向かった。前回ほどではないが程々に生えている。


 小雨が止まずそろそろ上がりと道の方へ向かっていたら、細い水の流れを挟んだ向こう側に背の高い竹林がある。ちょっと入るかと欲が出てきた。近くでは樹木伐採作業があり泥が流れ込んでいるが大丈夫だろうと、足を踏み出した瞬間、ズボッと嫌な音とともに長靴が泥にめり込んだ。おおっ、蔓に捕まるしかない。


 田植え時の水田レベルを超えズブズブ深い感じだ。必死に片足を踏ん張り、蔓を引っ張って脱け出た。ああこれは「欲をかくな」と誰かが教えてくれている。採取する幸に加え、野鳥の声を近くに聴く楽しみも、そしてちょっとした辛苦も味わわせてくれる自然の深さを想う。導いてくれた叔父に今さらながら感謝した。