すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

今日も少しだけ背伸びする

2020年05月06日 | 読書
 風呂場で読んでいる(笑)「新書」篇ということで三冊。


 『人生の教養』(佐々木常夫  ポプラ新書)

 六年前に年休をとって隣市で行われた著者の講演会を聴きにいった。「ライフワークバランス」ということが盛んに言われ出した頃だ。
 しかし教育関係の見知った顔はたった一人だけという記憶がある。

 この本の読者層もビジネスマンだと思う。しかし「人生」と銘打っているように、仕事だけでなく日々の生き方そのものに繋がる知見は多かった。
 著者自ら「偏見のある教養論」と称しており、「役に立たない教養」など何ほどのものか、自らの人生を楽しく幸せに生きろ、と力強く自分の経験を吐露する。
 あくまで「実践者」として生きるための糧、例えば「内省が経験を識見に変える」といったフレーズに溢れている。


 『小林秀雄の警告 ~近代はなぜ暴走したのか?』
        (適菜 収  講談+α新書)


 まったく初めて読む著者。そしてこれほど引用の多い書も初めての気がする。その点について、著者はこう書いている。

 「自分で改めて書くよりもそちらのほうが早いし、正確であるからだ。内容に関しては100パーセント、先人の知恵のパクリである。そもそも、世の中にあふれている文章は、出典を明記しないか、出典を特定できない引用にすぎない」

 この潔さに感服、納得する。
 独創的とか個性的とか簡単に表現するが、それらの99%はパクリであると大半の人は薄々気づいているのだが…。
 この点を確認できただけでもこの本は価値がある。小林秀雄自体は難しい箇所が多く、圧倒的に読み慣れ不足ということを自覚した。

 価値を判断する能力を高めるためには、とにかく「一流のものにあたること」。
 心してきたが、すぐ堕落してしまう自分に、喝だ!



 『人生の結論』(小池一夫  朝日新書)

 漫画原作者として著名な著者が秋田県出身者とは知らなかった。
 「75歳でツイッターを始めて7年が過ぎました」が、第一文目である。
 それだけで、この書名で語る意義の重さが計り知れる。
 付箋をつけた箇所を拾ってみる。

 「『成熟した大人』とは、自分が成熟していないニセモノの大人であると自覚している大人のことなのです。そして、少しでもホンモノになろうと考えることができる大人のことなのです」


 「安いもので本当にいいものはない、安いわりにはいいものがあるだけだ。いいものは確実に高い。しかし、高くても悪いものはたくさんある」


 「格好いいと思う人の基準は様々ですが、自分が格好いいと思うことを、少しだけ背伸びしてすることは大事なことです。なぜなら、背伸びをした分だけ自分の背は伸びるのです。成長するのです」


 この文章に続いて「少しだけ」の意味が語られる箇所に、人生の達人としての慧眼が見える。曰く「大きく背伸びした自分は不安定で見苦しい」。


 さて、こうした著者自身の言葉に加え、情報感度の高い著者が引用した言葉にも惹きつけられた。

 長くなったので、これは明日に。