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頑張るのは被災者じゃなくて

2011年04月26日 | 読書
 朝日新聞出版のAERA誌は、たしか震災直後の号では不安感を煽る表紙写真ということで批判をうけたような記憶がある。まあ、それはともかく、先頃出した増刊『東日本大震災100人の証言』は読み応えがあった。
 それはいわゆる執筆している識者の範囲の広さ、そして実際に被災された方々の生の声が豊富であるという2点だろうか。

 昨日の職員会議で一部(釜石の防災教育のこと)紹介したことで、ひとまず読了という形をとろう。
 印象深い文章が非常に多いが、いくつかをメモしておきたい。

 山折哲雄の書き出しに目が留まった。

 テレビを見ていて心に残るのは、被災者の方々の穏やかな表情です。

 日本人は、不安定な自然と付き合う中で「天然の無常」という感覚を身につけたという寺田寅彦の文章を紹介しながら、そこに大きな可能性を見いだしている。
 その日本人の心性を自分はまだ理解、実感できないが、確かに心打たれるいや励まされる指摘ではある。

  地震直後の週明けにバス23台をチャーターして福島まで駆けつけ被災者を迎えたという、群馬県片品村の千明村長の一言は、饒舌ではないが政治家としての矜持にあふれている。

 村を守るのは村長、国民を守るのは国ですから。

 熱い思いを感じさせてくれる行動力は、誰かも見習ってほしい。

 さて、東浩紀は今後のことについてこういうふうに文章を結んでいる。

 社会的恐怖心とどう向き合い、どう克服するかが、この社会の課題です。

 原発問題は言うまでもなく、経済の下降、様々な影響を受けて「ストレスフルな社会」で「見えない不安」が高まるという。
 東は、単なる我慢という精神論に傾かず、知恵を出し合って「反転攻勢」に出なければならないと強調する。

 「今、自分にできること」と喧伝されてはいるが、これはすぐに実行されるべきことと、先を見据えて取り組むことの二種類なのだということをもう一度確認したい。

 「私たちにできること」というテーマの最後のページ。
 阪神大震災の被災者だった今井さんという方が書かれてあることは、実感の伴った貴重な提言と心がけだと思った。
 震災から数年経って一見復興しているように見えても、苦しんでいる人が多く、自殺する人の話も聞いたという。その経験を踏まえたこの結びの一言は重い。

 いま、被災者の人たちの悲しみをわかろうとしても無理。私自身、震災後の記憶はほとんど抜け落ちて、今ものみ込めていない。頑張るのは被災者じゃなくて、私たちです。