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「ビッグモーター不正」でSOMPOの役員が大量退陣 自己保身の体質が招いた保険金不正請求の隠蔽 2024/01/27 05:30東洋経済オンライン

2024-01-27 12:11:59 | 日記
「ビッグモーター不正」でSOMPOの役員が大量退陣 自己保身の体質が招いた保険金不正請求の隠蔽
2024/01/27 05:30東洋経済オンライン



中古車販売大手ビッグモーター(BM)による保険金不正請求問題をめぐって、金融庁から業務改善命令を受けた、損害保険ジャパンと親会社のSOMPOホールディングス。両社は1月26日、不正請求の隠蔽やずさんな経営管理体制といった一連の経営責任を明確化するため、トップを交代する人事を発表した。

損保ジャパンは、白川儀一社長が1月末で引責辞任。後任には、石川耕治副社長執行役員を充てる。SOMPOは、13年間にわたりグループの「ドン」として君臨してきた櫻田謙悟会長兼グループCEOが3月末で退任。事実上の引責辞任となり、経営から完全に身を引くという。グループCEOの後任にはSOMPOの奥村幹夫社長兼COOを充てる。

首脳陣だけでなく、BM不正問題で責任を問われているほかの役員についても、更迭などの処分は必至だ。記者会見では、処分について「検討している段階」(石川副社長)と述べるにとどめており、2月中にも最終案をまとめる。

厳しい処分が予想される役職員は、損保ジャパンの西澤敬二会長を筆頭に、飯豊聡副社長、中村茂樹監査役(前専務)、大倉岳・プライムアシスタンス社長(前保険金サービス企画部長)、中田益見・東京保険金サービス部長、渡邉健司・調査部長、重定祐輝常務(前営業企画部長)ら計9人。西澤氏を除く8人については、BMへの事故車の紹介を強引に再開することを決めた役員ミーティングの出席者だ。
「自らの評価を下げたくないという自己保身」

出席した大半の役員は「自らの評価を下げたくないという自己保身で、BMへの追加調査は不要としてみたり、真偽不明の他社情報で入庫再開に誘導してみたりといった言動に終始していた」(金融庁幹部)という。



損保ジャパン会長の西澤氏については、2022年4月に社長ポストを白川氏にバトンタッチしており、不正問題をめぐる責任は小さいとの見方がこれまで多かった。一方で、適正な損害の査定と保険金の支払いという損保の根幹業務を担う保険金サービス部門で、人員を大幅に削減する「抜本改革」を社長在任中に実施。もともと社内力学上弱い立場にあった同部門がさらに弱体化し、BMの不正請求を助長する土壌を生み出した責任がある、と金融庁は指摘する。

他方で、その西澤氏が社長在任中に頭を悩ませていたのが、ほかでもないグループCEOの櫻田氏だった。

櫻田氏は損保ジャパンなど子会社を「事業オーナー制」とし、人事などの権限を委譲して経営のスピードと独立性を高める体制を敷いたはずだった。だが、実態は「櫻田が箸の上げ下ろしにまで神経質に目を光らせ、強引に手を入れようとしてくることが少なからずあった」(損保ジャパン役員)という。

親会社のSOMPOの役員たちも、常に「強いプレッシャーを感じていた」(金融庁)とされ、定例ミーティングなどでの櫻田氏への状況報告を、「『俺は嫌だから、お前が行けよ』と、(損保)ジャパンなど子会社の役員に押し付けるような姿が年々目立つようになった」(損保ジャパン役員)。
バッドニュースが適切に報告されない企業文化

BM不正をはじめとした経営上のバッドニュースが、「適時・適切に報告されない企業文化」(金融庁)は、そうして醸成されていった。さらに、櫻田氏らSOMPO首脳陣のリスク感度が鈍いことから、重大な不正事案に対して親会社として踏み込んだ実態把握や情報分析に動こうとせず、不正による被害を拡大させることにつながっていったわけだ。

櫻田氏は13年間もグループのトップとして、また損保ジャパンの取締役として経営を指揮しながら、金融庁に「機能不全」「崩壊」と断じられるような経営管理体制と内部統制に甘んじてきた。そのことの責任はやはり大きい。



一方で、会見で櫻田氏は「グループの最高経営責任者として、(BM問題の)結果責任はとる」と何度も強調し、金融庁に指摘された悪しき企業文化や体制を生み出した原因や責任については、多くを語ろうとしなかった。受け答えの端々に、「自らが作り上げた統治体制を批判されたり、否定されたりする筋合いはない」との思いがにじみ出ているかのようだった。

昨夏までは、会長職として当面居座る腹積もりだったとされる櫻田氏に、金融庁が引導を渡すことにこだわったのは、このような周囲の意見に耳を貸そうとしないトップがもたらす経営への弊害が、看過できないほどに大きいと判断したからだろう。
石川氏は櫻田氏の「側近中の側近」

今後、SOMPOと損保ジャパンの両社は経営体制を刷新し、出直しを図る狙いだが、懸念は残る。

それは白川氏の後任となる石川氏が、昨夏まで5年間にわたって、主に櫻田氏の財界活動をサポートしてきた側近中の側近だったという点だ。


損保ジャパンの次期社長には、櫻田氏の側近だった石川耕治副社長が就く(撮影:梅谷秀司)

社内評では「櫻田氏にべったりという人物では決してない」というが、櫻田氏による「傀儡政権」という世間の見方をはたして払しょくできるのか。

会見で「新しい経営チームと共に、信念を持って新しい損保ジャパンを作り上げていきたい」と意気込みを語った石川氏には、長く険しい「茨の道が待っている」(金融庁幹部)。

著者:中村 正毅

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