【米国市況】国債下落、FRB利下げ急がずとの見方-ドル148円台
Rita Nazareth
2024年1月27日 6:56 JSTブルームバーグ
S&P500種小反落、ナスダック100も下落-週間ではともに3週続伸
ドルは対円で上昇、一時148円21銭-NY原油は2カ月ぶり高値
The Marriner S. Eccles Federal Reserve building in Washington, DC. Photographer: Valerie Plesch/Bloomberg
26日の米金融市場では国債が下落。この日発表された経済指標が強弱まちまちとなる中、米金融当局は利下げを決定するに当たり、辛抱強い姿勢で臨む方針を示唆するとみられている。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率
米30年債利回り 4.37% -0.1 -0.02%
米10年債利回り 4.14% 1.9 0.46%
米2年債利回り 4.35% 5.8 1.35%
米東部時間 16時54分
米国債は短期債を中心に下落。昨年12月の米個人消費支出(PCE)は市場予想を上回る伸びとなった。一方で、連邦準備制度理事会(FRB)が基調的なインフレを判断する上で重視する物価指標は、前年同月比の伸びがほぼ3年ぶりの鈍いペースとなったことを示した。
FRB注目のPCEコア指数が鈍化、好調な消費にもかかわらず (3)
政策当局者らは借り入れコストを引き下げる前に持続的な景気鈍化の兆しを確認したい考えを示しており、今回の数字は3月の政策転換がまだかなり微妙だとの見方を補強する。
1-3月(第1四半期)中に利下げが実施されるとの見方がなくなったわけではなく、市場は5月の利下げを引き続き完全に織り込んでいる。輸送混乱の影響がまだ表れていない中、すべては今後数週間に公表される経済指標次第になりそうだ。米連邦公開市場委員会(FOMC)は来週1月30、31両日に会合を開く。
LPLファイナンシャルのチーフ・グローバルストラテジスト、クインシー・クロスビー氏は「FOMCは利下げサイクル開始の『是非』ではなく、『時期』を議論するという見通しは変わらない」と指摘。来月公表される一連のインフレ関連データで2%への道筋がはっきりと視野に入らない限り、FOMCは5月か6月まで利下げ開始を待つ可能性が高い」と述べた。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのソリタ・マルチェリ氏は「米経済データは市場にとっての環境が良好なことを示唆し続けている。成長は底堅く、インフレは鈍化しつつあり、利下げが実施される見込みだ」と指摘。「米金融当局では5月に利下げしても問題ないと考えるだろうが、それまでに景気が冷え込みつつあることを示すさらなる兆候が必要になるだろう」と話した。
米政策当局者らが経済のソフトランディング(軟着陸)に関して勝利を宣言するのは時期尚早だと、モハメド・エラリアン氏は指摘した。この先の経済はインフレのスイートスポットから、もっと厳しい環境に移行するとの見方を示した。
ケンブリッジ大学クイーンズカレッジの学長で、ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストでもあるエラリアン氏は、昨年7-9月(第3四半期)と10-12月(第4四半期)の米経済は「驚くべきパフォーマンスだった」とブルームバーグテレビジョンで発言。しかし「米政権にとって大きなリスクは、昨年の成長押し上げ要因の一部がもはや存在しないため、景気が今年減速することだ。2番目に、インフレは下げ止まることだ」と述べた。
FRBのインフレ勝利宣言まだ早い、ここからが正念場-エラリアン氏
米国株
S&P500種株価指数は小反落。ただ、週間ベースでは3週連続高となった。大型ハイテク銘柄で構成するナスダック100指数は約0.5%安。インテルやKLAが期待外れな業績見通しを示したことで、半導体銘柄が圧迫された。
株式 終値 前営業日比 変化率
S&P500種株価指数 4890.97 -3.19 -0.07%
ダウ工業株30種平均 38109.43 60.30 0.16%
ナスダック総合指数 15455.36 -55.14 -0.36%
来週にはアップルやマイクロソフト、グーグル親会社のアルファベットなどが決算発表を予定している。
アメリカン・エキスプレス(アメックス)が7.1%高の201.43ドルと、終値ベースで上場来高値となった。同社は長期の収益目標を据え置いたほか、2024年通期の利益見通しはアナリスト予想を上回った。
企業ニュースではこの他、ジェットブルー・エアウェイズが同業スピリット航空との38億ドル(約5600億円)規模の統合計画について、今後数日に打ち切られる可能性があると警告した。クラウドベースの顧客管理(CRM)ソフトウエアを手掛けるセールスフォースは、従業員約700人を削減する。
外為
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は統計発表後に下げ幅を縮小する展開となった。米個人消費の見通しは堅調ながらも、FRBが重視するインフレ指数の伸びは鈍化した。週間では4週連続で上昇した。
為替 直近値 前営業日比 変化率
ブルームバーグ・ドル指数 1236.74 -0.80 -0.06%
ドル/円 ¥148.12 ¥0.46 0.31%
ユーロ/ドル $1.0853 $0.0007 0.06%
米東部時間 16時54分
クレディ・アグリコルのG10為替戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は「これは市場がもっと低調な数字を予想していた可能性を示唆する」と指摘。「しかし、この先に目を向けると、今回のデータはFOMC会合にかけてドルにそれほどプラスだとは思わない」と述べた。
ドルは対円では上昇し、一時0.4%高の1ドル=148円21銭を付けた。
1月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は、前年比上昇率が1年8カ月ぶりに日本銀行の掲げる物価目標の2%を割り込んだ。
原油
ニューヨーク原油相場は続伸し、2カ月ぶり高値。イエメン沖で燃料タンカーが攻撃され、地政学的緊張が原油供給に与えるリスクが浮き彫りになった。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は1バレル=78ドルを超えてこの日を終えた。終値ベースで昨年11月以来の高値。大手資源商社トラフィグラ・グループの委託でナフサを運んでいたタンカーが、アデンの南東約89キロメートル沖でミサイルに被弾した。ディーゼル油やガソリンといった石油製品の先物価格も急伸し、2カ月ぶり高値に達した。
原油価格は今週6%余り上昇し、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦争が始まって以来の大幅高となった。需給ファンダメンタルズの好材料に加え、アルゴリズムによる買いが価格を支え、テクニカル分析上の主要水準を突破した。ただ終値の相対力指数は9営業日ベースで買われ過ぎの領域にあり、これまでの大幅上昇が行き過ぎた可能性を示している。
原油価格の上昇は中東での緊張激化が支えている。イエメンの親イラン武装組織フーシ派が紅海で商船を攻撃しており、米軍はこれを抑止しようと同組織の拠点を空爆している。ウクライナとの戦争が長引くロシアでも製油所が無人機に攻撃され、ロシア産原油の流通が脅かされている。
原油価格は月初から8%余り上昇。米在庫が予想外に大量に取り崩されたほか、中国政府が景気刺激に取り組み、価格をさらに支えた。それでも石油輸出国機構(OPEC)の非加盟国による増産見通しに多くのトレーダーは慎重さを崩していない。インドなど主要輸入国での需要伸び悩みも懸念材料の一つだ。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物3月限は、前日比0.65ドル(0.8%)高い1バレル=78.01ドルで終了。北海ブレント3月限は1.12ドル上昇し83.55ドル。
金
ニューヨーク金相場は小幅安。週間ベースでは2週連続で下げた。FOMCが取る次の一歩を意識しながら、米PCE統計を消化する展開となった。統計を受けて米国債利回りは上下し、金もそれに伴って浮動した。
サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏によれば、2021年12月以来の狭いレンジで取引されてきた金には、1オンス=2000~2005ドルに強い支持線が見られる。欧米が将来実施する利下げの「タイミングとペース、深さについてもっと分かるようになるまで」金の上昇余地は限られると同氏は述べた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時5分現在、前日比3.23ドル(0.2%)安い1オンス=2017.61ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は70セント(0.1%未満)安い2036.10ドルで終了した。
原題:Bond Yields Rise on Bets Fed ‘Not Rushing’ to Ease: Markets Wrap(抜粋)
Dollar Down Friday But Heads For Fourth Weekly Gain: Inside G-10(抜粋)
Oil Jumps to November Highs After Another Merchant Ship Attack(抜粋)
Gold Poised for Second Weekly Decline After Mixed US Data(抜粋)