【日本市況】円高加速、月内のマイナス金利解除意識-株ほぼ500円安
上野英治郎
2024年3月7日 13:17 JST
更新日時 2024年3月7日 15:43 JSTブルームバーグ
148円台前半と2月8日以来の円高-連合の賃上げ要求5.85%受け
3月はマイナス金利解除か現状維持、4月に動くのは確実-みずほ証
Japanese flag at the main entrance of The Bank of Japan (BOJ) headquarters in Tokyo, Japan, on Tuesday, Nov. 14, 2023. Japan’s economy slipped back into reverse over the summer, underscoring the fragility of the country’s recovery and backing the case for continued support from the Bank of Japan and the government. Photographer: Kosuke Okahara/Bloomberg
7日の金融・証券市場では、円相場が対ドルで1カ月ぶりの高値に上昇している。賃金統計が市場予想以上に改善して日本銀行が次回の金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除する可能性が意識されている。長期金利は上昇して日本株は大幅下落に転じた。
実質賃金13カ月ぶり水準に改善、基本給堅調-日銀正常化へ追い風
今春闘の要求賃上げ率は平均5.85%、30年ぶり5%超え-連合
Bank of Japan Governor Kazuo Ueda News Conference After Rate Decision
日銀の植田総裁
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
連合が2024年春闘で参加の労働組合が要求した賃上げ率が平均5.85%だったと発表したことを受け、円相場は一時1ドル=148円台前半と2月8日以来の円高水準を付けた。18、19日の日銀決定会合で一部委員がマイナス金利政策解除が妥当と意見表明する見通しとの6日の報道に続き、毎月勤労統計で実質賃金が改善、一部政府関係者がマイナス金利解除に容認姿勢を示したことも明らかになった。いずれも日銀の政策正常化を後押しして円高、金利上昇、株安を促した。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は年内いずれかの時点で利下げを開始するのが適切になる可能性が高いとしつつ、当局としてまだその用意はないことを6日明確にした。日銀のマイナス金利解除も4月の可能性もある。金融・証券市場は日米金融当局の政策変更の時期やその後の政策姿勢についての予想に左右されそうだ。
日銀の3月か4月のマイナス金利解除、一部の政府関係者が容認姿勢
みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは、3月日銀会合ではマイナス金利解除と現状維持の2パターンが想定されるとしながら、現状維持でも植田和男総裁の会見でマイナス金利解除趣旨の発言が聞かれ、日銀が4月に動くことは確実視されると指摘した。
乱高下するスワップ市場、日銀3月利上げの確率が急上昇
7日の金融・証券市場の動き
円は対ドルで一時前日比0.7%高の148円29銭と2月8日以来の水準まで上昇
長期国債先物3月物の終値は前日比19銭安の146円25銭
新発10年債利回りは1.5ベーシスポイント(bp)高い0.725%
一時0.735%と約2週間ぶり高水準
新発2年債利回りは一時0.195%と2011年4月以来の高水準
東証株価指数(TOPIX)終値は前日比12.13ポイント(0.4%)安の2718.54
日経平均株価は492円07銭(1.2%)安の3万9598円71銭
TOPIXと日経平均はともに午前に1%近く値上がりする場面があった
為替
東京外国為替市場の円相場は一時148円台前半と1カ月ぶりの水準まで上昇した。毎月勤労統計で賃金の伸びが市場予想を上回ったことや一部政府関係者が日銀のマイナス金利解除について容認する姿勢を示したことが円を押し上げている。日銀の中川順子審議委員の発言に対する反応は限定的となっている。
りそなホールディングス市場企画部の石田武為替ストラテジストは、すべての材料が円買いになっていると指摘。3月会合での政策修正の可能性が意識されており「2月後半くらいに円相場のボラティリティーが下がり過ぎていたし、円売りポジションも膨らみ過ぎていたので、両方で巻き戻しが入りやすく円買いになっている」と述べた。
ドル・円相場の日中推移
債券
7日の債券相場は下落。日本銀行が18、19日に開く金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除するとの観測や30年国債入札が低調な結果となったことを受けて売りが優勢だった。
新発国債利回り(午後3時時点)
先物 2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債
146円25銭 0.190% 0.380% 0.730% 1.475% 1.765% 2.005%
前日比 19銭安 +1.0bp +1.0bp +2.0bp +2.0bp +1.5bp +2.0bp
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、日銀の中川審議委員の会見内容について、「午前の講演からあまり外れていない。内田真一副総裁などとの発言と矛盾しておらず、想定内のタカ派的な内容」と述べた。30年国債入札は2週間後の会合でマイナス金利政策が解除されている可能性がある中で、金利水準が低かったことから低調な結果になったとの見方も示した。
岡三証券の長谷川直也債券シニアストラテジストは、実質賃金は「特別給与の伸びが大きかったことが要因とみられ、今までと大きく変わったわけではない」と指摘。「賃上げがそこそこ強く、物価が鈍化すれば、実質賃金のプラス化という見通しに沿ったものになる」との見方を示した。
30年債入札結果によると、最低落札価格は96円30銭と市場予想(96円55銭)を下回り、大きいと不調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は37銭と、前回の17銭から拡大した。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は2.93倍と、前回を下回った。
債券先物の日中推移
株式
東京株式市場で日経平均株価は上昇して取引を開始したが、その後は一時572円安まで下落した。為替が円高方向に振れたことが嫌気され、自動車銘柄に売りが出て指数を押し下げた。金利上昇で割高感の生じるグロース(成長)株も安く、東京エレクトロンなど値がさの半導体関連銘柄が大きく下げた。一方、金利上昇の恩恵を受ける銀行や保険など金融株は上昇した。
サクソ・マーケッツのマーケット・ストラテジスト、チャルー・チャナナ氏は1月の賃金データと中川日銀委員のコメントなどで「日銀がマイナス金利解除を3月か4月に行う確率が増し、半導体株のモメンタムをくじいた」と述べた。
野村証券の小高貴久シニア・ストラテジストは、日銀委員の一部が3月のマイナス金利解除が妥当とみているなどの報道を受けて「金融環境の改善を期待した買いが金融株を中心に入っている」と語った。
日経平均株価の日中推移
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