金融収縮なら世界成長率2%割れも IMF経済見通し
経済
2023年4月11日 22:00 (2023年4月12日 0:24更新)
【ワシントン=高見浩輔】国際通貨基金(IMF)は11日、四半期に1度の経済見通しを公表した。金融不安の影響で強い信用収縮や株安が重なれば、2023年は世界の成長率が1970年以降5回しかない2%割れになるとの試算を示した。高インフレ下で政策手段が限られるなか、低成長に身構えるよう警鐘を鳴らした。
現時点では3月中旬に米欧で相次ぎ表面化した金融機関の経営危機が実体経済に及ぼす影響を読み切れない。このためベースとなる予測は成長率を2.8%と1月時点の予測から0.1ポイントの下方修正にとどめた。
米国は1.6%、ユーロ圏は0.8%とそれぞれ0.2、0.1ポイント上方修正した。欧州の低成長は変わらず、英国に加えてドイツも再びマイナス予測になった。日本は1.3%とした。22年10〜12月期の成長率の実績が低く出たため、23年の成長率をみる際の「発射台」が下がって0.5ポイントの下方修正となった。中国の予測は5.2%を据え置き、新興国は0.1ポイント低い3.9%になった。
IMFは可能性の高いシナリオとして、金融不安は収まるものの銀行の融資姿勢が厳しくなる事態を想定。この場合は世界の成長率が2.5%と、リーマン危機後の09年と新型コロナウイルス禍が直撃した20年を除き01年以降で最低になる。
さらにIMFは25%の確率で2%割れに落ち込むとの試算も示した。米国で銀行融資が通常の予測からさらに4%減少すると仮定。株安により新興国の資金調達環境が厳しくなる想定も加えた。
15%の確率で成長率が1%となり、世界景気後退のときによく起きる「1人あたり国内総生産(GDP)の減少」に直面するとも分析した。
「金融不安が悪化すれば、急激な景気後退につながると懸念している」(IMFのチーフエコノミスト、ピエール・オリビエ・グランシャ氏)。IMF高官らの発言は中国の経済再開を受けて楽観的だった1月から急変している。
予測がぶれるのは各国とも政策手段が限られ、世界経済が「横風」に弱くなっているためだ。コロナ禍で悪化した債務残高と長期化する高インフレにより、財政支出による景気刺激は難しくなっている。IMFの予測では72カ国のうち91%が24年になってもインフレ目標を上回る。
食糧安全保障への危機感の高まりや米中対立により、輸出入に規制をかける国も急増した。IMFは世界の貿易量の伸びが22年の5.1%から23年には2.4%に鈍ると予想している。
米連邦準備理事会(FRB)など先進国の中央銀行は、高インフレを抑えながら景気後退を回避する軟着陸を模索するが、IMFは「ハードランディングのリスクが大きくなっている」と強い懸念を示した。政策当局者が金融の安定、高インフレの抑制、成長の維持を両立できず「トレードオフに直面する可能性がある」とも言及した。
IMFは生産性の伸びを下押しする環境悪化を踏まえ、今回の予測では世界経済が28年まで3%程度の低成長になると見通した。90年代以降で最低の水準となる。IMFは危機の回避に向けて途上国の債務再編問題や公正な貿易ルールの策定など、国際連携の必要性が今まで以上に高まっていると強調した。
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2023年4月11日 22:00 (2023年4月12日 0:24更新)
【ワシントン=高見浩輔】国際通貨基金(IMF)は11日、四半期に1度の経済見通しを公表した。金融不安の影響で強い信用収縮や株安が重なれば、2023年は世界の成長率が1970年以降5回しかない2%割れになるとの試算を示した。高インフレ下で政策手段が限られるなか、低成長に身構えるよう警鐘を鳴らした。
現時点では3月中旬に米欧で相次ぎ表面化した金融機関の経営危機が実体経済に及ぼす影響を読み切れない。このためベースとなる予測は成長率を2.8%と1月時点の予測から0.1ポイントの下方修正にとどめた。
米国は1.6%、ユーロ圏は0.8%とそれぞれ0.2、0.1ポイント上方修正した。欧州の低成長は変わらず、英国に加えてドイツも再びマイナス予測になった。日本は1.3%とした。22年10〜12月期の成長率の実績が低く出たため、23年の成長率をみる際の「発射台」が下がって0.5ポイントの下方修正となった。中国の予測は5.2%を据え置き、新興国は0.1ポイント低い3.9%になった。
IMFは可能性の高いシナリオとして、金融不安は収まるものの銀行の融資姿勢が厳しくなる事態を想定。この場合は世界の成長率が2.5%と、リーマン危機後の09年と新型コロナウイルス禍が直撃した20年を除き01年以降で最低になる。
さらにIMFは25%の確率で2%割れに落ち込むとの試算も示した。米国で銀行融資が通常の予測からさらに4%減少すると仮定。株安により新興国の資金調達環境が厳しくなる想定も加えた。
15%の確率で成長率が1%となり、世界景気後退のときによく起きる「1人あたり国内総生産(GDP)の減少」に直面するとも分析した。
「金融不安が悪化すれば、急激な景気後退につながると懸念している」(IMFのチーフエコノミスト、ピエール・オリビエ・グランシャ氏)。IMF高官らの発言は中国の経済再開を受けて楽観的だった1月から急変している。
予測がぶれるのは各国とも政策手段が限られ、世界経済が「横風」に弱くなっているためだ。コロナ禍で悪化した債務残高と長期化する高インフレにより、財政支出による景気刺激は難しくなっている。IMFの予測では72カ国のうち91%が24年になってもインフレ目標を上回る。
食糧安全保障への危機感の高まりや米中対立により、輸出入に規制をかける国も急増した。IMFは世界の貿易量の伸びが22年の5.1%から23年には2.4%に鈍ると予想している。
米連邦準備理事会(FRB)など先進国の中央銀行は、高インフレを抑えながら景気後退を回避する軟着陸を模索するが、IMFは「ハードランディングのリスクが大きくなっている」と強い懸念を示した。政策当局者が金融の安定、高インフレの抑制、成長の維持を両立できず「トレードオフに直面する可能性がある」とも言及した。
IMFは生産性の伸びを下押しする環境悪化を踏まえ、今回の予測では世界経済が28年まで3%程度の低成長になると見通した。90年代以降で最低の水準となる。IMFは危機の回避に向けて途上国の債務再編問題や公正な貿易ルールの策定など、国際連携の必要性が今まで以上に高まっていると強調した。