高齢者施設死者数、数千人過少公表か 米ニューヨーク州
毎日新聞2021年2月16日 14時02分(最終更新 2月16日 15時27分)
米東部ニューヨーク(NY)州が、高齢者施設や介護施設で新型コロナウイルスにより亡くなった人の数を数千人も過少に公表し、隠蔽(いんぺい)を図った疑いが浮上している。州全体の死者数は変わらないが、こうした施設で感染が広がったことへの批判を避けようとしたとの見方が強い。クオモ知事(民主党)に対し、州議会の共和党だけではなく、民主党の議員からも反発が出ている。
問題になっているのは、施設で新型コロナの感染が確認され、その後に死亡した入所者の数。NY州は、病院への搬送後に死亡した入所者は「施設での死者」に含めず、以前から「正確な感染状況を把握できない」と批判されていた。州司法長官は1月28日、発表されている死者数が実際よりも「5割低い可能性がある」と指摘。州はこれを認め、約8700人から約1万3000人に大幅修正した。
クオモ氏は昨年3月、病床確保のため、施設に対し、新型コロナ感染を理由とした入所拒否を禁止。州当局は、連邦政府の方針に従ったもので、そうした入所者が感染源になったとの見方を否定している。ただ、一部の高齢者施設では検査もせずに受け入れたために感染が拡大したとの批判が出ており、クオモ氏は施設での死者数増加の可能性を懸念していた。
今月11日には、この死者数の問題が、当時のトランプ政権から攻撃材料に使われることを恐れていたと、クオモ氏の側近で秘書のメリッサ・デローザ氏が州議員に明かしていたことが判明。州議会は昨年8月、透明性のある情報公開を求めていたが、クオモ氏らが対応しないなど、意図的に隠していたのではとの疑念が出ている。
クオモ氏は15日の記者会見で、「みんな忙しかった」と述べ、新型コロナの「第2波」対応などで死者数の修正が遅れただけだと釈明した。「言い訳はしない。責任は取る」とも述べたが、介護施設にいたおじを新型コロナで亡くした民主党のロン・キム議員は「(データを明らかにせず)クオモ氏は(議会を)裏切ろうとした。卑劣を超えている」と反発し、党内からも非難を呼んでいる。
昨春に感染爆発が起きた際のクオモ氏は、連日の記者会見でデータを示しながら、自宅にとどまるよう市民に呼びかける姿が支持を集めた。一方で、専門家が一刻も早く外出禁止令を出すよう助言していたのに対応が遅れたとされるほか、「犬猿の仲」と言われるNY市のデブラシオ市長との足並みの乱れも指摘されている。【ニューヨーク隅俊之】