大規模な太陽フレアが連続して発生 世界各地で低緯度オーロラを観測
5/15(水) 9:49配信
sorae 宇宙へのポータルサイト
アメリカ航空宇宙局(NASA)の太陽観測衛星「ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー(SDO)」がX5.8の太陽フレア発生直後の世界時2024年5月11日1時25分に撮影した太陽。フレアは右下の明るい輝きを放つ活動領域で発生した
太陽の活動は約11年周期で変化することが知られており、現在は2019年12月に始まった第25活動周期の極大期に差し掛かりつつあるとみられています。そんな太陽で2024年5月8日(日本時間・以下特記なき限り同様)以降、大規模な太陽フレア(太陽の表面で起こる爆発現象)が連続で発生しました。一連の太陽フレアによる影響で、地球では各地で低緯度オーロラが観測されています。【最終更新:2024年5月14日11時台】
今日の宇宙画像
■Xクラスのフレアが72時間に7回発生
アメリカの気象衛星「GOES(ゴーズ)」が観測した太陽のX線強度。Xクラス以上を記録した9つの太陽フレアには規模を示す注釈が添えられている
情報通信研究機構(NICT)の宇宙天気予報センターによると、2024年5月8日から13日にかけて、太陽表面の2つの活動領域(黒点周囲の活発な現象が起こる領域)でXクラスの大規模な太陽フレアが合計9回発生しました。最大規模は5月11日10時23分に発生したX5.8で、このフレアが発生するまでの72時間だけでもXクラスのフレアが7回観測されています。同センターによると、アメリカの気象衛星シリーズ「GOES(ゴーズ)」による観測が始まって以来、Xクラス以上のフレアが72時間以内に7回発生したのは今回が初めてです。
太陽フレアはX線や紫外線といった電磁波だけでなくコロナ質量放出(CME)と呼ばれるガスの放出を伴う現象で、地球の電離圏や地磁気を乱して通信・放送衛星の障害、GPSの測位誤差増大、短波通信の障害といった影響を生じさせる可能性があります。宇宙天気予報センターによると、日本国内では2024年5月8日から12日にかけてデリンジャー現象(短波帯の通信障害)が発生しました。特に5月11日10時~13時の時間帯は強く発生したことから、短波帯の通信途絶が発生した可能性が高いとされています。
鹿児島県と沖縄県に設置されたイオノゾンデによる電離圏の観測データを示した図。
また、茨城県石岡市柿岡の気象庁地磁気観測所(柿岡観測点)では、5月11日に磁気嵐(地球規模で起こる地磁気の乱れ)の発生が観測されました。地磁気の活動度を示す指数の1つに、1日を8つの区間(3時間ごと)に分割した上で、各区間の活動度を0~9の10段階で示す「K指数」というものがあります。今回の磁気嵐ではK指数「8」を4回記録しました。宇宙天気予報センターによると、地磁気観測所(柿岡)でK指数「8」が観測されたのは2005年8月以来およそ19年ぶりです。
この他にも今回の太陽活動に関連して、放出されたコロナガスの地球到来による太陽風の速度上昇(観測された最大値は毎秒約1000km)と磁場強度上昇(同72nT)、静止軌道での高エネルギープロトン(陽子)の増大、電離圏嵐(電離圏の電子密度が大きく増減する現象)などが観測されています。
なお、太陽フレアの規模はピーク時のX線強度に従って強いほうから順にX・M・C・B・Aと定められていて、前後のクラスとは10倍の差があります。太陽では過去にも大規模なフレアが発生しており、1859年9月に発生して当時の欧米の電信網に被害をもたらした通称「キャリントン・イベント」を引き起こしたフレアの規模は、X45とも推定されるほど大規模だったとみられています。
Source
宇宙天気予報センター – 大規模フレアに関する臨時情報
NASA – Aurora over Idaho
なよろ市立天文台 きたすばる – 低緯度オーロラ
sorae編集部
5/15(水) 9:49配信
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アメリカ航空宇宙局(NASA)の太陽観測衛星「ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー(SDO)」がX5.8の太陽フレア発生直後の世界時2024年5月11日1時25分に撮影した太陽。フレアは右下の明るい輝きを放つ活動領域で発生した
太陽の活動は約11年周期で変化することが知られており、現在は2019年12月に始まった第25活動周期の極大期に差し掛かりつつあるとみられています。そんな太陽で2024年5月8日(日本時間・以下特記なき限り同様)以降、大規模な太陽フレア(太陽の表面で起こる爆発現象)が連続で発生しました。一連の太陽フレアによる影響で、地球では各地で低緯度オーロラが観測されています。【最終更新:2024年5月14日11時台】
今日の宇宙画像
■Xクラスのフレアが72時間に7回発生
アメリカの気象衛星「GOES(ゴーズ)」が観測した太陽のX線強度。Xクラス以上を記録した9つの太陽フレアには規模を示す注釈が添えられている
情報通信研究機構(NICT)の宇宙天気予報センターによると、2024年5月8日から13日にかけて、太陽表面の2つの活動領域(黒点周囲の活発な現象が起こる領域)でXクラスの大規模な太陽フレアが合計9回発生しました。最大規模は5月11日10時23分に発生したX5.8で、このフレアが発生するまでの72時間だけでもXクラスのフレアが7回観測されています。同センターによると、アメリカの気象衛星シリーズ「GOES(ゴーズ)」による観測が始まって以来、Xクラス以上のフレアが72時間以内に7回発生したのは今回が初めてです。
太陽フレアはX線や紫外線といった電磁波だけでなくコロナ質量放出(CME)と呼ばれるガスの放出を伴う現象で、地球の電離圏や地磁気を乱して通信・放送衛星の障害、GPSの測位誤差増大、短波通信の障害といった影響を生じさせる可能性があります。宇宙天気予報センターによると、日本国内では2024年5月8日から12日にかけてデリンジャー現象(短波帯の通信障害)が発生しました。特に5月11日10時~13時の時間帯は強く発生したことから、短波帯の通信途絶が発生した可能性が高いとされています。
鹿児島県と沖縄県に設置されたイオノゾンデによる電離圏の観測データを示した図。
また、茨城県石岡市柿岡の気象庁地磁気観測所(柿岡観測点)では、5月11日に磁気嵐(地球規模で起こる地磁気の乱れ)の発生が観測されました。地磁気の活動度を示す指数の1つに、1日を8つの区間(3時間ごと)に分割した上で、各区間の活動度を0~9の10段階で示す「K指数」というものがあります。今回の磁気嵐ではK指数「8」を4回記録しました。宇宙天気予報センターによると、地磁気観測所(柿岡)でK指数「8」が観測されたのは2005年8月以来およそ19年ぶりです。
この他にも今回の太陽活動に関連して、放出されたコロナガスの地球到来による太陽風の速度上昇(観測された最大値は毎秒約1000km)と磁場強度上昇(同72nT)、静止軌道での高エネルギープロトン(陽子)の増大、電離圏嵐(電離圏の電子密度が大きく増減する現象)などが観測されています。
なお、太陽フレアの規模はピーク時のX線強度に従って強いほうから順にX・M・C・B・Aと定められていて、前後のクラスとは10倍の差があります。太陽では過去にも大規模なフレアが発生しており、1859年9月に発生して当時の欧米の電信網に被害をもたらした通称「キャリントン・イベント」を引き起こしたフレアの規模は、X45とも推定されるほど大規模だったとみられています。
Source
宇宙天気予報センター – 大規模フレアに関する臨時情報
NASA – Aurora over Idaho
なよろ市立天文台 きたすばる – 低緯度オーロラ
sorae編集部