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英紙の記者が800年の歴史からひもとく「金利の正体」 5/31(金) 6:00配信 クーリエ・ジャポン

2024-05-31 08:22:59 | 日記
英紙の記者が800年の歴史からひもとく「金利の正体」

5/31(金) 6:00配信
クーリエ・ジャポン


2024年3月、日銀が17年ぶりに利上げを実施した。預金金利が上昇し、住宅ローン金利が上昇するなど日常生活に金利がある世界が戻りつつある。しかし、金利とはいったい何なのか? 800年の歴史から金利の正体について、英紙の記者がひもとく。


800年の歴史から見た金利

債券投資家にとって油断のできない状況が続いている。ほんの数ヵ月前まで、米連邦準備制度理事会(FRB)は年内に6回の利下げを実施し、初回の利下げは間近というのが市場のコンセンサスだった。
だが2024年4月10日の時点で、投資家の利下げ予想は大幅に下方修正され、多くが利下げの開始は11月までずれ込むとみなしている。実際、予想を上回るインフレデータが相次いだことで、ローレンス・サマーズ元米財務長官は、「FRBの次の動きは利下げではなく、利上げの可能性もある」と警告を発したほどだ。
超低金利下で活況を呈してきた業界にとっては、気がかりな事態である(IMFが新たに出した興味深い報告書によれば、「民間資本」がその一例として示唆されている)。そして、2024年中に再び予想が変わるのではないかという憶測も飛び交っている。
だが、こうした議論が沸騰するなかで、しばし立ち止まり、金融の長い歴史を振り返ってみるのも有益だろう。ここでいう「歴史」とは、トレーダーが日常的に取引画面上で目にする20世紀後半のことではなく、より示唆に富む過去800年のことを指す。

ケネス・ロゴフ、バーバラ・ロッシ、ポール・シュメルツィングという3人の経済学者は、1311年以来の金利とインフレに関する世界的データを収集してきた(1311年は、ベネチアがいわゆる「コンソル国債」を発行し始めてから50年後にあたる)。
3人の研究結果は、2年ほど前に暫定的な形で発表された。だが今回、新たな歴史的情報を加えたアップデート版が発表され、2つの興味深い点が浮き彫りになった。
まず、短期金利だけを見て政治経済理論を理解することはできないということだ。その点、過去の経済分析の大半が短期金利を重視しがちであった。
公正を期して言えば、歴史家がこれまで短期金利に注目してきた理由は、短期金利に関する歴史データが入手しやすく、20世紀の中央銀行当局が短期政策金利を設定する際の基準となる、いわゆる「中立金利」を決定する必要があったためだ。
だがロゴフらは、短期金利のパターンは乱高下が激しい一方で、長期の実質金利(名目金利からインフレ率を引いた金利)を見れば、そこには明確で際立った傾向があると主張する。長期実質金利は数世紀にわたり着実に低下しており、ロゴフらの計算によると、1311年以降、平均で毎年ほぼ2ベーシスポイント(0.5%)ずつ下落しているというのだ。
たしかに長期金利のグラフは滑らかではない。14世紀の黒死病の大流行と、1557年の欧州3国の金融危機の際に2つの大きな変曲点があった。さらに、1914年と1981年にも小規模な変曲点が見られる。
だが、こうした変曲点以上に顕著なのは、変動がいかに稀であるかということだ。長期金利は不況、デフォルト、金融ショックなどに応じて変動することが多いが、大半は10年から20年後には元のトレンドに復帰する。経済学者のモーリス・オブストフェルドが指摘するように、長期的な歴史的観点に立てば、こうした変動は単なる「一時的な出来事」にすぎない。
別の言い方をすれば、近代化は長期金利の低下を必然的に引き起こしており、21世紀になって超低金利が問題視され始める遥か以前から、その兆候はあったということだ。
それはなぜか?


金利はなぜ低下するのか?

経済学者はこれまで、生産性、人口動態、資本フローなどの問題が原因だと考えてきた。ベン・バーナンキ前FRB議長が、中国など一部の国の「過剰貯蓄」を指摘したのは有名な話だ。一方で、サマーズ元財務長官は先進国の「長期停滞」を危惧している。
だが、さらに興味深い(そして直感に反する)のは、ロゴフらが実質金利と基本的な経済動向との間に統計的な相関関係を見出せなかったことだ。これは彼らのデータの限界を反映している可能性もあるが、3人は別の説明を提示している。
彼らによると、借入コストが低下している本当の理由は、景気変動ではなく、経済学者がしばしば無視しがちな「金融の性質」にあるという。つまり、現代の資本市場、リスク分析、担保を活用した融資手法に関する技術革新の組み合わせが、金融の効率性を高めたというのだ。
この考え方を証明するのは難しいが、私には理に適っているように思える。ピーター・バーンスタインの同名の名著にちなんで、これを「神々への反逆」効果と呼ぼう。
近代社会と前近代社会の決定的な違いは、複式簿記からコンピュータに至るまで様々な技術革新によって、祖先のように神々に頼ることなく、将来のリスクの予測、管理、そして価格設定できると信じるようになったことだ。
現実には、確信はあまりにも見当違いである場合が多い。だが、その確信が正当化されようとされまいと、それに伴う文化的変化は貨幣をより豊富で流動的なものとし、そのコストを削減してきた。
これは朗報であるが、同時に2つの疑問も提起する。この下降傾向に終わりはあるのか? そして、現在の金利にとって、それは何を意味するのか?
1つ目の疑問については、答えはあなたの想像力次第だ。この傾向が長期的に続くとは考えにくいが、将来の技術的進歩を無視することもできない。たとえば、人工知能が通貨効率を高める可能性もある。
だが2つ目については、その意味するところはより明確である。800年という長い時間軸から見れば、21世紀初頭の超低金利は、トレンドからのやや過剰な逸脱にすぎないということだ。
したがって、長期金利が上方修正されたのは驚くべきことではない。とりわけ短期の中立金利がおそらく上昇したことを考えれば、なおさらである。
とはいえ、この長い歴史的スパンは、現在起きていることが決して異常事態ではないことも示している。ただし、最近の出来事に打ちのめされている債券投資家にはそれを言わないように。

Gillian Tett

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