銭湯の散歩道

神奈川、東京を中心とした銭湯めぐりについて、あれこれ書いていきます。

第二岡の湯

2017-04-15 18:20:11 | 銭湯
新横浜駅からバスに乗って、最初に目指すのは複合商業施設のトレッサ横浜。そこからさらに幹線沿いを歩いて工場地帯に足を踏み入れると第二岡の湯に到着する。
(生憎の曇り空だが、凛然とした佇まい)


(昔ながらの薪で焚いてます)

立派な宮造りの外観(と思っていたが、ウェブマガジンの「はまれぽ」によると厳密には宮造りではないらしい。それと横浜では最後の木造建築だとか)は入る前からワクワクさせてくれる。ただ周囲はバーミヤン、セブンイレブン、ドラッグストアーと、ずいぶん浮いた場所に建っていた。建物の前はデコボコの駐車場になっていて、7~8台ぐらいは停められるのだろうか。
入り口の中に入ると古い建物のようで、松竹錠は新しい感じ。扉をあけると、番台には優しそうなおばあちゃんが出迎えてくれる。
想像より広い脱衣場で天井も高く、開放感がある。床も綺麗に磨かれていた。脱衣場の横には曇りガラス越しに坪庭を眺めることができる。周囲の商業施設とは隔絶された純和風の空間だ。
浴室は、横長の作りで、奥行きはないものの広く感じる。配置は定番の手前がカランで、浴槽が奥。横に長いので島カランが二つ。それに壁際にもカランが並ぶ。浴槽は、シンプルで、二つに分かれているが、7対3の割合。7側はすべてジェットバスになっていて、3側は白湯。
グーグルのレビューではお湯がクソ熱いとばかり書かれていたので、レトロな雰囲気に呼び寄せられた普段は銭湯に入らない層が熱いと言っているのだろうと勝手に思い込んでいたが、入ってみると本当にクソ熱かった。温度計は45℃。肌感覚的には、もっと高いはずだ。
いままで幾度となく45℃前後の浴槽に入ってきたが、これほど熱い45℃のお湯ははじめて。
最初はジェットバスの方に入っていたのだが、あまりの熱さに不思議と熱い感覚が分からなくなってくる。感覚が分からないといつまでも入っていられる気分になって、これはマズいと思い、お湯からあがると体は真っ赤。
長い時間かけて体を冷やしたあとに、今度はジェットバスではない小さい浴槽に入ったのだが、恐ろしいことにジェットバスより輪を掛けてさらに熱い湯船だった。
もはや熱いというよりも痛い。足先がジンジンし始めたかと思うと、刺さるような痛みに。あまりの痛さに悶絶して、すぐに出てしまった。
たまたま体の具合からそう感じたのか分からないが、その小さな浴槽に入る客は、誰一人としておらず。普段は基本的に反復浴をするのだが、ここでは健康に害すと判断し、さっさと出ることにした。
常連客も多くいるので、慣れれば癖になる風呂なのかもしれないが、この熱さに慣れるのは相当時間が掛かりそうだ。そもそも常連らしい客ですらかなり水を埋めていたので、やはりみんな耐え難い熱さと感じているのでは?
熱さにチャレンジしたい人にはおすすめしたいが、そうでない人にはとてもじゃないがおすすめできない銭湯だ。

【評価チェック箇所】
・値段 470円 
・アクセス(道程)駅から遠い。トレッサ横浜からは、10分ほど。
・周辺の環境 工業地帯と商業施設が混在した地域
・混雑ぶり そこそこ入ってる
・清潔さ 清掃はしっかりしてる
・接客 とてもよい
・客層 みごとに高齢者ばかり
・脱衣所 雰囲気が素晴らしい
・休憩所 脱衣場と兼ねる
・シャワーの出 ふつう
・備え付け なし
・貸しタオル なし
・サウナ なし
・温度 尋常じゃない熱さ
・眺望 壁画が塗りつぶされていた

住所
〒230-0071 横浜市鶴見区駒岡1-26-15
電話
045-572-4999
営業時間
14:30〜22:30
定休日
4日・14日・24日(不定もあり。)
※神奈川公衆浴場業生活衛生同業組合HP転載

井川湯

2017-04-15 11:30:29 | 銭湯
京急子安駅を降りると、目の前の第一京浜を横切り、そのまま海側にある住宅密集地の中へ。その狭い住宅路地を歩いていると、忽然と井川湯が現れる。
その日は平日の夜に訪れたのだが、周辺は街灯があるもののかなり暗い場所で、こんな所に銭湯があるのだろうかと不安になるぐらい人気のない場所だった。それと至る所に井戸があったのも驚きだった。
横浜は開港当時は近くに真水がでないのでわざわざ相模原から水道水を引いたという話を聞いたことがあったが、ここらへんは塩分が混じらないのだろうか?
井川湯は、このような住宅密集地の中にあるので、当然というべきか小さな作りになっている。入り口を前に立つと、独特な雰囲気。のれんをくぐると下足箱があるのだが、その下足箱もとにかく狭く、人が一人入ったらすれ違えないような狭さだ。当然、中も小さい。
ドアを開けると左側に番台があり、その周りは脱衣場と休憩所を兼ねているが、ロッカーが部屋の片隅にしかない。しかもその半分はカゴが置かれているので、実質使えるのはその半分。
脱衣場は狭い中にも色んなものが置いてあるので、雑然とした印象。自分が訪れたときは椅子に座ってる人が1人。浴室に1人。それと自分の計3人。女湯の方からは音が一切聞こえてこない。
浴室の作りは、左右の壁にカランが並び、その奥には浴槽がある。浴槽は、2つに分かれており、一つが白湯のみ。もう一つがバイブラ。仕切りの下側で互いのお湯が通じている。浴槽も当然小さく、頭を縁に預けて足を伸ばすと、奥の縁まで足が届いてしまう。
温度計は45℃を指し示していたが、そんなに熱いだろうか。肌感覚だと43℃前後に感じた。
壁画は、富士山の絵が描かれているのだが、男女あわせて一つの絵になっているので、富士山自体は女湯に描かれている(普通は逆なので珍しい)。男女の仕切りである壁のタイル絵は、三枚。一つは二宮金次郎の絵。もう二つは自分の乏しい知識からは分からなかった。
それと残念なのは、浴槽が汚いこと。タイルの目地がすっかり黒ずんでおり、こんなに黒ずんだ(掃除してないかどうかは別として)浴槽ははじめてだ。
浴槽の底は一部改修したらしくモザイク状に貼られていたが、それがかえってみすぼらしさを醸し出していた。
途中で先客があがり、気が付くと男湯は自分一人のみ。ほとんどの入浴時間が実質貸し切り状態だった。
貸し切り状態ということと、孤独感を高める静寂さ。井戸のある漁師町。井川湯は、不思議な時間が流れる空間だった。

【評価チェック箇所】
・値段 470円 
・アクセス(道程) 子安駅から近い。迷わなければ5分と掛からない
・周辺の環境 住宅密集地。現役の井戸は必見
・混雑ぶり 超ガラガラ
・清潔さ 清掃はしてる感じはするし、床のタイルは綺麗なのだが、肝心の浴槽が汚い
・接客 感じのよい対応
・客層 中高年
・脱衣所 ロッカーの少なさに驚く
・休憩所 昭和的な雰囲気
・キャパシティ 間に合ってる
・シャワーの出 あまりよくない
・備え付け なし
・貸しタオル あり
・サウナ なし
・温度 適温
・眺望 壁画、タイル絵ともに古典的

福助湯

2017-04-13 20:41:42 | 銭湯
JR横浜線大口駅から線路をたどって10分ほど歩くと福助湯に到着する。近くの川沿いを歩き始めると、煙突がみえてくる。
外観はまさに昭和の銭湯で、下足箱のところから男女に分かれている。その下足箱だが松竹錠の鍵がついたところを開けると誰かの靴が入っており、仕方なく別の鍵がついたところをあけると、そこにも靴が…。ようやく三つ目のところで靴のない下足箱を探り当てたが、ここは地元客ばかりなので警戒しないのだろう。
ドアは古びた外観に似合わず自動扉。中に入ると、番台には小柄なおばあさんが座っていた。年齢は分からないが、結構年を召された印象。
その日は仕事帰りだったのでタオルを持ち合わせておらず、貸しタオルがあるか訊ねると、
「ここの使っていいわよ!」
と指し示されたのが、古びて色あせた巨人軍のタオル。おそらく読売新聞の購読者に配ってるタオルだろう(かつて我が家にもあったタオルだ)。
服を脱いで浴室に入ろうとすると「せっけんは?」と聞かれたので、「大丈夫です」とこたえたのだが、なにやら番台の下をゴソゴソ探し始めて石鹸を貸してくれた。小さな石鹸が無数に入ったケースだったが、こういう親切は素直に嬉しい。
浴室は、昔ながらの銭湯にありがちな手前側がカランで奥が浴槽。4:6の割合で、4側が座湯のジェットバス。6側がバイブラ。バイブラはかなり勢いがあるのと、浴槽の側面に赤い光が放たれており、少し不気味な印象がある。そもそも、そういう演出は古びた銭湯の雰囲気と似合わないような気がするのだが。
壁画は、当初、なにを表現しているのか分からなかった。木目調のタイルが凹凸に貼ってあり、逆三角形にグラデーションの青が天井まで続いている。タイルやその青色には白い点が散りばめられており、そのタイルと青の間に巻き貝のようなものがあった。このあたりでおそらく地底をイメージしたものなのだろうと思った。となると、浴槽の赤はマグマの色で、バイブラはそのマグマから吹き出した湧出口?
昭和の古びた銭湯と侮っていたが、なかなか芸術志向のたかい銭湯だ。
温度は足を入れるとけっこう熱く、温度計を確認すると、46℃。他の銭湯よりやや熱めといったところか。
客は自分が入浴したときで4人ほど。会話をしてる人たちもいたが、基本静かだった。
近くには鷲の湯もあって、そちらは同じ時間帯だとごった返しているので少々寂しい気もする。
脱衣場と兼ねた休憩所は、丸テーブルに椅子が並び、かなり大きなガラス張りの植栽。和と洋が入り交じったちぐはぐ感じだが、いかにも個人経営らしい風景だった。

【評価チェック箇所】
・値段 470円
・アクセス(道程) ほどほど近い
・周辺の店 飲食店がある
・休憩所 脱衣場と兼用。洋風テーブル
・混雑ぶり 空いている
・清潔さ それなりに綺麗
・接客 とても親切にしてくれた
・客層 中年の男性がほとんどだった
・脱衣所 規模にしては広い
・キャパシティ 間に合ってる
・洗い場仕切りの有無 なし
・シャワーの出 悪い
・温度 熱い
・高低差 なし
・眺望 壁画が斬新
・食事 なし

【銭湯考】銭湯が先細りしないために

2017-04-13 06:42:03 | 銭湯考
銭湯を訪れると決まって見られるのが高齢者の姿だ。当たり前になりつつある光景だが、こうした高齢者のみに支えられる産業というのはいずれ衰退する運命にある。
ただ、日本の銭湯が若者たちからそっぽを向かれているのかといえば、そうともいえない。スーパー銭湯には若者がたくさん集まるし、雑誌などでもスーパー銭湯特集はよく見られる。
このような現状をみると問題の本質は、銭湯そのものというよりも、経営のあり方にあるといえそうだ。
銭湯というのは特殊な業種で、どの店も均一料金で経営している。こうした業種は銭湯以外にみつからない。
この均一料金は物価統制令と呼ばれるもので、組合に加入することで税制優遇を得られる代わり、均一料金で経営することが義務づけられている。現在でも物価統制令が適用されているのは銭湯のみだ。
おもに水道料金が減免されるのだが、ほかにも様々な恩恵が得られていると言われている。現代の銭湯がこうして経営を続けられるのも物価統制令のおかげともいえる。
ではなぜ、銭湯が税金補助の対象になるかといえば、公衆衛生に関わる社会インフラとみなされるからだ。
ただ、現実的にはそうした風呂をもたない家庭というのはごく少数で、おそらく1%にも満たないだろう。そうした人たちのためだけに銭湯が存在するならば、浴槽の設置に補助金を掛けたほうがよっぽど現実的で有意義な税金の使い方じゃないだろうか。それと地域による偏在の是正もしなければならない。
たとえば横浜市の場合だと、鶴見区に17もの銭湯があるが、緑区は1つしかない。自宅に風呂釜をもたない人たちがその1つの場所にわざわざ通えるだろうか?
そうした現実的な判断をすると、一般的に銭湯が求められる役割というのは、その嗜好性にあると思う。こうした建前とは異なる実体と、税金補助や物価統制令といった本来あるべき競争状況に置かれない状況が続くと、その業界はどうなるのだろうか?
端的にいえば、自ら変わろうとはしなくなるのではないか。現状維持こそが安泰だからだ。
もちろん中には積極的に変わろうとする銭湯もあって、そうした銭湯では感銘を受けることも少なくないが、一方でほかのサービス業と比べると有り得ないような店もたくさんある。
掃除がぞんざいだったり接客が無愛想だったりなど。無愛想なのはほとんどといってもいいぐらいだが、サービスの質はスーパー銭湯と比べて雲泥の差だ。正直、この違いはなんなんだろうといつも感じてしまう。
何も変わらないということは年配者たちからすると安心感をもたらすかもしれないが、若者からすれば時代から取り残された遺物としかみられない。
昨今は東京を中心にリニューアルした銭湯が数多く見られるが、そうした銭湯はファッション性も相まって、若者たちでごった返している。
時代とともに変われば人は集まる。いつまで同じままであれば、先細りするばかりだ。銭湯の後継者問題なども取り沙汰されるけれども、目下、銭湯の置かれる問題点は、変わろうとしない意識にこそ問題があるのではないかと思う。

中山浴場

2017-04-08 21:50:28 | 銭湯
JR横浜線中山駅を降りて線路沿いを歩くこと3分。線路沿いの踏み切りそばに、かなりシブい建物が建っている。緑区で唯一の銭湯である中山浴場だ。
近くの踏み切りはかつて人を助けようとした女性が身代わりになって亡くなるという痛ましい事故があった場所だが、今はその面影もない。
中山浴場は入り口手前に禁煙の文字があるのだが、中に入るとなぜか大きな灰皿が(?) それと下足箱には、やたらと鍵を持ち帰らないで下さいと書かれた紙が貼ってある。相当な被害をこうむっているのだろう。実際に客の数と比べてずいぶんと鍵のない下足箱が目立つ。
扉を開けると、番頭さんが顔をのぞかせる。ここでは下足箱の鍵を預けるルールらしく、引き替えにロッカーの鍵を渡された。
脱衣場は、やはり昭和の色を濃厚に残しており、全体的に老朽化も目立つ。それと通常の鍵付きロッカーはあるのだが、常連客がシャンプーや石鹸などを預ける棚は、鍵も扉もない。盗まれたりしないのかと思うのだが、ほとんど常連客ゆえに大丈夫なのだろう。地元に根ざした古き良き時代の銭湯という感じである。
浴室は、いたってシンプル。手前側がカランで、奥が浴槽。浴槽は二つに分かれていて、大きさは6:4の割合。6側が半分ジェットバス。4側がバイブラ。古い銭湯なのにバイブラはかなり勢いがある。この日は薬湯がワインの湯で、ふたつの浴槽ともに紫色をしていた。おそらく見た目だけで、効能は何もないだろう。
お湯に浸かると、温度は結構熱い。温度計を確認すると44℃だったが、個人的にはもっと高いような気がする。地元客は遠慮なくジャバジャバ水を入れて薄めていた。
客層はほぼ高齢者ばかりで、さかんに競馬の話に興じていた。途中で子どもを連れたお父さんが入ってくると、女湯にいた奥さんになにか連絡事を伝えていた。浴室は声が反響するせいでよく聞こえないらしく、奥さんがしきりに聞き返すと、子どもたちも大声で参戦。ずいぶんにぎやかな銭湯になった。ドラマではよくあるシーンだが、実際に目の当たりにするのは初めて。ここでも濃厚な昭和の空気が流れていた。

【評価チェック箇所】
・値段 470円
・アクセス(道程) 駅から近い
・周辺の店 コンビニや飲食店
・休憩所 昔ながらの脱衣場と兼ねてる
・混雑ぶり 意外にもけっこうお客さんはいた。若い人もいる
・清潔さ まずまず
・接客 特別愛想がいいわけではないが、おだやかな雰囲気の店主
・客層 年配者を中心に家族連れや若い人もいる
・脱衣所 テレビ以外は、すべてが昔ながらという感じ
・キャパシティ 間に合ってる
・洗い場仕切りの有無 なし
・シャワーの出 そこそこ
・温度 熱い
・高低差 なし
・眺望 男湯は、赤富士。なかなか壮観。
・食事 なし