炭焼は最終工程の消火作業に入った。朝7時、温度は258℃まで上昇し
煙突からは僅かに煙が出ている程度の状態、通風孔を全開にして精錬
を開始する。ここから温度は急上昇していき10時30分には煙突からの煙
は見えなくなり、温度も314℃、煙突内部がボチボチと白くなりかけてくる。
昼食を挟み13時過ぎ、356℃の時点で煙突内部は白くなっていたので暫
くしてから通風孔閉鎖によりガス抜き、続いて煙突を閉鎖して窯籠めを終
える。炭焼きの〆作業である目塗をして今シーズン3窯目を焼き終える。
9時ごろ、未だ煙が薄く見える
今日の作業も2班に分かれ炭焼きで窯の子守りをする班、材料調達で山行
きの班。山行き班は過日、『手に負えない、今後の検討課題』としたカシを
伐採する予定。
そのカシは知り合いの達人にお願いし午後から切ってもらうため私たちは
事前準備として周辺の下刈りをしておくことが主な仕事。自分たちで伐採
できるもあるので時間を見て行おうとなった。午前中に下刈りを終え、カシ
の中くらいのものを2本調達する。
午後、山に出かけると達人は先に来て隣接する杉の木を倒す手はずを終
えていた。枝打ちの時に使う足場を確保する道具と安全ベルトを使い木の
上で自由に身動きできるよう準備万端。そして指示されたように2か所から
チルホールで引っ張り狙った場所に倒れるよう細工が為される。
直径50センチの大木だからチェーンソーで楔型に切っていくが堅いからエ
ンジン音も苦しそう。悪戦苦闘の結果、やっと楔型を切り取り少しだけチル
ホールで引っ張ると枝葉は揺れ、微かに『チッ、チッ』と音がする。
ここで達人は楔型の後からチェーンソーで切れ目を入れると、その音は
はっきりと聞こえ出し、チルホールで引っ張った次の瞬間、巨人倒れるが
如くスローモーションを見るようにゆっくりと予定されていた軌跡を辿った。
『さすが達人』ここから枝、小丸太、炭木用に切り分ける作業の早いこと、
蟻が獲物を分担して持ち帰る姿によく似ていた。
別の言い方をすれば『実に手際のいい』となる。
大量の材料を炭小屋に持ち帰り降ろし終えると遠くから5時を知らせる
チャイムが鳴りだした。人間が酷使するにも関わらず地球は偉いな
『冬至を過ぎると日が長くなった』と誰かの一言。
ターゲットのカシ
楔型に切り取る
後方から切れ目を入れる
山仕事、ご苦労様
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます