
ライムライトと言えばまず思い出すのはチャップリンの映画「ライムライト」でしょう。またライムは柑橘類のライム(Citrus aurantifolia)を意味するので、何で光と関係があるかと不思議に思います。実は英語のlimeには二つ意味があって、一つは柑橘類のそれ、もう一つのlimeは石灰です。
1800年代の劇場では石灰を酸素と水素のバーナーで熱して、この固体から出る明るい光が照明として使われていました。ライムライトが使われなくなってもこの言葉は残り「スポットライトを浴びる」という意味に使われています。チャップリンの映画の題名はこの意味で使われているのです。
ライムライトを灯すには石灰を高熱のバーナーで熱すれば良いのです。私の知り合いはホタテの貝殻を使い、ブタンガスのバーナーでライムライトを楽しんでいます。新鮮な貝殻はやや臭うそうです。私の工場を見回すと高熱源はアセチレンバーナーがあります。鋼材の切断はいつものことです。炭酸カルシウムはチョークです。
チョークを万力に咥えてアセチレンで熱してみました。カルシウムの炎色反応はオレンジ色で、もっと温度を上げていくと白く輝き出します。遠目でも眩しいくらいです。
チョークは字を書くために調製されているので多孔質で柔らかい。それで20秒もアセチレンの炎に曝されると随分やせてしまいました。そしてこのチョークは生石灰になっているでしょう。水を垂らせば分かります。
生石灰(CaO)の融点は2,572℃、沸点は2,850℃です。ライムライトが白色で光る理由は、2000℃を超えても溶けずに固体のままでいられるから、となります。鉄では溶けてしまいますね。コールマンランタンのマントルの材質は何でしょうかね?
どんな物体でも、溶けたり蒸発しなければ、その物体の温度に従った波長の光を出します。ある温度が与えられた時、光の波長はある分布をなします。放射エネルギーの極大値は温度が高くなるに従って波長が小さい方に移動します。(ウィーンの変位則)これを理論的に明らかにすることが19世紀末の物理学者の大きな課題でした。量子力学の始まりです。
石灰を熱すると強い白色光を出すことを発見したのは英国人のGoldsworthy Gurney (1793-1875)です。彼はなかなか多才な人で医者・化学者・建築家などなど、英国伝統のアマチュア科学者なのです。英国の好事家(アマチュア)にはロバート・ボイルやヘンリー・キャヴェンディッシュなど科学史に名を残す人も多いのです。

彼は酸素+水素のトーチを発明して何でも高温の炎で炙ったに違いありません。そして石灰も試してみたのでしょうね。1820年代のことです。
1825年、マイケル・ファラデーのデモンストレーションを見たスコットランドの技術者Thomas Drummond (1797--1840)は「これは使える!」と閃いたのです。劇場で使えるモデルを開発したのは彼で、Drummond Lightとも呼ばれるのです。
最初にライムライトが使われたのはロンドンのコベントガーデンだと伝えられています。石油ランプに比べて明るいライムライトに当時の人々は感動したでしょう。しかし酸素と水素を混合して燃やすのですから事故も多かったに違いありません。1870年代に白熱電灯が発明されるとその役割を終えました。
スミソニアン博物館にはライムライトが保存されていて、その写真を見ることが出来ます。ヴィクトリア期の機器は美しく仕上げられているので感心してしまいます。
↓ポチッと応援お願いします!

(追記)スポットライトについて書き、SUBALさんの「安奈」という記事を読みました。私のブログは「時々、ギリシャ♪」なのですが、最近ギリシャについて書いていません。ネタはいくつかあるのですが、ちょっと重いのです。それで私が勝手に「ギリシャの美空ひばり」と思っているHaris AlexiouのΟΔΟΣ ΑΡΙΣΤΟΤΕΛΟΥΣを紹介します。明日は車で出かけますが、この曲が入っているCDを持って行きます。
1800年代の劇場では石灰を酸素と水素のバーナーで熱して、この固体から出る明るい光が照明として使われていました。ライムライトが使われなくなってもこの言葉は残り「スポットライトを浴びる」という意味に使われています。チャップリンの映画の題名はこの意味で使われているのです。
ライムライトを灯すには石灰を高熱のバーナーで熱すれば良いのです。私の知り合いはホタテの貝殻を使い、ブタンガスのバーナーでライムライトを楽しんでいます。新鮮な貝殻はやや臭うそうです。私の工場を見回すと高熱源はアセチレンバーナーがあります。鋼材の切断はいつものことです。炭酸カルシウムはチョークです。
チョークを万力に咥えてアセチレンで熱してみました。カルシウムの炎色反応はオレンジ色で、もっと温度を上げていくと白く輝き出します。遠目でも眩しいくらいです。
チョークは字を書くために調製されているので多孔質で柔らかい。それで20秒もアセチレンの炎に曝されると随分やせてしまいました。そしてこのチョークは生石灰になっているでしょう。水を垂らせば分かります。
生石灰(CaO)の融点は2,572℃、沸点は2,850℃です。ライムライトが白色で光る理由は、2000℃を超えても溶けずに固体のままでいられるから、となります。鉄では溶けてしまいますね。コールマンランタンのマントルの材質は何でしょうかね?
どんな物体でも、溶けたり蒸発しなければ、その物体の温度に従った波長の光を出します。ある温度が与えられた時、光の波長はある分布をなします。放射エネルギーの極大値は温度が高くなるに従って波長が小さい方に移動します。(ウィーンの変位則)これを理論的に明らかにすることが19世紀末の物理学者の大きな課題でした。量子力学の始まりです。
石灰を熱すると強い白色光を出すことを発見したのは英国人のGoldsworthy Gurney (1793-1875)です。彼はなかなか多才な人で医者・化学者・建築家などなど、英国伝統のアマチュア科学者なのです。英国の好事家(アマチュア)にはロバート・ボイルやヘンリー・キャヴェンディッシュなど科学史に名を残す人も多いのです。

彼は酸素+水素のトーチを発明して何でも高温の炎で炙ったに違いありません。そして石灰も試してみたのでしょうね。1820年代のことです。
1825年、マイケル・ファラデーのデモンストレーションを見たスコットランドの技術者Thomas Drummond (1797--1840)は「これは使える!」と閃いたのです。劇場で使えるモデルを開発したのは彼で、Drummond Lightとも呼ばれるのです。
最初にライムライトが使われたのはロンドンのコベントガーデンだと伝えられています。石油ランプに比べて明るいライムライトに当時の人々は感動したでしょう。しかし酸素と水素を混合して燃やすのですから事故も多かったに違いありません。1870年代に白熱電灯が発明されるとその役割を終えました。
スミソニアン博物館にはライムライトが保存されていて、その写真を見ることが出来ます。ヴィクトリア期の機器は美しく仕上げられているので感心してしまいます。
↓ポチッと応援お願いします!

(追記)スポットライトについて書き、SUBALさんの「安奈」という記事を読みました。私のブログは「時々、ギリシャ♪」なのですが、最近ギリシャについて書いていません。ネタはいくつかあるのですが、ちょっと重いのです。それで私が勝手に「ギリシャの美空ひばり」と思っているHaris AlexiouのΟΔΟΣ ΑΡΙΣΤΟΤΕΛΟΥΣを紹介します。明日は車で出かけますが、この曲が入っているCDを持って行きます。
炭酸カルシウムを高温で熱すると生石灰が出来ます。私の知り合いの経験では普通のブタンバーナーでも可能です。
生石灰を少量とって手のひらにのせ、水をかけると熱を発します。ライムライトを楽しんだ後、娘さんとこれで遊んだら喜ばれると思います。ただし量はちょっぴりですよ。