スカーレット手帖

機嫌のいい観客

里見八犬伝 -再演でござる-

2014-11-17 | 観劇ライブ記
初演で見ていた作品の再演を見る、というのは初めての経験でした。
イケメン舞台(って言うとおこられるんですかね)、観始めて約3年、だいたい一回りし始めてきた
ということなのでしょうか。(初演の感想

「里見八犬伝」2014年版を観てきました。

このチラシの「運命には逆らえない…」っていうの読んで
aikoの歌を口ずさんでしまうのは世代ですね。(「ロージー」です。)


またつらつらと感想を書こうかなと思っていたんですが、
なんだろう。ラララー ラララ ことばにできない。図にしました。

■初演の印象
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こんなんでしたね。たしか。
八犬士が玉をぽわんぽわん生んでいる印象がほんとに強く、個人の話が小粒だった。
本筋はベテラン2名におまかせ。
そしていろいろと思うところある感じを、有無を言わさぬ技術で圧倒的に振り切っていく、すばらしい殺陣。



■再演(今回)の印象
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今回、個人的にはこうですね。
なんというか、「(わりと)まとまった。」そんな感じです。
八犬士の存在感もなんとなく増したような気がしています。
2回目だからなのかしら??

初演では無かったような気がするのが「南総大崩れ」という設定で、
何年か前の「大崩れ」で、家も失ったり家族も失ったり、
なんかアイデンティティ見直しの危機に至ったんだよ!(うろ覚え)
みたいなことを言っている役が多かったと思う。
前回はたしか、玉梓の里見への怨念から、瘴気が満ちあふれている…
みたいな話だけだったような気がする。
こういうところに天変地異を持ってくるのはちょっとずるい感じがするけど、
でもこんなに大勢が自分の生き方や運命について極端な考えを持つきっかけとしては天変地異は納得感があるので、
手堅く定石を打ってきましたな、という感じでした。(えらそう)

あとは、全体の尺が長くなったわけでもないけど、
わりと個人個人の話がちゃんと描かれてるなーという気がしました。
殺陣の量が減ったぶん、人の性格を描く部分が多めに取られてるんじゃないのかしら。
前回は現八とかもっと意味なくいっぱい戦ってたような記憶があるんだよな。
ぬいと房八が乱闘の中、端っこで静かに死んでたり、と 芝居<殺陣 な場面もあったと思うけど、
今回はちゃんと芝居だけに目がいくようになってたと思う。

あと、特筆したいのはセットがよくなったということです。
相変わらず煙が出たり大音量で慌ただしい舞台ですが、
石階段とか、回転装置とかが前回の公演よりもぐっと良くなって(真田の経験が活かされているのか?)
観てる時に勢いだけじゃなくて奥行きが感じられるようになったなと思いました。
前はすっごいバタバタしてたけどあんまり多重構造っぽさがなかった気がする。
わーっときてわーっと戦ってわーっと解散、みたいな印象だけ残ってるから。

ほんとさー、前回は役者はいいのにどうも装置(脚本、演出など?)がドライブ感を止めているように思ってたので、
そこのところが出来る限り良くなったのを見届けられて、再演観た甲斐があったなと思いました。
…と、ここまで全体の印象の話です。

八犬士メンズの話、しとく??
しとくよね!!!

○山崎賢人 犬塚信乃:孝(初演:西島隆弘(AAA))
初舞台の山崎くん。去年あたりから推されていますねぇ。
私はテレビで何回見ても彼の顔を覚えられないんだ… なんでなんだろう。
同じように顔を覚えられなかった人といえば、若い頃の長澤まさみもそうでしたけど。
今回初めてちゃんと見ました。山Pに似てるなあ。
役どころも相まって、とってもいけすかない野郎として映りました。(褒)
背もあるし、光る存在感、いいじゃないですか。
ただなあ、声がもうちょっとなんとかならんもんかなーー 発声というかせりふまわしというかなーーー
声がこもって、憂いて怒っている若者ではなくて、ただの思慮が浅めの悪者(しかも小兵)みたいに見えちゃうよ。
(この点、前回西島くんは逆に思慮が深すぎたのかもしれないとも思った。ときどきじいさんみたいだったし。)
映像と舞台の違いを、本人も感じていることかと思いました。


○村井良大 犬川荘助:義(初演:渡部秀)
今回番手の上がった村井くん。
さすがの安定感です。
「下男」みたいな役、似合うよね。叩き上げ系巧いです。

キャラクターのことで言えば、
本当はこの人の役が一番観客の共感を集めるような形になるのが
理想だと思う。
お坊ちゃんだけど勝手ばかりで中二病みたいな主人公に寄り添いながらも反発して
自我を持って立ち向かおうとする人間 ということで、もう少し深まりそうな気がする。
しかし8人を描こうとするとそこに時間が割けないのが残念だ。
浜路を交えた恋のさや当ての部分とか葛藤とか、もう少し会話で取ってもよかったのちゃうか。

↑これ、前回の荘助のポジションに対する私の感想なんだけど、今回結構これやってくれてた気がする。
抑圧された人間の、窮鼠猫を噛んでる感がありました。巧い。
ひたすら褒めてすいません。
8人並んだ時に、もっとも日本人体型な村井くんの存在感、好きだわ。


○荒井敦史 犬田小文吾:悌(初演:村井良大)
新しい小文吾デターと思いました。
前回の村井小文吾は、苦労して苦労して農民として生きてる兄さんで
戦なんてとんでもない! という感じだった(兄というか母的なものだったのかな)けど、
今回の荒井小文吾は、体格も大きいし、
その気になれば鍬とか鋤で人殺しが出来そうな雰囲気を醸していました。俺の覚醒待ち、という感じ。
そんな小文吾だから、弟の遺志を継ぐのにもあまり悲壮感がなくてよい。
いや、あるんだけど、悲しそうなんだけど、この人は金槌でもそれなりの成果を上げそうな気がして頼もしいからね。
こういうバランスもあるんだなーと思いました。面白い。


○ 玉城裕規 犬坂毛野:智(初演:矢崎広)
うーん、やっぱりこの役は美味しい役。
乗りこなせるだけの技術のある人が演じているからこそだとは思うけど。
そんなわけで、初演の矢崎くんに引き続き、玉ちゃんもとってもハマっていました。
乙女のような矢崎毛野、娼婦のような玉城毛野、という感じで
まったく違う方向性の色気があるなと思いました。
ガラガラ声もなんかセクシーだわ。
メイクも派手に、衣装もだいぶカラフルになっていた気がして、よくお似合いでした。
存在感あるよな。
でもやっぱり志村けんコントシーンは残っていたので、笑ってしまった。
甲冑的な装備をつけての毛野の殺陣は結構大変だと思う。


○高杉真宙 犬江親兵衛:仁(初演:早乙女友貴)
この役が今回、もっとも印象が変わった。
演じる中の人がぜんぜん違う性質の持ち主だからだと思うけど。

びっくりするぐらい不安定で、よくも悪くも風のようにとらえどころのなかった初演親兵衛と比べて
しっかり道案内の出来る、ものごとを道理立てて説明の出来る親兵衛に今回はなっていました。
殺陣は控えめになりましたが。
高杉真宙くん、彼も初演から番手が上がって八犬士になりました。
もう、彼の扮装姿を見ているだけでもおつりがきまーす という人もいると思いますが、
ちゃんとチームの中に入って来ている親兵衛の演じ方は良かったんじゃないかなあ。
末っ子的な立ち位置で、しっかり八人の中に入り込んで描かれてました。
そんなわけで、「感情がわからないんだ」というのは「嘘でしょ!!」と思います。笑。
ちょっと泣いてるように見えたし。


○丸山敦史 犬村大角:礼(初演:市瀬秀和)
巧かったです。
誠実な、そして胸にワイルドさを秘めたキョウリュウゴールド犬村大角をまっすぐ演じられていたと思います。
背が高いよね。舞台映えします。顔がなんか劇的で濃いから、舞台メイク似合うと思うんだな。
最後の死に様がかっこよかったです。
前回の市瀬さんもそうだけど、大角役は安定してんなーと思いました。


○石垣佑磨 犬飼現八:信(初演:荒木宏文)
日テレの時代劇には石垣くんを呼ばないといけない決まりがあるのか(笑)
いい筋肉でした。すばらしい胸板でした。
わりと全員が辛気くさい性格をしている中、カラっとした現八のキャラクターというのが
舞台の上で輝いていたと思います。


○馬場良馬 犬山道節:忠(初演:加藤和樹)
この人のエピソードも結構軸に持ってこようとすれば持ってこれるんじゃないのかと思った。
べただけど。

と、前回の感想通り(?)親子問題がよりクローズアップされていたような気がするのは私だけか?
ばばりょには切なさが似合うよなあ と日頃より思っている私なので、
親父との間に繰り返される愛憎入り乱れる戦い、よかったですよ。
あとは、
背ぇ高っ! ほっそ長! 顔ちっっさ!!! 長髪エロッッッ!!!!


○松田賢二&白石美帆
前回のベテラン組と比較するとクラスダウンした感がちょっと否めないが、
白石美帆は口紅をピンクにしたり紫にしたりピンクにしたり紫にしたりしながら頑張っていた。

あと、
○猪塚健太
よかった。前こんな役あったっけ??
着流しの美麗な悪者いたっけ????? 
とずっと思いながら見てました。

そして
○江田結香
浜路が王道ヒロイン感を捨てる、というのはこれは新しくて、私は良いと思いました。
正直、やっぱり死んだ後恨みで突き動かされてるところの表現がキモだと思うので。
あのアクションは人によってプププになるかもですが、おもしろかった。彼女にしかできないだろうし。


まー、きりがないんでこのへんで。。
こうしてまとめると意外と褒めているが、
最初から70点なのと、30点取ってから70点なのとでは目線が違うよねっていうか
そんな感じだと思います。

ところで、今回も性懲りもなくエンタメ不感症の夫を連れていっていたのだが、
観終わったあと話をしていたら、「マホロバ」とストーリーラインを混同していた。
たしかに何か似てるっちゃ似てるよね。あれもなんか、運命と意志の話だったし。村井先生だし。


てなわけで、毎回文句言いながらもそれでも観に行く、それが舞台と私の関係なんだなあ。みつを。

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