スカーレット手帖

機嫌のいい観客

シアワセでなくちゃいけないリユウ&カワイクなくちゃいけないリユウ

2015-02-03 | 観劇ライブ記
「シアワセでなくちゃいけないリユウ」
「カワイクなくちゃいけないリユウ」




2年半ぶりの再演、そして続編も合わせて一挙2作上演のこの舞台。
帰ってきた4人芝居、

村井良大(グレッグ)
植原卓也(ケント)
吉川友(カーリー)
村川絵梨(ステッフ)


この若き俳優たちのガチンコ勝負を見に。
1/24の「シアワセ」、そして1/31の「カワイク」、行ってきたよ。


==

ああ…、私、このシリーズ大好きだわ……!

歌わないし、喋ってばっかだし、セリフ翻訳調だし、2時間休憩ないし、
てか4人しか出てないし、場面は基本的に休憩室しかないし、
超ドラマティックというよりは日常のだらだらから続く、
どうでもいい痴話喧嘩のようにも見えるけど結構深刻なところもあるけど、
でもごく個人的な、若者たちの話っていうだけなんだけど。
なんだろう。
その全てがすばらしい。愛おしいんですね。
キャスティングも、脚本も、演出も、そして劇場も、
ここでないとこれでないとこの人たちでないと、そして何より、
「今の私」がこれを観ないと!!
という気にさせる、なんかすごい作品。
語彙なくてすんません。
でもやっぱ、「すごい」んですもん。

すごいよな。
舞台アメリカだけど、みんな日本人なのに。(雑な感動)
しかも、見てる私だって、アメリカの郊外の若者の事情も、
読んでいる本の作者とかブランド名とかの固有名詞にどういう皮肉がこもっているのかも全然わからないのに。
でもなぜか、そのあたりの文化背景を「了承した」ような気分になって、
その上でそういう文化的なやつを飛び越えて、
ささやかでだらだらしてるけど、局地的に必死に生きてる男女4名の振る舞いを見つめながら

「分かり合いたいけど、結局分かり合えない人たちの図が醸す諦観」
「表層的なことや定型的なものはくだらないと思っているのに、
 結局そういうものに振り回される人たちの他愛なさ」
「思いやりに見せかけてるけど、自己満足でしかない人の冷たさ」


というかんじであぶり出される『人間って・・・』みたいなおかしみに、
自分の人生を重ねながら思いを馳せてしまう。馳せざるを得ない。

ていうか前回も言ってるけど、
やっぱちょっと邦訳のタイトルで、イメージ的に損しているような気がする。
カタカナで書いちゃうほどに軽くはないっす。でも、決して悲劇でもない。
なんだ~~~ なんといえばいいんだ~~~ 
ていうか単純に面白いんだよね。
タイトルから受ける印象よりももっともっと、この4人が「リアル」なのだ。生きてる。だらだらと生きている。
人間てくだらねーな、ポンコツだな、
でもいろいろあるけど、みんな意外と強いよな、
そうだ人生のエポックメイキングなんて、こういうだらだらしたところを後から振り返って
整理してでてくるもんなんだろうな とか、やたらしみじみ思わせる。
そんな人生の行間というか、幕間というか、休憩室そのもの、というか、
割り算して出てくる「あまり」のような部分の丁寧で激しい描きこみ がすごい。
セリフだけであくまで積み重ねていく会話劇なのだが。
(ちなみにもっともセリフの多い村井くん(グレッグ)は前後編で4万字喋っているとか。
 ほぼ修行僧の様相を呈している とおもう)


感想が概論みたいなことしか言えないのもアレなので、
ちょっと落ち着いて振り返ってみたい。
ネタバレもあるよ。ごめんよ。


今回、「シアワセ」はセンターステージのまさに横、LB2列目という、ほぼ出演者と同空間で見ることができた。
そのおかげで、出演者だけではなくてセットについてもしっかり目に入れられました。
前回3年前にカワイクを見たときは「わーおもしろい」で終わっていたのであんまり小道具の意味を気にしていなかったけど、
じつは、このステージ(四方から見られる、対角線上に2本の柱があるだけの可変式のセット)において、
『ゴミ箱』がけっこう重要な役割を果たしていた。
なんでもかんでもポイポイとこのゴミ箱に捨ててたんですよね。
で、シアワセでは、ゴミ箱の代わりに、給水機(っていうの? お茶汲み機? よくオフィスとかにあるやつですね)が角に配置されていた。
で、今回は捨てるものはない。代わりに水を汲むのだ。
彼らは大人になったのか?
無造作に捨てていたもの、が、気分を落ち着けるために飲み下すもの、になったのでしょうか。
あと、シアワセでは冒頭、全員がスーツケースを持って登場していた。
3年間で背負う荷物がそれぞれに増えたということ?
このあたり、考え出すと面白いのね。
そして、リンゴ
アダムとイブの逸話からの小道具だけど、これを大切に机の上において去るカワイクのステッフ、
ぶち投げて粉々にして去っていくシアワセのステッフとカーリー。
ここんところのループだけ見てても面白いと思う。(私も検証が足りてない。)

ストーリー的には、シアワセの元サヤ騒動の一連を眺めながら、「うーむ」という気になる。
ぶつかりあっても、非難し合っても、冷静なふりをしていても、現象だけが正しくて、どこにも答え(理想)はないものを。
だけどこの4人が必死こいて自分の理想の具現化(それも、たいそうなことはない。男女関係において「こうありたい」というだけ)
のために、必死こいてコミュニケーションを取っていくので、面白いのだ。
小難しい理屈をからめつつ、相手への期待が止まらないところがおもしろい。
側からみたらめちゃくちゃなのに、実現する、させなきゃ と思いながら生きているのである。
バカだなー、でも、羨ましくもある。
3年経っても、みんなそれなりにまだ理想主義なの。
まだまだ夢見がち。かわいい。
カーリーは子供産んでるし、一番スマートで大人だと思われながらも、なんだかんだでやっぱり夢見がち。
彼女については、ヒールの高さをよく見てるといいと思います。
ケントがまったくかやの外でちょっとかわいそうな兄さんになっていて、面白かった。

うーん、思い返すと、全編通して、やはり謎に力がある。
演出もすごいと思うけど、やっぱり4人の芸達者ぶりが光ってるんだ!
前回と同様に、いや3年の月日を重ねて、
20代のリアルと仕事人としての経験を積み重ねて余計に光っている村井、村川、植原、吉川。


みて、この4人。So Cute!(村井先生ブログより)


ああっ、
どうすればいいの!
ほんとうに面白いから!! 皆さんみてください。(ぜひ大阪公演を)

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