スカーレット手帖

機嫌のいい観客

舞台『弱虫ペダル』箱根学園篇~野獣覚醒~ -でん「せ」の巻-

2014-10-27 | 観劇ライブ記
いやーーーーーーー、忙しい。

余裕がない。

10月から生活環境がいろいろと変わったのですが、
なんといっても仕事内容がぜんぜん変わってしまい(会社は一緒)、もうなんか毎日すごい疲れている。
連日、ほぼ終電的な動きをしている。
今までのように、余裕をぶっこいて日中からパソコンとたわむれている暇がない。
ましてや若い男子について持論の考察をめぐらせる隙などぜんぜんない。
そんなこんなで、ここ1ヶ月のうちに自分の中の面白みというか、臭みの部分がまったく消え去ったような気がしてならない。
悲しい。
新生活は楽しいが、文化面が味気ない。
もっとなんかこう、ぐっちゃぐっちゃに楽しみたい…


そんなことを言いながら、西に向かう新幹線に飛び乗った土曜日。
いつのまにやら大人気のペダステ、野獣覚醒篇を観てきましたぜ。
今回のチケット供給元は、先般よりなにかと話題のこぐしパイセン。
サンキューソーマッチ!!

ーー

今回は、ハコガクの荒北が主役、という体を取りつつ、
インハイ3日目への確固たる伏線を張りまくり、決戦前夜の趣満載でした。
むしろ3日目にこの人たちのエピソードいちから盛り込むと4時間ぐらいやんなきゃいけないよね、
的なサイドストーリーの仕込みを先んじてやって頂いている感があり、
うむ、これだけ語っておいてもらえば3日目のクライマー対決がぐっとエモーショナルになるだろうな!
わっはっは!!(尽八)
という予感しかないでございます。

時系列として、

①ヤンキー荒北が自転車に目覚めるまでのはなし(2年前)
②インハイ2日目夜のこもごも(今)

というしかけになっており、
黒田くんがおもな狂言回しとして、あこがれのせんぱい荒北さんが
覚醒するまでのようすを語ってくれておりました。
黒田くんだけ新登場でしたが、フレッシュさにあふれた演技なのに、
ペダステの温度にとてもなじんでいた気がする。きゃわいいですね。秋元くん。

個人的にいちばんびっくりしたのは北村くんの上達ですね。
上達なんていうとすんごいおこがましいんだけど、まあ毎回おこがましいことしか言ってないから言うけど、
前回2日目で観た時は「わー、すごい気張ってるう」「しかし、声、足りん」
という感じだったんだけども、今回はなんだかとっても山神さんみたいでしたね。
そんな気張ってる感じもなく、ナチュラルな(ヤング)山神さん(高1)でした。
人の成長はすごいなあ。おい。

あとは滝川キャプテンのスタイルの良さですね。
今回は幸か不幸かわたし双眼鏡を忘れて行ってしまい
最初から最後まで肉眼で1階やや後方席から観ておりましたが
スタイルがよすぎて鼻血が出そうでした。
先に書いたように、今回の舞台の構成として①と②の時系列が入り組んでるのですが、
時間経過を髪の毛の長さで表現しているのですね。
そして、ヤング時代の髪の毛(みんなのきなみ短い)は地毛なんですよ、みなさん。
ということはヤング福チャンの金髪も地毛なんですね。
そのときの、地毛の、滝川キャプテンの、スタイルの良さ。
鼻血です。

というか、役者の肉体を今回はすごい見つめていた感があり、
制服姿の新開さんと東堂のパンツの細さの違いとか、よかったね~~あれは萌え~~~だわね~~~~

そして主演、鈴木拡樹様。
ほんとに彼は毎回役によって顔が違うよ。
半月前まで天使やってた人と思えないよ。
そして素はどの役とも違ってほんわかしっかり人間だよ。
毎回彼のカーテンコール等の挨拶の様子をみてると、
「あっ、憑き物が落ちた」という感じがして、すごく不思議なんだけど、
今回もまったくもってそうでした。
さっきまで
ウルアアアアかっくらってやるよお
と言っていた男とは思えない。
ほんとうに、毎回野獣に憑かれているとしか考えられない。

今回の舞台を拝見して、これから心の中では彼のことを「鈴木プロ」と呼ぼうと思いました。
ちょっといっぱい叫んでるところセリフがこもるわね、と思いましたが
それもいいんじゃナアイ…
というか体力すごい。めちゃくちゃ回してるがな。走り込みまくりだ。
荒北を福ちゃんが長々と鍛えている場面が多く、本当に走りこんでいる。
なのにぶれないのだ。
鈴木プロ、どうなっているんだ。身体が。こわい。
最後の挨拶も、頸動脈が切れそうな勢いで「ありがとうございました!!!」と言い放っており、
とてもかっこよかった。
泣いた。

そして、その荒北を引き立てるセットがまじかっけーんすけど、という感じでした。
冒頭、舞台の真ん中でライトを放っていた原付が途中で消え(上に引き上げられる)、
最後までバラバラに釣られていた自転車のパーツがパズルが組み合わさるみたいにカチっとハマり、
そして荒北のセリフだ!
「今じゃ現実はひっくりかえって、俺はインハイで走ってる」(的なことを言う)
→背後の車輪がぐるっと回ってあらわれた野獣の眼が光る!!

ああっ、あれはめっちゃかっこよかった!!
なにあの仕込み!光る眼!!最後まであの眼を取っておく演出西田シャトナーせんせい!!
最高だったわ!!!!なんやねんまじかっけーやんけあれ。
あそこもっかい!!!観たい!!!

荒北はほんとうに主人公感があるんだね。
努力してる人だもんね。負けず嫌いなのよ。
負けたくないから前向いて努力するのよ。なんて人間として正しい物語なのか。


いやー、しかしペダステはずるい。
オープニングの音楽聞いただけで泣くし、
「過酷さも 困難も 失敗も…」が始まったら泣くし、
「青空のスポットライト~♪」ではもちろん泣くに決まっているしね、

うああああああ
大好きです
ほんとにありがとうございました。

そして、なんだろうなー、
なんかもう、舞台も客席も「おなじみ」感がすごいある。
役者的にも気持ちいいんではないでしょうか。こんなに愛されて応援されてねえ。
パズルライダーも、今回も素敵な仕事してました。
頭のあたりの、荒北が転んだときの自転車の役をふたりがかりでやってたのよかったなぁ。
後はなんだ、ミツ先輩と鳥後輩とか、リアルとのリンクをさせながら
楽しい感じでやってたね。
もう金城さんなんか、アンディやり過ぎてちょっとキャラクターの説得力がなくなってきつつある感あるんやで…
面白いけど!!

あ~あ、3日目が来てしまうのが怖いな。
だって終わってしまうでしょうが。
次の年もやるのか? とも思うが、そうなるときっと座組も変わるでしょうな。
テニスも終り、自転車も終り、水泳アニメも終わって
私はいったいどうすればいいのさ………

考えれば考えるほど途方に暮れますが、まあ、
ミツさんおっしゃるところの「でんせつ」の完成を観るために、
とりあえずは正座で待機しております。

ジャンヌ・ダルク -10/12の聖少女を観た話-

2014-10-20 | 観劇ライブ記

これを観たかったんだよ。
ジャンヌ・ダルクを観てきました。
10/12お昼公演でした。


本当に素晴らしかった。
あまりにすばらしかったので、終演後すぐに、「おかわり」しに行こうかなと思った。
むしろ、行く気満々であったよ。
この夏、高ぶりを求めて、同演目のために10回劇場に向かった身からすると、
もう1回観ることなんて逡巡するようなことではないのだ。

だって、スケジュール的には、まあ、行ける。
そしてお金は、まあ、いつものごとく火の車なのだが、本当に好きなものがあれば
社会人であればお金は何とかなるものなのだ。(と、私は信じて生きてきたよ。)

でも、である。
私は、あの少女が神の声を聞いたときのまなざしから、戦場での可憐で孤高のたたずまい、
聞こえなくなった絶望、そして絶命の瞬間までの一連の流れを見てしまった。
もう話がわかっている。
その上で、もう一度まっさらな気持ちであれを追えるのか?

どうも感じるに、演劇を見るというのは一つのドキュメントを観に行くことに近い気がする。
なんでしょう。Showというよりは、happening という感じだ。
その時の自分の感情の動きまで含めて、予測不能の、1回限りの、事件を観に行っている。
その緊張感、ストレス、高揚を、味わう遊びである。
すごい贅沢だな、オイ。

130名を超えるという出演者、時に民衆、時に兵士、時に腹に妖怪のような修道士たちとして
舞台を駆け回るあの迫力と、その中心で輝き、ぎらつくプリンシパルの面々のたたずまい。
迷いのない目をした有村架純のジャンヌダルクと、
齢50手前にしながらティーンのようなはかなさを見せつける王子、ヒガシ。
誇り高いフランスの兵士たち。(矢崎広よかったわ~)王家の正義とジャンヌの正義。
あの衝撃を、もう一回私は心を砕きながら観ることが出来るのであろうか。

平たく言うと、しんどい。
正直、しんどい。
心を持っていかれすぎる。
テニミュは音楽で表現する、ミュージカルだから耐えられたのだろうか。
あと、絶妙な未完成感があるから。(と、私が言うのもなんかおこがましいんだけど)

私のジャンヌはあのとき花開いて、あの時絶望を超え、あの時信念のもとで死んでいった。
そう思うことにしました。
彼女はとても美しかったので、それでじゅうぶんなのでした。


という感じで、いろいろと今回は「同公演を複数回観に行くこと」
というものを考えてしまった。
てかふつう1回観に行ったら十分なんじゃね?
というそもそも論にはフワッとした布をかぶせつつ、
過ぎたるはなお及ばざるがごとし ということで、舞台鑑賞にも適量があるんだと思う。
ようやくそんなことに気付いたよね。私ってば。

レディ・ベス -だって、ベスだもん-

2014-10-07 | 観劇ライブ記
さて、もはや終幕から半月ほど経っているのですが、「レディ・ベス」見てきましたのでメモしておきたいと思います。

世界初演ミュージカル「レディ・ベス

名古屋初日を見に行きました。
思い返せば昨年の秋ぐらいでしたか。加藤和樹がまた東宝ミュージカル出るよと聞いたのは。
しかも主演!すごいなーやるな路線に乗ったな、などと思っておりました。
(路線への乗り方については詳しく知らない。けど雰囲気でこういうこと言うよね私は。ショービズ界こわい。私は観てるだけ。)
いや、なんか、1年てあっというまだね。
くしくも今日は加藤和樹のなるほどBirthdayじゃねーの。おめでとうございます。
三十代も応援してますぜ。
話はそれるがこういう節目節目のブログにソウルが感じられるところが彼の魅力である。

観に行ったときのキャストはこんな感じでした。


私的には、この初日が観たいベストだと思った。
(次点、大千秋楽の顔合わせ)
石丸さんの生演技、そして吉沢梨絵さんの歌を聴いておきたかった。
フェリペは古川か平方か大変迷いましたが、まあここはゆん様でしょうと判断。
あとまあ初日なんで、和樹さんなんか喋るかなと思いまして。(案の定喋ってた)
育さんは最近観てないけど、4年前に帝劇のモーツァルトで1回観たんだよ。

席は2Fの一番後ろでしたが、むしろセットが全景で見えてとてもよかった気がする。
円盤が八百屋舞台になっているだけかと思ったら回るんですね。このセット、とってもよかった。
文字盤の「1」が「J」になってるところがなんかヨーロッパぽかった。
そして、冒頭そのセットの真ん中でええ声で説明の歌を歌ってくれるアスカム先生こと石丸さん。
めちゃくちゃええ声~~~~~~ 惚れる~~~~~~~

レディベス、出た、あまりピンとこないヒロイン。
でもシシィ(エリザベート)ほどではないですね。
というかなんだか、東宝ミュージカルを見ていると、
基本的に「女はファザコン、男はマザコンなんだな」と感じる描写がめちゃくちゃ出てきますよ。
ベスについてはお父さんが王様だからっていうのもあると思うけどさ。

少女マンガのような出会いからロビンと結ばれ「逃げないで愛から」と「逃れるんだ愛から」の狭間で揺れる
ベス、ようやくここで地に足の着いた、人間らしい葛藤が生まれてきたなぁと思い、一気に好感を持ちました。
なんか、昔からよくある「聖なる声を聞けていた乙女が男を知ったとたんに普通の人間になってしまった」
みたいなやつだと思うんですけど、大人になってしまったからこそ見えてしまうものってあるよね。
恋にゆらめいてそれだけが世界のすべてかと思った次の瞬間、
父が誇れる王女になるという積年の意思がまた立ち現われる。
どの自分を選ぶのか、どう決めるのかという自問自答。ここで主役感が出ましたね。
そしてラスト、苦難を乗り越えて戴冠式を迎え、女王になったときのお花様(花總まり)の輝きと言ったら…!
この場面のために、この人はキャスティングされたのだなと思いました。
ビューティフルでした。泣きました。高貴でした。写真を手帳に挟みたいぐらい。

圧巻はやっぱり吉沢さん。彼女の歌と存在感すばらしかったなあ。
どこから声が出ているのですか一体。びっくりするぜ。前半は本当に、彼女が主役かと思った。
メアリーの境遇も相まって、ぐんっぐん引き込まれてしまった。
あとでサントラを借りて聞いて知ったんですが、
フェリペが歌の中でメアリーを罵倒するシーン、
「チビなんかと」→吉沢さん
「デブなんかと」→未来さん
て、分けてるんですね。微妙にリアルでおもろいやんけ。
あとは、マルガリータじゃないけど、ブラッディメアリーてここ由来なんだーと思いました。豆知識か。
まあこういう豆知識が増えていくぶんには悪いことはないけど。

そんでフェリペの古川くん。
うつくしかったーー!!
王子様はテクニシャン!
勝ち残るには情け無用!必要なのはクールな頭脳!
A COOL HEAD!
イエス!高須クリニック!!!
歌舞伎ものの王子様を華麗に演じてました。この役すごくいい。合ってる。
おいしい役だよな。

和樹兄さんは最初のほう、ちょっとこの人は悲哀の色が強すぎて、
陽気な流れ者のロビンさんあんまり合わないんじゃないかなと思っていたんだけど、
ずっと観ていたら引き込まれたし、あんな少女漫画な恋の落ち方して、幸せに結ばれて、
でも自分の行く先を思って別れを選んでくれながら「もう誰ともケコンしない」
と朗々と言われてしまったら涙爆発で大好きになりました。(もうベス目線)

そして、今回のお話、ベスが耳に飾る「イモーテル」という花がひとつのキーアイテムになっているのですが、
ロビーに出ると、でたあああロクシタンの販促コーナー!サンプル配布中!

たしかに、イモーテルっていままでロクシタンでしか聞いたことなかった!
イモーテル、ロクシタンの基礎化粧品のレギュラー商材なんで、サンプル何回か使ったことあるけど、
すごい匂いが草っぽくてあんまり私は好きではなかったんですよ。
でもなんというかこのレディベスの世界を味わってからだと、あの黄色い花は、素朴で草の匂いのする、
自由に外を駆け巡り、ひとときの冒険と恋に戯れた少女時代の象徴なのだなあと思い、
改めていい印象になりました。
私、まあ基本的にとっても影響されやすいもんですから、わりとその後よく化粧品を物色しに
ロクシタンに立ち寄っています。なんか購入するのも時間の問題だな。(ちょろい)

最後に、初の取り組みについても記入しておきたい。
今回、同行者と連れ立ち、初めて「出待ち」なるものを試みました。
ふだんよく観に行ってる若手イケメン俳優舞台では基本ご法度のこの「出待ち行為」。
でもどうやら東宝は違うんです。そこまでも含めての、エンターテイメントらしい。

中日劇場はエレベーターでふつうにスタッフ演者さんが降りてきて、
入口からスッと帰っていく方式なんですよ。カジュアルにぐんぐん帰っていきます。

吉沢さん!! サインしてくれました。
めちゃくちゃ小柄!フェス帰りの山ガールみたいな恰好で出てきて、
しかし顔が小さすぎてかぶってる帽子がめちゃくちゃあまってた。
よくあんな大劇場を震わせる歌声を出してたよね。ほんとにびっくり。
めちゃくちゃ気さくに喋ってくれました。
申し訳ない。疲れてるのにほんと申し訳ない気分になる!デマチ!!いたたまれない!!

ロビンの仲間の一人を演じていた、平間壮一くんにもサインと握手してもらいました。
あの、ハンサムライブとか出てた子ですよ…! 
舞台で見るよりわりと小柄でしたが(私の大女説)、顔がハッキリしており、やはりさすが、
目をがっちり見てきますね。丁寧に応対してくれました。
ちょっと感動して、そしてハンサムライブしか接点はなかったことに
(サインしてもらってる間の会話のネタがない)申し訳ない気分になり、
その後THE ALUCARD SHOWのチケット取ってしまいました。
ああー、ほんとうにちょろい客だな。私。平間くんをロックオンします。

接触はありませんでしたが、石丸様が華麗にお帰りになったのと、
和樹さんが相変わらずへんなサングラスかけてシュッと去っていったの、
そして禅さんのナチュラルすぎる帰宅状況には胸を撃たれました。
本当に、忙しいところすみません。

ちなみに、あまりに職場が近所すぎるため、別日に山崎育三郎くんにも会いに行きました。
育さん、プロでした。彼に関しては、お見送りが業務でした。求める人に対してびしっと全員に、
握手とサインをしてくれていました。ご利益ありそうでした。ありがとうございます。
(あと気付いたら研音に所属してるじゃないか。テレビに出るのか?)


そんなこんなで、劇場外でのあれやこれやも含めて楽しかったレディベス。
再演があったらまた観てみたいもんです。

マルガリータ~戦国の天使たち~ ―歌だけは頭に残る―

2014-10-06 | 観劇ライブ記
ここ一カ月くらいぐちゃぐちゃだったのだが、ようやく落ち着いてきた。
ブログに書いてはいないけど、レディベス名古屋初日やらテニミュやら、
相変わらずいろいろと観ていました。落ち着いたらまた書こうと思います。
ちなみにこの夏のテニミュは、結局10回観ました。ライブビューイングも入れると11回。
ああ、乗りましたね、大台に。
これだけ観ると、歌だけじゃなくて、なんとなくセリフも一緒にしゃべれるようになってくる。
口伝か。これが口伝というやつか。
さらなる高みがあるというのなら僕はそこへ行く そこへ行く~~

そんなこんなで、10月より転居しました。
いろいろと状況は変化しているけれど、
いちばんヒャッホウなことといえばもちろん観劇ライフが数段に便利になることである。
交通費1000円以内でスッと行ける劇場が爆増! うれしすぎてしぬ!!

そんなtokio観劇ライフ第一弾、「マルガリータ」行ってきました。



まだ仕事も暇なので、今のうちに感想書きます。
ざっくりと言って、ネガティブです。笑。

**

【総括】
まあ、なんとなく想定していたパターンの、悪い感じに転んだなー、というやつでした。
とにかく感想はこれです。
一体何をどう魅せたい舞台なのかが、最初から最後までさっぱり不明だった。

【なにがどうだったのか】
そもそも私、けっこうがっちりした歴史ものが好きなこともあるので、
安易に設定やらことばづかいやら服装やらが現代寄りになっている、
フワフワしたあかちゃんせんべいみたいな歴史ものが割と許せない派です。
でもまあ、そんなこと言ったって私だってリアル戦国時代知ってるわけじゃないんで、呑み込んで観ます。
とくに今回イケメン俳優出演というのが売りだったと思うので、衣装とか振る舞いは仕方ないかと思う。
いつもの戦国鍋の舞台シリーズのノリですね。
だけどなんか感動がないのよね。まず少年使節が普通に今風の洋装で、
4人だけで船から降りて帰ってきているところからしてなんか「ぱっとせんなー」と思いました。
そしてその「ぱっとしない」感じが最後まで続いて行きました。

今作品、戦国鍋テレビのプロデューサーがやるということで、
キャスト陣の名前からいろいろ想定していたことはあったのですが、案の定というか来ました、
「中途半端に笑いが入ってくる」
わかるよ。わかる。やましげが、寿里が、芸達者なのはわかる。コメディもいけるの知ってる。
むしろ、シリアスだってすごく魅せられる人たちなのはわかる。
見てて楽しいし好きです。とっても戦国鍋テレビだった。懐かしい感じがしてうれしかった。
だけど今回それはどうだったのでしょうか。
とくにやましげ氏の秀吉、あれはもっとあの二面性が凄みとして生きる演出が出来たんじゃないの。
やましげ氏には、こんなに引き気味で観ている私でさえ、笑いを引き出されてしまった。上手い人ですわ。
しかし、それでよかったのか。
上手に笑いを取る人、そしてそのあとに恐怖発言をする空気を変える演技ができる人、
それだけのポジションでよかったのか。疑問でござる。
まあでも彼らはまだいいほうだったかもしれない。好きにしていいように彼ら用の尺が取られてるんだもん。
かわいそうなのは石井ちゃんと北代くんですわ。
ほんとに、「わー」としか言いようのない脇すぎる起用のされ方で本人たちも戸惑ったのではないでしょうか。
地味に目立つ民衆として、登場していました。
あと年末の明治座でおなじみ、大堀さんね。
わかるよ。あの馴染んだお祭りの空気感、思い出してねっていう感じだよね。
でも彼が冒頭に出てきたときになんというか、この構図が私には制作側からの
「あの感じで行くからいろいろ許してね」というメッセージに見えてきて、
なんかイラっときたわけ。(すんません)
で、最終的にいつものあの感じ(お祭り騒ぎでいろいろあったけど大団円な感じ)なんだったらいいんだけど。
そうでもないわけじゃないですか。
てかそもそも鍋舞台ではおなじみの、あの狂言回しみたいな人が出てきて説明をするプロローグの仕方って、
私はすごく狭い劇場向けな感じがするんですよ。
小劇場ならぜんぜん良いけど、明治座で観るときいつも「サイズ感が違う」と思ってイライラしています。
今回は、そこまで広い会場ではなかったものの、
冒頭にあれを入れる時点で今一つ気に入らなかったというのに(個人の意見です)、
それに加えて各人の演技のサイズがバラバラだったもんですから、余計にちぐはぐに感じました。

あとね、中途半端に歌と踊りが入ってくる。
最初からびっくり。これはいったいどうしたことなのか。
そして頭の「マルガリーター」の曲でソロパートを歌っている女子、あまりに下手やん。
彼女はミゲルの嫁の役だったのだが、セリフ回しも甲高くて聞き取れやしねえ。
そしてたびたび挟まれるミゲルの独白シーンでの踊り。これはなんやねん。全然胸にズーンと来ませんわ。
そういえば蒼井翔太の歌が入ってくるということだったような気がするが、
いったいどこで出てきていたのか。覚えていないぞ。
ハア、どんどんイライラしてくる自分との戦いでございました。

【思ったこと】
細貝圭がもっと生きる座組にしてあげてほしかった。
春に帝一見たときは全然気付かなかったけど、今回彼は
(まわりの3名が細身だったり相手役の女優が小柄だったりする対比のせいもあるかもだけど)
結構体格がよく、なんとなく大山真志をほうふつとさせるところがあるなと感じました。
お芝居は大山くんのがうまいと思うけど。
セリフ回しはよくも悪くも、終始歌っているように聞こえた。
(帰国子女ということなので、あんまり日本語がハラオチしていないのかもしれない、
とうっすら思う言語オタクのわたくし)
悪く言えば大仰で繊細な感情があんま分かんないなーという感じなんだけど、
しかしそれを上回るすごいエネルギーをかけた熱演ぶりを目の当たりにし、
彼はなんか、このサイズの、このトーンの舞台には合わないというか、
もっと「ザ・劇的」な演出の中ではものすごい生きる人なんじゃないかという印象を持ちました。
ミュージカルとかさ。
せっかく彼を主演に、そして「千々石ミゲル」という苦悩の人を主役に据える内容の話であったのだから、
もっと話を骨太に作ってあげてもよかったのではないかと思いました。
彼が苦悩する対象として、周りの世界の描き方がおろそかすぎる気がした。
秀吉は半分おちゃらけているし、妻になる女子の魅力もあまり感じられなかったし。
バリニャーノは狂言回しのおっさんだし。

井深、染谷はある意味かわいそうに感じた。役割もあんまりないし、
お芝居も並んでみるとちょっとあまり上手くないなあ… と思う次第。(もはや若干八つ当たりか?)
若手俳優の中ではよく知ってるし、本人のキャラもわかっているからこそ、
キャーキャーキラキラした世界で水を得たように生きる井深くんがしんみり賢い役(合わない)だったり、
最近はひた向きな役者魂が輝いている染様が空気読めない系の元気な役(無理をしているように見える)
だったり、ううむ… と、腕組みして見ざるを得ない感じでした。
まあ、彼らも役者だから、キャラに合わない役でもちゃんと人物造形を深めてもらえる時間があれば
演じようもあると思うんだけど、脚本上、あんまり掘り下げてもらえてないからないさぁ… 
影が薄かったですね。
「天使」「天使」と好評だった衣装は、確かにかわいいなーとは思いましたが、
まあこの人たちも私と同世代、いうてもアラサーですからね。
光も飛びきっていない舞台上で見ると、結構な若づくりに見えますぜ。

そんな中、鈴木拡樹だけが器用に上手に演じており、意外な底力を感じさせた。
役的にもおいしいとは思うけど、よくもこの気分の乗らない脚本(←決めつけ)を読んで、
上手に不要なところをミュートしつつ、自分の役割を演じきったなあ、
正しく感動を呼ぶ演技をしてくれた拡樹くんに3000点!という感じでした。
あー、この人は俳優なんだなあということを再認識させられたと言いますか。
もう、無理に少年使節4名を全面に出さずに、
このミゲルとジュリアンだけにもっとクローズアップした話にしとけばよかったんじゃないの。
メインビジュアルとかも。と思いました。
ていうかタイトルだって「天使」じゃないでしょ。もっと人間くさいでしょ。
そこを魅力の軸として切り取れば、もっとみんなのいい面が見れるはずなのに
もったいないわねと心から思いました。(原作読んでません)


いやー、戦国鍋テレビは大好きなのですが、「戦国鍋」ラベルを貼ることと、
そしてチケットは売れるのかもしれないが、「イケメン」を全面に押し出すことが、
誰にとっても、何一つプラスに働いていなかった(ように私には感じられた。切実にな。)ことが、
今回とても残念でした。
「もっと歴史を知りたくなるシリーズ」という、初心者へと門戸を広げる雰囲気の銘打ちでやっているので、
これぐらいのものでもよいのかもしれないが。
でもそれにしてもね… 舞台って、演劇って、てかイケメン俳優ってこんなもんか…、
と思われたらすごいつらいなあという感じ。
あー、つくづく、いろいろともったいないです。
同じようなシリーズでやるのであれば、再考したほうがいいよなあと思いました。
つうか、思うに、もっとまじめに作りこんで、
宝塚あたりでやってもらえばこれはかなりの名作が生まれるのではないかしら。
原作読んでいないけど、きっとそんな気がする。

まあ、「マルガリータ」=「真珠」という知識だけが身に付いたので、
今後ピザ屋や飲み屋でマルガリータを注文する機会があったときには、
「ああ、真珠なんだなあ」と思うようになると思う。
って豆知識だけ得てそれでよかったのかこの舞台は。

以上でござる。