★ザ・ブック・オヴ・ラヴ
(演奏:シェリル・ベンティーン)
《チャプター1:Longing》
1.ユー・ドント・ノウ・ミー
2.ビー・マイ・ラヴ
《チャプター2:Flirtation》
3.ブルー・ムーン (デュエット;with ジョン・ピザレリ)
4.レッツ・ドゥー・イット
《チャプター3:Lust》
5.ドント・セイ・ア・ワード
《チャプター4:Love》
6.ザ・ブック・オヴ・ラヴ
7.ユー・トート・マイ・ハート・トゥ・シング
《チャプター5:Joy》
8.ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド
《チャプター6:Disillusion》
9.クライ・ミー・ア・リヴァー
10.アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー
《チャプター7:Loss》
11.グッドバイ
《エピローグ》
12.ザ・ブック・オヴ・ラヴ(リプライズ)
(2006年録音)
マンハッタン・トランスファーのソプラノ、シェリル・ベンティーンが卓越した歌手であることに異論があろうハズはない。
しかし、彼女を仮に歌姫と認めても、ディーヴァだと言われると違和感があるのは私だけだろうか?
いや、マントラでの彼女とて恐るべきコーラス・ワークを披露している割には、そしてソプラノという花形のパートを担当している割には目立たない・・・はっきりいえば地味なのではあるまいか?
いや、それだけコーラスのハーモニーが堅固でバランスがよいという裏返しでもあろうが。。。
当然に察することができることとして、彼女はひたむきで真面目で周りの音をよく聴きながら花形のパートを担当している・・・そして、そんな彼女であればこそ生きる他のメンバーのそれぞれ独特な個性に囲まれているからこそ、サイコーのアンサンブルになると考えられなくもない。
“ヴォカリーズ”やら“バードランド”などは、確かに人間業とは思えない圧倒的なエンターティメントを感じさせてくれる。。。
それも、やはりあの4人のアンサンブルがあればこそである。
しかし、彼女のソロ・アルバムとなると難しい問題がある。
すべての彼女のソロのディスクを持っているが・・・何だかんだ言いながら、要するに彼女のファン・・・我が国のかつての美徳、どこまでも真面目でひたむきな彼女の態度は時として単調で退屈さを覚えさせることになる・・・ことがその問題である。
旧くはベーシストのロブ・ワッサーマンのアルバム“デュエッツ”において、“エンジェル・アイズ”の緊張感ある壮絶さに魅入られた歌唱にしても、リッキー・リーやらアーロン・ネヴィル、そしてジェニファー・ウォーンズなど錚々たる個性派が1曲ずつ入替わっていく中にあったために、シェリル・ベンティーンここにありという感じで存在感を示すことができたのだが、あの歌を10曲並べられたらとても聴き続けられない。。。
1日1曲ずつ細切れで楽しもうという感じになってしまう。
彼女が曲やアレンジを如何に工夫したとて、本格派の曲に本格的に取り組んじゃった時には、私には肩の力が抜けきっていない作品に思えてしまう。
すましていながら意識してはしゃいだように聴かせたいと思っているように感じられた“レット・ミー・オフ・アップタウン”や“トーク・オブ・ザ・タウン”などは、ブレーキを踏みながらアクセルを吹かそうと頑張っているかのような歯がゆさも感じたのは事実。。。
駄作ではないのに、なぜか積極的に聞きにいけない・・・そんな作品だった。
でもこのアルバムを耳にして、それらの作品の彼女もすべて許せるようになった。
やはりすごい歌手だったんだと・・・そのように思わせるようになったことが、このアルバムの最高の値打ちだったとさえ思える。
このアルバム“ザ・ブック・オヴ・ラヴ”というタイトルどおり、憧れから破局まで“愛の物語”を曲を追って一冊の本を編むがごとくバラードでコンセプチュアルに綴ったもの。
冒頭から思わずジンとくるようなバラードを配し、先のエキセントリックさも“クライ・ミー・ア・リヴァー”などで、さりげなくドスを効かせていたりする。
このアルバムに、彼女のクラフツマンシップが他よりも多く注がれているかどうかは定かでないが、アルバム全体から仄かに立ち上るオーラがあって、紛れもなくその空気感に虜にされてしまうような、そんな1枚である。
秋の夜長に女声ヴォーカルをといわれれば、今、(語弊を恐れず言えば)最良の意味で不器用な彼女の歌声と共にありたい。
そんな気分なのである。
★ザ・ライツ・スティル・バーン
(演奏:シェリル・ベンティーン)
1.ホワット・ザ・ワールド・ニーズ・ナウ
2.ザ・ライツ・スティル・バーン・イン・パリス
3.ブラック・コーヒー
4.イフ・エヴァー
5.キリング・ミー・ソフトリー・ウィズ・ヒズ・ソング
6.シャッタード
7.ソフィスティケーテッド・レディ
8.ラブズ・リヴァー
9.リトル・ガール・ブルー
10.ユー・トート・マイ・ハート・トゥ・シング
11.ヒー・ワズ・トゥー・グッド・トゥ・ミー
12.タンゴ・デル・ファンド
13.グッドバイ
(2003年録音)
さて、シェリル・ベンティーンの作品で最も好きなものは・・・と問われれば、実はこれかもしれない。
ジャケ写が“ぶりっ子”しているとおり、ここでのシェリルはいささかポップな感じの伴奏に乗って、やはりしっとりバラードをお嬢っぽく、でも親しみやすい方式でものにしている。
喩えて言えば隣のちょっと品のいいお姉さん・・・という感じだろうか。
それが深窓の令嬢っぽくて、また上品で真面目で一生懸命で不器用さも感じちゃったりするので、目を離すわけには行かない・・・これが計算でできているならたいしたものだが、ポテンシャルな魅力として彼女に備わっているに違いない偶然の能力だと信じている。
ゴードン・ジェンキンスの“グッドバイ”は私の大好きなナンバー。
先の“ア・ブック・オブ・ラヴ”でも採り上げていたけれど、くちゃくちゃに心砕かれた別れではないと思うけれど、多分歌い手の性格からすれば深刻なダメージを受けちゃった別れなんだろうな・・・と好意的に受け止められてしまうところが不思議な歌唱である。
もとより愛聴盤のひとつ・・・である。
★ムーンライト・セレナーデ
(演奏:シェリル・ベンティーン&ザ・ハーモニー)
1.ムーンライト・セレナーデ
2.ブルー・プレリュード
3.不思議の国のアリス
4.キャラヴァン
5.ハウ・ハイ・ザ・ムーン
6.ランド・オブ・メイク・ビリーヴ
7.ソフト・ストラム・ブルース
8.マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ
9.フォー・クラウディオ
10.トゥル・ティルズ
11.シンス・ファースト・アイ・ソー・ユア・フェイス
(2003年作品)
プロデュース、コンセプトが成功していると感じられるものとして、このコーラスアルバムがある。
マントラとは別の魅力があることはいうまでもない。
本来、周りに溶け合ってその魅力を発揮しているマントラでのシェリル・ベンティーンだが、ここでは主役を張らねばならないことが第一要因である。
そして確かに彼女は主役として主役のパートを歌っているのだが・・・いい意味で主役と思えないって感じがするのだ。
カリスマ的な歌唱で、圧倒的な存在感でその場を仕切ることはやはりない。。。
それを物足りないと取るか、彼女の個性と取るかで好悪は分かれるだろうが、私はそういうもんだ・・・と思える聴き手である。
本当にシェリル・ベンティーンは不思議な独自の存在感を持っている。
★シングズ・ワルツ・フォー・デビー
(演奏:シェリル・ベンティーン)
1.ラスト・ナイト・ホエン・ウィ・ワー・ヤング
2.ブルー・ムーン
3.ザ・ボーイ・ネクスト・ドアー
4.アイ・マスト・ハヴ・ザット・マン
5.バット・ビューティフル
6.ソウ・スウェル
7.ホエン・ユア・ラヴァー・ハズ・ゴーン
8.イージー・リヴィング
9.イン・ア・センチメンタル・ムード
10.ストンピン・アット・ザ・サヴォイ
11.アイ・ゲット・アロング・ウィズアウト・ユー・ベリー・ウェル
12.ワルツ・フォー・デビー
(2004年録音)
エヴァンス所縁の曲を多く配し、ケニー・バロンと対峙させたこのアルバム。
これも彼女のクソ真面目なところがクローズアップされる結果となり、最初聞いたときはカタイな~とか、一本調子だなと思ったものだが。。。
“ザ・ブック・オヴ・ラヴ”
このアルバムでの歌唱を聴いて後は、ひたむきなよい歌手であると思えるようになってしまった。
バロンのピアノは私にはややトーンがキツいけど・・・
最後の“ワルツ・フォー・デビー”の歌声には、この歌手の巧まずして人をひきつけずには最良のトーンが聴かれ、ただ聞き惚れるのみ、そんな感じで贅沢な時間を貪ることができるのである。
地味だから何でもできてしまうというワン・アンド・オンリーな個性を武器にする歌姫・・・
次なるコンセプトはどんなものだろう。
とても楽しみなのである。
(演奏:シェリル・ベンティーン)
《チャプター1:Longing》
1.ユー・ドント・ノウ・ミー
2.ビー・マイ・ラヴ
《チャプター2:Flirtation》
3.ブルー・ムーン (デュエット;with ジョン・ピザレリ)
4.レッツ・ドゥー・イット
《チャプター3:Lust》
5.ドント・セイ・ア・ワード
《チャプター4:Love》
6.ザ・ブック・オヴ・ラヴ
7.ユー・トート・マイ・ハート・トゥ・シング
《チャプター5:Joy》
8.ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド
《チャプター6:Disillusion》
9.クライ・ミー・ア・リヴァー
10.アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー
《チャプター7:Loss》
11.グッドバイ
《エピローグ》
12.ザ・ブック・オヴ・ラヴ(リプライズ)
(2006年録音)
マンハッタン・トランスファーのソプラノ、シェリル・ベンティーンが卓越した歌手であることに異論があろうハズはない。
しかし、彼女を仮に歌姫と認めても、ディーヴァだと言われると違和感があるのは私だけだろうか?
いや、マントラでの彼女とて恐るべきコーラス・ワークを披露している割には、そしてソプラノという花形のパートを担当している割には目立たない・・・はっきりいえば地味なのではあるまいか?
いや、それだけコーラスのハーモニーが堅固でバランスがよいという裏返しでもあろうが。。。
当然に察することができることとして、彼女はひたむきで真面目で周りの音をよく聴きながら花形のパートを担当している・・・そして、そんな彼女であればこそ生きる他のメンバーのそれぞれ独特な個性に囲まれているからこそ、サイコーのアンサンブルになると考えられなくもない。
“ヴォカリーズ”やら“バードランド”などは、確かに人間業とは思えない圧倒的なエンターティメントを感じさせてくれる。。。
それも、やはりあの4人のアンサンブルがあればこそである。
しかし、彼女のソロ・アルバムとなると難しい問題がある。
すべての彼女のソロのディスクを持っているが・・・何だかんだ言いながら、要するに彼女のファン・・・我が国のかつての美徳、どこまでも真面目でひたむきな彼女の態度は時として単調で退屈さを覚えさせることになる・・・ことがその問題である。
旧くはベーシストのロブ・ワッサーマンのアルバム“デュエッツ”において、“エンジェル・アイズ”の緊張感ある壮絶さに魅入られた歌唱にしても、リッキー・リーやらアーロン・ネヴィル、そしてジェニファー・ウォーンズなど錚々たる個性派が1曲ずつ入替わっていく中にあったために、シェリル・ベンティーンここにありという感じで存在感を示すことができたのだが、あの歌を10曲並べられたらとても聴き続けられない。。。
1日1曲ずつ細切れで楽しもうという感じになってしまう。
彼女が曲やアレンジを如何に工夫したとて、本格派の曲に本格的に取り組んじゃった時には、私には肩の力が抜けきっていない作品に思えてしまう。
すましていながら意識してはしゃいだように聴かせたいと思っているように感じられた“レット・ミー・オフ・アップタウン”や“トーク・オブ・ザ・タウン”などは、ブレーキを踏みながらアクセルを吹かそうと頑張っているかのような歯がゆさも感じたのは事実。。。
駄作ではないのに、なぜか積極的に聞きにいけない・・・そんな作品だった。
でもこのアルバムを耳にして、それらの作品の彼女もすべて許せるようになった。
やはりすごい歌手だったんだと・・・そのように思わせるようになったことが、このアルバムの最高の値打ちだったとさえ思える。
このアルバム“ザ・ブック・オヴ・ラヴ”というタイトルどおり、憧れから破局まで“愛の物語”を曲を追って一冊の本を編むがごとくバラードでコンセプチュアルに綴ったもの。
冒頭から思わずジンとくるようなバラードを配し、先のエキセントリックさも“クライ・ミー・ア・リヴァー”などで、さりげなくドスを効かせていたりする。
このアルバムに、彼女のクラフツマンシップが他よりも多く注がれているかどうかは定かでないが、アルバム全体から仄かに立ち上るオーラがあって、紛れもなくその空気感に虜にされてしまうような、そんな1枚である。
秋の夜長に女声ヴォーカルをといわれれば、今、(語弊を恐れず言えば)最良の意味で不器用な彼女の歌声と共にありたい。
そんな気分なのである。
★ザ・ライツ・スティル・バーン
(演奏:シェリル・ベンティーン)
1.ホワット・ザ・ワールド・ニーズ・ナウ
2.ザ・ライツ・スティル・バーン・イン・パリス
3.ブラック・コーヒー
4.イフ・エヴァー
5.キリング・ミー・ソフトリー・ウィズ・ヒズ・ソング
6.シャッタード
7.ソフィスティケーテッド・レディ
8.ラブズ・リヴァー
9.リトル・ガール・ブルー
10.ユー・トート・マイ・ハート・トゥ・シング
11.ヒー・ワズ・トゥー・グッド・トゥ・ミー
12.タンゴ・デル・ファンド
13.グッドバイ
(2003年録音)
さて、シェリル・ベンティーンの作品で最も好きなものは・・・と問われれば、実はこれかもしれない。
ジャケ写が“ぶりっ子”しているとおり、ここでのシェリルはいささかポップな感じの伴奏に乗って、やはりしっとりバラードをお嬢っぽく、でも親しみやすい方式でものにしている。
喩えて言えば隣のちょっと品のいいお姉さん・・・という感じだろうか。
それが深窓の令嬢っぽくて、また上品で真面目で一生懸命で不器用さも感じちゃったりするので、目を離すわけには行かない・・・これが計算でできているならたいしたものだが、ポテンシャルな魅力として彼女に備わっているに違いない偶然の能力だと信じている。
ゴードン・ジェンキンスの“グッドバイ”は私の大好きなナンバー。
先の“ア・ブック・オブ・ラヴ”でも採り上げていたけれど、くちゃくちゃに心砕かれた別れではないと思うけれど、多分歌い手の性格からすれば深刻なダメージを受けちゃった別れなんだろうな・・・と好意的に受け止められてしまうところが不思議な歌唱である。
もとより愛聴盤のひとつ・・・である。
★ムーンライト・セレナーデ
(演奏:シェリル・ベンティーン&ザ・ハーモニー)
1.ムーンライト・セレナーデ
2.ブルー・プレリュード
3.不思議の国のアリス
4.キャラヴァン
5.ハウ・ハイ・ザ・ムーン
6.ランド・オブ・メイク・ビリーヴ
7.ソフト・ストラム・ブルース
8.マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ
9.フォー・クラウディオ
10.トゥル・ティルズ
11.シンス・ファースト・アイ・ソー・ユア・フェイス
(2003年作品)
プロデュース、コンセプトが成功していると感じられるものとして、このコーラスアルバムがある。
マントラとは別の魅力があることはいうまでもない。
本来、周りに溶け合ってその魅力を発揮しているマントラでのシェリル・ベンティーンだが、ここでは主役を張らねばならないことが第一要因である。
そして確かに彼女は主役として主役のパートを歌っているのだが・・・いい意味で主役と思えないって感じがするのだ。
カリスマ的な歌唱で、圧倒的な存在感でその場を仕切ることはやはりない。。。
それを物足りないと取るか、彼女の個性と取るかで好悪は分かれるだろうが、私はそういうもんだ・・・と思える聴き手である。
本当にシェリル・ベンティーンは不思議な独自の存在感を持っている。
★シングズ・ワルツ・フォー・デビー
(演奏:シェリル・ベンティーン)
1.ラスト・ナイト・ホエン・ウィ・ワー・ヤング
2.ブルー・ムーン
3.ザ・ボーイ・ネクスト・ドアー
4.アイ・マスト・ハヴ・ザット・マン
5.バット・ビューティフル
6.ソウ・スウェル
7.ホエン・ユア・ラヴァー・ハズ・ゴーン
8.イージー・リヴィング
9.イン・ア・センチメンタル・ムード
10.ストンピン・アット・ザ・サヴォイ
11.アイ・ゲット・アロング・ウィズアウト・ユー・ベリー・ウェル
12.ワルツ・フォー・デビー
(2004年録音)
エヴァンス所縁の曲を多く配し、ケニー・バロンと対峙させたこのアルバム。
これも彼女のクソ真面目なところがクローズアップされる結果となり、最初聞いたときはカタイな~とか、一本調子だなと思ったものだが。。。
“ザ・ブック・オヴ・ラヴ”
このアルバムでの歌唱を聴いて後は、ひたむきなよい歌手であると思えるようになってしまった。
バロンのピアノは私にはややトーンがキツいけど・・・
最後の“ワルツ・フォー・デビー”の歌声には、この歌手の巧まずして人をひきつけずには最良のトーンが聴かれ、ただ聞き惚れるのみ、そんな感じで贅沢な時間を貪ることができるのである。
地味だから何でもできてしまうというワン・アンド・オンリーな個性を武器にする歌姫・・・
次なるコンセプトはどんなものだろう。
とても楽しみなのである。