石巻白梅ししの会便り

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  「ジョー君1万キロの旅 」 (メロリンさんからのお便り)

2016年04月06日 | お便り

     メロリンさん筆    ジョービタキ

 

 メロリンさんからお便りが届きました。

 さっそく紹介いたします。

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     『ジョー君の1万キロの旅』                 

  ジョービタキはスズメくらいの大きさでお腹の色はオレンジ。背中は黒く白い紋付き模様がある美しい鳥です。メスの背中は灰色。

                   

 それは一昨年前の12月1日だった。よく晴れた朝、庭にある緑色のプランターに一匹のジョービタキが止まった。君を見た初めての瞬間だった。君はジョービタキのオス。だから、ジョー君と呼ぼう。

  プランターはテラスの吐き出し窓の外側すぐそばにある。君は窓ガラスに写る自分の姿めがけて窓に飛びげりをはじめた。フワッバッタン、フワッバッタンといかにも痛そう。(笑っちゃう、何やってんの?)10回、20回と疲れを知らないようだ。が、見ていて可哀想になってその窓を開けてやった。

 数時間後、忘れた頃になってテラスの中でコトンと音がした。ジョー君がテラスの置物をつついて遊んでいる。かわいい。チョンチョンチョンと歩く。私は気付かれないように内側から覗いて楽しんだ。

 暫くして私は気がついた。どうもジョー君は出口がわからなくなっていると。仕方なく出口を三ヶ所開けに出た。

 ジョー君は人間を見てバタバタと暴れている。締め切り窓で暴れていた。そんなに人間が怖い?

 人が見えなくなるとおとなしくなった。そのうち出口をおやっという仕草で気がついたように見つけて、帰って行った。夕方近く。初めてのジョー君とのふれ合い。楽しかった。

 

 テラスは南側全面がはきだし窓になっていて10畳程の広さ。ここは野中の一軒家。この環境があったからこんな体験が出来たのだと思う。

 人は自然の多いところを何にもない所と言うけれど…。

 

 翌日、朝早くからあの窓を開けておいた。家族がそれぞれに皆出掛けた後、私は家に独り。昨日と同じく今日もいい天気。二日目。

 

 やっぱり、ジョー君テラスに入って来た。いたずら好き。こんなバードウォッチングは聞いたことがない。しかも、帰り際に素晴らしいさえずりを聴かしてくれた。鳥の図鑑には載っていないさえずりだ。

  普通鳴きはヒッヒッヒッヒッと口を閉じて喉を鳴らす泣きかた。ジョー君のさえずりはくちばしを大きく開けてピーちくパーちくピピピピヒョロロン、ヒョロローン。と長く唄うように続く。まるでバネ仕掛けの小鳥のように。たった独りで聞くのはもったいない。誰かと共有したいものだ。

  ひとしきり囀ずった後、さよならのご挨拶をしたように帰っていった。

 

 あの震災から3年。津波では助かった人も病気で亡くなり、一緒に支援活動をしていた人も急逝し、哀しみに包まれていた矢先の出来事だった。(ジョー君のお陰で慰められ心が明るくなった)

   糞が案外多いので窓を開けるのは、もうやめた。

 (3日目からは家族と共にジョー君の飛びげりを見ることができた。皆笑っちゃう。何やってんの?あの鳥。アハハ、ウフフ)

 その後、二月中旬まで(毎日のように)窓で飛びげりを見せてくれた。小雨決行だった。

 ジョービタキは冬の渡り鳥。夏は大陸へ渡り朝鮮かモンゴルあたりで繁殖をするとのこと。日本では単独行動。希に日本の廃屋で繁殖をしたケースもあるとか。ジョー君にとっては、うちのテラスは廃屋なのかも。もしかしたらここで繁殖するかも。

 春になりジョー君がいなくなると少し寂しくなった。最後にジョー君を見たのは2月15日だった。来年又来いよと強く思ってしばし忘れた。

 

 そして、夏が過ぎ秋が来た。まさかとは思っていた。

 11月1日。昨年よりも一ヶ月も早くジョービタキが門に止まった。精悍な姿のジョービタキの雄が目の前にいるではないか。うそ。まさか、ジョー君か?日本海を往復してここまで又、帰って来たのか?とても信じられない。まだ、信じられない。

 そして、暫くすると緑色のプランターに移動した。やった。飛びげりだ。窓に飛びげりを見せてくれた。やっぱりジョー君に違いない。(別の)ジョービタキが来てジョー君と同じ飛びげりをしていると考えるのは無理がある。ジョー君と同じ行動をするからジョー君だと思うのは自然である。

 ジョー君だ!本当にジョー君が又来たよ!

 素晴らしい筋肉だねぇ。日本海を往復してきたのか。毎日飛びげりで筋肉を鍛えていたんだねぇ。渡り鳥の筋肉はスズメとは違う。しなやかで強い筋肉だ。そして、あの小さな可愛い頭の中には素晴らしいセンサーが着いている。

 5千キロ~1万キロを旅していることになる。あの小さな体で。

 野生のたくましさには感動させられた。

 

 縄張り意識が強いためにガラスに写る自分の姿目掛けて攻撃をする。ジョー君の縄張りはうちの庭。

 今年も何度も飛びげりを見せてくれて、最後にジョー君を見たのは3月18日だった。去年よりも2ヶ月も長い滞在だった。寝床は隣の空き地の藪の中。

 ジョー君、来年又来いよ。今度来たら、あの窓を開けてあげるよ。

  窓ガラスに残るジョー君の足跡。泥も可愛い。雨の日毎に洗われて、そのうちに消えて行く。

 

 ジョー君、元気でね。                  (そうこうして過ごしているうちに、あの震災からもう5年が過ぎた)

                 

       ジョー君を 宇宙の記憶に  刻みたい

 

     ジョービタキ君のお陰で  ワンダーランド

    

     うつせみの 悲劇喜劇は 幻か

 

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 メロリンさん、ありがとうございます。

 日本海を自分の力だけで渡り切るジョー君の生命力、素晴らしいですね。

 被災地の人々もジョー君のように、目に見えない努力を続けて迎えられた今年の春ではないかと思いました。

  

 

 


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2 コメント

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鳥がくれる楽しみ (どんぐり)
2016-04-09 22:06:33
ジョウビタキのオスは色がきれいですよね。メスは地味な色だけど、私は好きです。
畑仕事をしていると、近くに寄ってきて尾をピコピコ振りながら、土の中から虫が出てこないか待っている……。人間をうまく利用していますね。
私が写真を撮ったジョウビタキは3月17日でしたが、ジョー君を見たのが18日なら同じ頃旅たったのかもしれませんね。
また同じ頃鳥に食べられた痕跡を発見、朱の羽根からジョウビタキと判定したのでしたが、旅立つことができなかったジョー君だったわけです。
運・不運で、生死が分かれるのですねえ。


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すずめの群れ (まつぼっくり)
2016-04-17 09:58:41
 庭たちにやってくる野鳥の様子を見るのは楽しみの一つです
 以前、古くなったお米を畑にまいて(捨てて)おいたら、それ以後飛来るすずめの数が一段と増えて、何十羽の個体がチュンチュンチュジュ!とすごい賑わいになりました。
 木の下で、餌をついばんでは、飛び上がり上の木の枝に止まり、別の雀が下の畑におりてついばみ、ということが複数でごちゃごちゃと行われ見事でした。
 美しい鳥ではありませんが、元気に活動するその姿はそれなりに心地の良いものでした
 近頃周囲が次々に大きな団地になってしまった我が家の庭は、野鳥のオアシスになっているのかも...。
 と感じてしまいました。
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