初めてのお宅の玄関で、どうしたものかと躊躇した。
猫殿の姿はないけれど、このお宅の中にいるに違いない。
ドア越しにそっと覗いていると「どうぞ」と声がする。
もう少しだけドアを開いた。玄関は旅館のような広い空間。
その先の格子扉が開いて主と思われるご婦人が出てきた。
「ヒロ君、お宅の猫ちゃんだったのですね」
ヒロ君 ? 猫殿のこのお宅での名前か。
「すみません。よくおじゃましてるのでしょうか?」
まるで息子の監督不行き届きを詫びるような気分。
「いえいえ、楽しみに待っているのはこちらです」
どうぞと伸ばされた手に誘導されて格子扉の中へ入ると
カーテン越しに猫殿の姿。なんと のびやかな姿 !