ルドルフ・ゼルキンの演奏のベートーヴェンのビアノソナタ第30番を聴いている。
第1楽章全体と第3楽章の主題が私にはとても印象的で、頭から離れない。どのように記譜されているのか、気になっていた。
弦楽器の楽譜とは違い、ピアノの譜面は右手と左手、両方にまたがって旋律が記されるので、ピアノの譜面を見てもなかなか旋律が頭の中に浮かんでこない。しかし曲を聴きながら旋律を追う楽しみがある。管弦楽曲のスコアよりも私に追いにくい。
しかし美しいと思った旋律がこのように記されているのか、という発見はうれしいものである。例えば第1楽章のA部分、右手の旋律だけが耳には聴こえてくる。しかし楽譜を見ると左手が16分音符を鳴らしている。これに気が付くと旋律に厚みを持たしていることがわかる。
同時にB部分の装飾音が印象に残る部分である。ベートーヴェンの装飾音というと第4番のシンフォニーを思い出してしまい、その執拗な繰り返しに私は閉口してしまうのだが、この曲では実に効果的で心地よい。
さらに第3楽章は主題と変奏であるが、主題と第1変奏、第4変奏が私好みの曲である。
主題の5小節目と6小節目にあらわれる装飾音の転がるような響きがこの曲全体を軽やかなものにしている。
その気分が第1変奏では、3小節目の転がるような5連部やそれぞれの小節に頻繁に表れる短い装飾音に引き継がれる。
こういう譜面を見ると、曲全体の美しさが譜面にあらわれていると感じる。
第30番の曲全体を支配している気分がこの二つの譜面にあらわれていると思っている。
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