読み始めた「魔女狩りのヨーロッパ史」は目をとおさず、「幻想美術館」(太田治子)から6編ほど読んだ。家に籠っている時は短くて完結する文章のほうがいい。
昨日読んだ中で印象に残ったのは、アンリ・マティスの《肘掛椅子の女性》(1933-34)を取り上げた一編。
私はこの作品、というかマティスの作品は色彩の妙味ばかりに目を取られて、作品から物語を紡ぐということがまったく出来ていなかった。そしてマティスの作品はどちらかというと「苦手」であった。
太田治子は母と娘の物語を紡いでいる。「白地に青い花柄のワンピース姿の女性は、肘掛椅子にふんぞり返っていた。思い切り吊り上がった眼は、暗く光っているように思われた。」と記している。
私はこれまでマティスの描く人物から表情を読み取ったことがなかった。表情は消されるようにぼかされている作品が多く、人物はあくまでも点景として、あるいは服装による色彩の配置の一環でしかないと感じていた。この作品でも女性の顔にはうすらと影のようなものが塗られて表情が読み取りにくい。これを私はマティスがあえて表情を消すように描いたものだと勝手に考えていた。この作品から上記のようにふんぞり返り、吊り上がった目、を見つける鑑賞はできなかった。まして太田治子のように母と娘が見つめる相互の意識に踏み込むことはできなかった。
これを気にマティスの作品の見方を変えてみることにした。少しは年齢と共にますますギスギスとしてきた想像力、感受性にいい刺激になるかもしれない。
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