Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

「ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」展 その2

2019年11月06日 13時41分31秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等



 横浜美術館のホームページには、この展覧会の概要と見どころとして以下のような文章が掲載されている。

★横浜美術館開館30周年を記念して、オランジュリー美術館所蔵品による「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」を開催いたします。
 パリのセーヌ川岸に建つ、オレンジ温室を改修した瀟洒な佇まいのオランジュリー美術館。画商ポール・ギヨームが基礎を築いた同館所蔵の印象派とエコール・ド・パリの作品群は、ルノワールの傑作《ピアノを弾く少女たち》をはじめ、マティス、ピカソ、モディリアーニらによる名作がそろったヨーロッパ屈指の絵画コレクションです。
 ギヨームは若き才能が集まる20世紀初頭のパリで画商として活動する一方、自らもコレクターとして作品を収集しました。私邸を美術館にする構想を果たせぬまま彼が若くして世を去った後、そのコレクションはドメニカ夫人により手を加えられていきました。そしてこれらの作品群はギヨームとドメニカの二番目の夫の名を冠した「ジャン・ヴァルテル&ポール・ギヨーム コレクション」としてフランス国家へ譲渡され、同館で展示されるようになりました。
 本展は同館が所蔵する146点の絵画群のうち13人の画家による約70点が、21年ぶりにまとまって来日する貴重な機会です。コレクションに秘められた物語とともに、世界中の人々に愛され続ける名品の数々をご堪能ください。

1.パリ・オランジュリー美術館コレクションによる21年ぶりの展覧会  同館の所蔵作品のほとんどは常設展示されており、館外にまとめて貸し出されることは 極めて稀です。過去には1998年に「パリ・オランジュリー美術館展」が東京ほか全国5会場で開催され、計100万人以上を動員しました。今回日本では21年ぶりに 珠玉のコレクションを一望できます。
2.ルノワールの代表作《ピアノを弾く少女たち》が来日
 《ピアノを弾く少女たち》は、ルノワールの作品の中でも最も有名なもののひとつ。オランジュリー美術館蔵のこの愛らしい作品は、晩年までルノワールのアトリエに保管され、作家没後の1928年にポール・ギヨームが収集したものです。
3.パリに恋した画家たち13 作家の名品が一堂に
 本展では印象派の巨匠ルノワールをはじめ、マティス、ピカソなど芸術の薫り高いパリに集い、新しい絵画表現の探究に魂を捧げた13人の画家たちを紹介します。本コレクションに含まれるのは、19世紀末から20世紀前半というフランス近代美術が花開いた重要な時期の名品です。
4.コレクションをめぐる画商ポール・ギヨームと妻ドメニカの物語に注目
 ポール・ギヨームは、既に評価の定まった画家たちだけでなく、当時無名だった若い作家たちも画商として積極的に支援しました。そして、自分の美意識にかなった作品を収集し、美術館をつくることを夢見ました。ポールは若くして亡くなりますが、妻のドメニカはその遺志を受け継ぎ、最終的に「ジャン・ヴァルテル&ポール・ギヨーム コレクション」としてフランス国家に譲りました。本展では、コレクターの美術館設立への夢や、画家たちとの友情の物語に注目します。


 昨日も会員証の提示で2回目の入場。ルノワールというのは理由がわからないが、好みではない。特に後期になるほど人物が類型化して、わたしには迫ってくるものがない。多分に私の鑑賞力がないのだろう、とあきらめている。しかし本や図版で見る限り静物画には惹かれるものがある。しかし今までは実際に見たことがなかった。今回は「桟敷席の花束」(1878-80)、「桃」(1881-82)、「花束」(1900)の3点の花をテーマにした静物画が展示されている。
 このうち「桃」と「花」が目についた。



 「桃」は1881年ごろというからルノワール40歳前後の作品。サロンへの復帰を果たし、イタリア紀行でラファエロの作品などに接し感銘を受けたという。この作品、セザンヌのように多視点でテーブルの上の皿に山盛りの桃を描いている。
 皿の横に一つだけ直にテーブルに乗った桃が印象的。この桃には手前左から光が当たり、この桃とテーブルクロスは少し上からの視点。皿とそこに盛られた桃は少し横に移動した視点から描かれているように見える。
 多視点といっても視点の移動はわずか。セザンヌほど大きくはない。皿の桃は保護剤なのか葉なのかわからないが緑に囲まれている。この緑と桃の赤・黄の色彩による遠近法もなかなかいい。そしてこの皿とさらに盛られた桃にも光は当たっているものの影は描かれていない。
 テーブルクロスに描かれた紫が影だとすると光は左の向こう側から手前にあたっていることになる。離れた桃との光の当たり具合はちぐはぐになってしまう。それでもおさまっているのがおもしろい。難をいえば皿の質感が弱々しい。西洋の白磁と思われるが、紙のようで硬質さがない。
 背景はルノワール特有の回転するタッチで炎が燃えるようである。背景が暖色と寒色で構成され桃の背後は暖色、というのも不思議だが、桃が背景に埋没してしまうこともない。これが不思議な魅力であると思った。



 「花束」は1900年の作で60歳も間近の作品。この年、レジオンドヌール勲章も得て評価が定まった時期である。この作品、実際に見ると陶器の硬質な艶と花の柔らかな質感の違いに驚く。この花瓶、織部焼の質感だと思っている。ここにもジャポニスムの影響がある。
 先ほどの「桃」とは違って背景は濃い青で花を浮きだたせている。その筆致がルノワール特有の回転するようなものではなく、細かな短い曲線で埋められている。それは花の形をなぞるように同心円的に花から離れて行く。花の質感と花瓶の固い質感をつなげるような筆の跡が効果的に思える。
 「桃」よりも器の質感の完成度が高いと感じた。

 静物画を見て、ルノワールの作品全体の流れるような筆の跡と、ゴッホのうねるような筆跡が意外と似ているのに気がついた。どういう影響関係かはわからないが、そんな視点を想像するのも楽しい。頓珍漢で間違っていても楽しい。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。