伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

カラー版 マヤと古代メキシコ文明のすべて

2023-07-27 22:34:09 | 人文・社会科学系
 中央アメリカ(メソアメリカ)ないしメキシコの古代文明について説明した入門書。
 冒頭に、マヤ文明の起源が2005年からのセイバル遺跡調査までは紀元前600年頃と考えられていたが、セイバル遺跡の調査により紀元前950年頃とされ、さらに2017年からのアグアダ・フェニックス遺跡の発見で紀元前1100年頃とされたという説明があり、現在も新たな発見でマヤ文明像、マヤ文明に対する認識が変わっていっているということに知的好奇心をそそられます。
 アステカ文明では、1400年代から1500年代という時期に人口20万~30万というテスココ湖内水上都市テノチティトランが繁栄していたことが有名ですが、その強大に見えるアステカ王国が湖上に都市を築いたのは他の条件のいい土地は先住民がいて追い払われしかたなく建設したもので、テスココ湖の水深が浅く干拓が容易で木杭で囲って盛り土した上に湖底の泥土をくみ上げてトウモロコシの茎などの有機物(生ゴミ)を混ぜて作物を作る「チナンパ農法」の生産性が高く、人糞やゴミもすべて肥料にしてしまうので狭い土地でも清潔で、湖内なので水にも困らず、湖が天然の防壁となったという事情で発展したことが説明されていて、なるほどと思います。
 アステカ以外も含め、メソアメリカの古代文明は天災を鎮めるための儀式・儀礼として生贄を必要とし、戦争での捕虜を生贄としていたが、アステカは敗者に対して占領はせずに朝貢と守護神の祭祀を求めるのみであったために周辺諸国が皆アステカに従ってしまい捕虜を得ることができなくなってしまい、あえて支配地域内にあるトラシュカラ王国と意図的に緩やかな敵対関係を維持して捕虜を獲得するための戦争を定期的に行っていた節があるという説明には驚きました。生贄を要する文化文明には共感できませんが、やはり人間、いろいろなことを考えるものですね。
 以前からマヤ文明、アステカ文明には関心を持っていたのですが、私が全然知らなかったことが多数書かれていて勉強になりました。多くの地域で多くの文明や国が生まれては衰退しということを繰り返したことを説明しているのでしかたないのでしょうけれども、そのそれぞれの関係や全体像が理解しにくいところが難点ではありました。


青山和夫監修 宝島社新書 2023年6月23日発行

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