長距離ランナーの男子高校生加納碧李(あおい:読めません、ふつう)と、血のつながらない6歳の妹杏樹、杏樹を虐待しつつ虐待してしまう自分にとまどい悩む母千賀子、陸上部の監督に恋心を寄せるマネージャー前藤杏子、故障して陸上をあきらめる友人久遠らの人間関係と揺れる思いを描いた青春ほろ苦小説。
主人公や舞台が陸上部であることは、碧李の走る喜びと試合への恐怖・葛藤をサブテーマとしている点で意味がありますが、小説の中ではかなり副次的な位置づけ。別のスポーツと換えても書けそうな感じがします。作者の代表作/出世作「バッテリー」を読み通した読者ならみんな予想するでしょうから言ってしまいますが、やはり、陸上の試合のシーンは最初の失敗に終わった大会以外は一度も出てきません。普通、スポーツをテーマにした小説なら負けたあとに挫折→再起のきっかけ→猛練習→試合での一定の成果と流れて試合場面で読者のカタルシスが図られるわけですが、そういうシーンはついぞありません。「バッテリー」のようにライバルとの対決を予告しながらそれを引っ張り続け(信じられないくらい引っ張ります)、にもかかわらずあのラストシーン・・・ということではありませんし、「バッテリー」でそれをされたから読む前から大会で勝つシーンはないと予測していましたが、予測していても拍子抜けしてしまいます。
タイトルに惑わされずに、これはスポーツ小説ではなく、児童虐待・家族関係を中心とする人間関係ドラマなんだと割り切って読むべきでしょう。スポーツ小説ではないと言い聞かせながらならば、碧李と久遠のキャラクターの対比、杏子の大人びつつ秘めた思いなどの造形に味わいがあり、そこそこ楽しめます。
あさのあつこ 幻冬舎 2007年6月25日発行
主人公や舞台が陸上部であることは、碧李の走る喜びと試合への恐怖・葛藤をサブテーマとしている点で意味がありますが、小説の中ではかなり副次的な位置づけ。別のスポーツと換えても書けそうな感じがします。作者の代表作/出世作「バッテリー」を読み通した読者ならみんな予想するでしょうから言ってしまいますが、やはり、陸上の試合のシーンは最初の失敗に終わった大会以外は一度も出てきません。普通、スポーツをテーマにした小説なら負けたあとに挫折→再起のきっかけ→猛練習→試合での一定の成果と流れて試合場面で読者のカタルシスが図られるわけですが、そういうシーンはついぞありません。「バッテリー」のようにライバルとの対決を予告しながらそれを引っ張り続け(信じられないくらい引っ張ります)、にもかかわらずあのラストシーン・・・ということではありませんし、「バッテリー」でそれをされたから読む前から大会で勝つシーンはないと予測していましたが、予測していても拍子抜けしてしまいます。
タイトルに惑わされずに、これはスポーツ小説ではなく、児童虐待・家族関係を中心とする人間関係ドラマなんだと割り切って読むべきでしょう。スポーツ小説ではないと言い聞かせながらならば、碧李と久遠のキャラクターの対比、杏子の大人びつつ秘めた思いなどの造形に味わいがあり、そこそこ楽しめます。
あさのあつこ 幻冬舎 2007年6月25日発行
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