伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

取締役の法律知識 [第4版]

2021-09-28 21:39:25 | Weblog
 取締役に関する法制度、取締役に就任した人が行うべき業務とその際の注意点、取締役の法的義務と責任についての考え方などを説明した本。
 会社法のさまざまな規定と判例などをコンパクトに説明しており、取締役会の運営や取締役が職務に臨む際の心得などが、やや厳しめの建前に沿ってですが、わかりやすく説明されていて、便利な本だと思います。制度関係は、どうしてもそうなりがちではありますが、同じような記述が繰り返されて退屈というか、それぞれの会社のしくみ(制度設計)でどう違うのかわかりにくいというよりも読みにくく感じます。
 日経系の出版社だからなのか、著者のスタンスなのか、判例を紹介するときの事件名で会社名を無理無理匿名にしているのが目障りです(経団連が発行している労働事件等の判例雑誌「労経速(労働経済判例速報)」もそういうスタンスで事件名がなんでも「X社事件」とかになって事件名の意味がないのと似ています)。この本では全事件で企業名を匿名にして、労経速よりも徹底しています。「光学機器会社粉飾事件」東京地裁2017年4月27日判決(11ページ、13ページ、15ページ等)とか、オリンパス粉飾事件と書くのがふつうの感覚ですし、有名な事件では企業名があれば事件をイメージできることもあって読者には親切です。コンプライアンスを強調しているのですし、企業の社会的責任や、大企業が公的な存在でもあることを考えれば、読者の便宜に反し不自然な呼び方で違和感を与えてまで企業名を隠すのはいかがなものかと思います。


中島茂 日経文庫 2021年6月23日発行(初版は1995年7月)
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