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伊東良徳の超乱読読書日記

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タラ・ダンカン12 魂の解放 上下

2015-09-12 18:12:59 | 物語・ファンタジー・SF
 魔術が支配する「別世界」の人間の国「オモワ帝国」の世継ぎの18歳(12巻時点)の少女タラ・ダンカンが、様々な敵対勢力の陰謀や事件に巻き込まれながら冒険するファンタジー。
 12巻では、悪魔の惑星ブーリミ・レミを攻撃していた、悪魔の魂を吸い上げてエネルギーとしている謎の彗星が行方をくらましたため、その目的は彗星がまだ破壊されていない悪魔の宝を探しに行ったとみたリスベス女帝が、タラ・ダンカンと仲間たちに先回りして悪魔の宝を回収することを命じ、タラとその仲間たち、同行する悪魔の王アルカンジュらが宇宙船で悪魔の宝の隠し場所に向かい、その先で冒険を重ね…という展開をしています。
 著者は、公式サイトのFAQ(現在はこちら)で「マジスターの正体は最後の巻で明かされるわ。そこでダンヴィウを殺した理由もわかるはずよ」と予告していました。しかし、12巻でも、マジスターの正体は結局は明確にされず、「ダンヴィヴを殺した理由」など、どこにも触れられていません。ストーリー展開から、すでにマジスターの正体など、読んでいてあまり興味も持てませんでしたし、ダンヴィヴの死に関してはすでに7巻で明らかにされていましたから何の意味もないのですが、読者に予告したことを平気で無視する著者の姿勢には、とりわけ子ども向けのファンタジーであることを考えれば、失望を禁じ得ません。訳者があとがきでその点について著者に聞いたところを示して言い訳をし、付録の「別世界通信21号」(12巻下付録)の編集長インタビューでフランスの出版事情の「おおらかさ」を語らせて言い繕おうとしていますが、第1巻時点から10巻で完結と言っていたのを途中で12巻に延長した挙げ句、第12巻で完結したのは「第1期(第1サイクル)」だと言い出したことと合わせ、著者の姿勢には不誠実さを感じます。
 ラストについても、収拾が付かなくなって大きな力を持ち出して全部それで解決できることにしてしまうご都合主義的なもので、ファンタジーなんだから、もともとが論理を超えた設定・展開なのだからということで大目に見てよいレベルなのか、私には疑問に思えます。公式サイトのFAQで「10巻分のシナリオはすでに私の頭の中にある」と言ってきたにしては、緻密さ、論理性を欠き、積み上げてきたストーリーは何だったのかと思えます。
 タラと仲間たちを見守ってきた、12巻を読み続けた愛読者には、それぞれのキャラへの愛着とその成長を読むという点では、そこそこに満足できるかとは思いますが。


原題:TARA DUNCAN L’ULTIME COMBAT
ソフィー・オドゥワン=マミコニアン 訳:山本知子、加藤かおり
株式会社KADOKAWA(メディアファクトリー)
2015年8月7日発行(原書は2014年)

11巻は2014年8月17日の記事で紹介しています。
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