民家を改築した下宿屋「真綿荘」に住む自信過剰でデリカシーに欠けるKY男大和葉介、レイプされた心の傷が癒えず女しか愛せなくなった山岡椿、体格も容姿も男っぽい地味で純情な鯨井小春、引きこもりの画家真島晴雨、華やかな着こなしで作家の謎めいた管理人綿貫千鶴らが友人ないし恋人を巻き込んで繰り広げる青春小説。
KY男大和の自信過剰ぶりから始まり、順次話者を入れ替えて展開していきますが、連載の過程で大和の性格が円くなることもあって、終わってみれば最初の章では奇人っぽく見えた大和と鯨井が一番普通に見えてしまいます。
前半ではどこかラブコメっぽい、私の年代で言えば、柴門ふみふうの展開で、そういう路線に転向したかとも思いましたが、後半では綿貫さんのグロテスクな秘密と心境が語られて重くなっていきます。
全体を通してみると、ともに高校生のときにレイプされたことで人生が変わることになった椿と綿貫さんの2人のある意味で対照的な、しかしともに痛ましく切ない生き様がテーマとなっているように感じました。椿の傷ついた心と、自分自身でどう向き合っていくのかについての整理された部分とまだ整理できない動揺が哀しく、椿に寄り添いときに切り結ぶ高校生の八重子の揺れる心もまた切ない。ある意味でわかりやすい椿と八重子に対し、レイプした男を囲い込んで内縁の夫と周囲に紹介しつつアンビバレントな想いを持ち続ける綿貫さんと晴雨の関係は、あり得なさそうでしかし現実には少なくない女がそれに近い現実に耐えているかもしれず、複雑な深さがあるようでもあり机上の空論のようでもあり・・・やはり私には理解しにくい。

島本理生 文藝春秋 2010年2月10日発行
「別冊文藝春秋」2008年11月号、2009年1月号、3月号、5月号、7月号、9月号、11月号連載
KY男大和の自信過剰ぶりから始まり、順次話者を入れ替えて展開していきますが、連載の過程で大和の性格が円くなることもあって、終わってみれば最初の章では奇人っぽく見えた大和と鯨井が一番普通に見えてしまいます。
前半ではどこかラブコメっぽい、私の年代で言えば、柴門ふみふうの展開で、そういう路線に転向したかとも思いましたが、後半では綿貫さんのグロテスクな秘密と心境が語られて重くなっていきます。
全体を通してみると、ともに高校生のときにレイプされたことで人生が変わることになった椿と綿貫さんの2人のある意味で対照的な、しかしともに痛ましく切ない生き様がテーマとなっているように感じました。椿の傷ついた心と、自分自身でどう向き合っていくのかについての整理された部分とまだ整理できない動揺が哀しく、椿に寄り添いときに切り結ぶ高校生の八重子の揺れる心もまた切ない。ある意味でわかりやすい椿と八重子に対し、レイプした男を囲い込んで内縁の夫と周囲に紹介しつつアンビバレントな想いを持ち続ける綿貫さんと晴雨の関係は、あり得なさそうでしかし現実には少なくない女がそれに近い現実に耐えているかもしれず、複雑な深さがあるようでもあり机上の空論のようでもあり・・・やはり私には理解しにくい。

島本理生 文藝春秋 2010年2月10日発行
「別冊文藝春秋」2008年11月号、2009年1月号、3月号、5月号、7月号、9月号、11月号連載