日産車には「ティ」で始まる車名がなぜか多い。
モダンリビング「ティアナ」、サニーの後継車「ティーダ」。
そして、アナタは「ティーノ」というクルマを憶えているだろうか。
それは、幅が広く前席2人+1、後席3人の5+1コンセプトの「WIDE」。
コンパクトな全長で最小回転半径4.9mを実現した「SHORT」。
高いアイポイントの視界の良さとゆとりある室内高を実現した「HEIGHT」。
この三位一体のコンセプトを実現して’98年に登場した、きわめて理想主義的なクルマであった。
なによりも、このプレーンで欧州車チックなスタイリング。
ウィンドウグラフィックス、テールランプの処理などが、とても好ましい。
エアロパーツをまとった「エアロスポーツ」なる仕様も存在した。
だがコレは、このクルマには、ちょっと無理やりっぽい感もある。
インパネも有機的なデザインでなかなかヨイ。
オーディオがカセットなのは、やはり時代の流れを感じますが。
前席3人掛けを実現したことにより、シートアレンジは多彩で、小物入れも多彩に揃っている。
ファミリーユースにはうってつけであろう。
2000cc車のエンジンは低排出ガス(LEV)で、ハイパーCVTを搭載。
1800cc車はリーンバーンエンジンで省燃費を実現。
当時としては、メカニズムも新しかった。
当時の日産お得意の「トリプルセイフティー」コンセプトを採用。
さらに、乗る人に優しい「インナーグリーン」。
そして、普通のモデルの価格は169.7万円~207.6万円。
エアロパーツで武装した「エアロスポーツ」は最高価格の218.6万円である。
うーん、価格もそんなに高くない。
ボディーカラーとインテリアカラーの組み合わせも割とセンスが良いではないか。
今思うと、このクルマが売れなかったのが不思議である。
やはり、これにミニバンの居住性を期待すると、裏切られるのかもしれない。
「前席に3人乗れる」ということを、前面に押し出しすぎたのが失敗だったのかも。
2000年には、前席を2名掛けにした「5人乗り」仕様を追加発売。
2002年には、結局「6人乗り」仕様を廃止して、「5人乗り」1本に絞るというように、その販売戦略は錯綜していた。
さらに疑問なのは、安全性を前面に押しだして広告展開していた日産なのに、このクルマの中央席のシートベルトは、前後席とも2点式だったのだ。
後年発売された、似たようなシートアレンジの「ホンダ・エディックス」は全席に3点式を装備している。
しかし、このクルマ、私は結構好きである。
そのスタイルは、エディックスあたりよりもずーっと趣味がいいと思うのだが、日本では、なぜか売れなかった。
日本での生産はひっそりと2003年で終了したが、欧州では昨年まで作られていたという。
欧州では受け入れられていたのに・・・もう、合掌するしかない。