形之医学・しんそう療方 小石川院長 エッセー

昭和の頃、自然と野遊び、健康と医療のことなど。

秋田内陸縦貫鉄道

2012-10-26 00:45:04 | Weblog

7年前、仙台に向かう東北新幹線にあった旅のパンフレット、
トランベールにディーゼル機関車で行く、みちのくの旅の特集をしていた。
山深くを1、2両でのんびり走るこの鉄道の旅に惹かれ、
そのパンフレットをとっておいた。

7月の夏休み、この鉄道で一人旅に行った。
盛岡まで新幹線で行き、そこからディーゼル2両の花輪線に乗り替えた。 
ディーゼル機関車は電気を動力としないので、電線もパンタグラフもない。 
また単線なので線路の幅は狭く、左右に迫る木々の枝が当たらないかと
思えるほどだった。 

田園地帯からやがて山の中へ入り、花輪線は奥羽山脈を越えていく。 
いつかどこかで見たような、懐かしい風景が次々にあらわれた。
流れていく風景を、私は飽くことなく眺めていた。
退屈かもしれないと、旅行カバンに入れておいた数冊の本は、
一度も開くことはなかった。 一人旅もいいものだ。 
花輪線の3時間の旅はあっという間に終った。
終点の大館から奥羽線の鷹巣まで行きそこに泊った。



翌朝、鷹巣駅が始発の秋田内陸縦貫鉄道に乗り、角館(かくのだて)に向かった。
この鉄道は1両だけのディーゼル機関車で、花輪線よりさらに山奥をいく。 
森の中を走り、多くの沢を越え、鉄橋を渡っていく。
素晴らしい風景がつづいた。

だが秋田内陸縦貫鉄道は利用者が減り、廃線の危機にさらされているそうだ。   
地元の人たちはこれを懸命に守ろうしている。 このたった1両の電車の中で、
小さな手押し車での車内販売があり、沿線の名産品を売っている。 
たいへんな山奥に鉄路を切り開いた人たちの苦労がしのばれる。

その日は翌日に秋田駒ケ岳に登るため、田沢湖畔のローズガーデンホテルに泊った。
ホテルに着くと平日のためか、中規模のホテルなのに、客はまだ私一人だった。
チェックインするとき支配人がいて、一番眺めのいい部屋を用意しておいたという。
広々としたレストランでの食事も私一人だけで、素晴らしい席を用意してくれた。
湖の向こうの山々は、青味がかった薄墨色の山のシルエットが、影絵のように重なりあった。
やがて暮色が深まり、山のシルエットは空と溶けあっていった。


からだの形は、生命の器
形之医学・しんそう療方 東京小石川
http://www.shinso-tokyo-koisikawa.com/





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