小学校の頃、日曜日にときどき友だちと、多摩川園遊園地に遊びに行った。
(この遊園地はずっと後に、廃園になる。) 家から電車に乗って20分
ぐらいと近く、子ども向けの遊園地なので入園料も、乗り物も安かった。
今の大型の遊園地のようなすごい乗り物はなく、いつもほとんど決まった
乗り物しかなかった。
夏になると、遊園地の一番奥にある建物で、お化け屋敷をやる。
これはやっていれば、ほとんど行くたびに入った。 何度も入っているから、
どこでどんなお化けが出るかわかっているのだが、それでもちょっと恐い。
あるとき友だち3、4人で遊びにいって、このお化け屋敷に入った。
場内は足元が見えないほど暗く、通路は迷路のように曲がりくねっている。
入るとすぐに、後ろを向いて木魚を叩いているお坊さんが、
クルッと振り向くと一つ目小僧という、よくあるのが置いてある。
こっちは知っているから、「あれ、もうじき振り向くんだよね」などと
おしゃべりしながら歩いていた。
上から、ヒモで下げられた人形の首が落ちてくるところも無事通過して、
半分ほど行ったとき、友だちの一人が、
「オレ、オシッコしたい」 と言い出した。
「出るまで我慢できないのかよ~?」
「もれちゃう・・・」
それで、勝手知ったるお化け屋敷で、暗いのをいいことに、
近くの、ワラのムシロで壁を作っている隅っこでオシッコすることになった。
「ここなら、お化け、出ないよ」
というわけだ。
友だちが壁に向かってオシッコをするかしないかのうちに、
すぐ頭のテッペンから、大音声の怒鳴り声がした。
「だれだー!! こんなとこでショーベンするヤツは!!」
これには全員ビックリ仰天。
友だちのオシッコもピタッと止まった。
と、同時に屋敷内のモーターや滑車の音が消えて静かになり、
お化けが全部止まった。 そして薄暗い灯りがついた。
声のする後ろを振り向くと、なんとさっき通ったばかりの通路をまたいで、
高いやぐらが組まれている。 そこには、あっちこっちからロープがきていて、
さっき颯爽と空中を飛んでいた、白い着物のお化けがだらしなく
ロープにぶら下がっていた。
上でおじさんが手すりにつかまって、仁王立ちになっている。
それまで暗くて、やぐらがあるなんて知らなかった。
そのそばで、オシッコしちゃったのだ。
私たちは薄灯りを頼りに、脱兎のごとく出口に向かって逃げ出した。
オシッコ中断の友だちも、ズボンのチャックを閉め閉めあとから逃げてくる。
お化け屋敷から飛び出すと、夏空の広がる外は明るく、目がチカチカする
ほどまぶしかった。
からだの形は、
生命の器
形之医学・しんそう療方 東京小石川
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