形之医学・しんそう療方 小石川院長 エッセー

昭和の頃、自然と野遊び、健康と医療のことなど。

電気クラゲ

2012-08-29 17:16:43 | 自然と野遊び

小学生の頃、土木技師だったオヤジは、湘南の道路公団の事務所で
仕事をしていた。 事務所は海岸通り沿いにあり、いくどか友だち数人と
電車に乗って遊びに行った。 

海で遊ぶのも楽しいが、私たちの楽しみは帰りにもあった。 
夕方、仕事の終わったオヤジは、一緒に帰るとき、江ノ島の
ほうをまわって、サザエの壺焼きをそれぞれにご馳走してくれた。 
当時、魚屋でもサザエはあまり売ってなく、家で食べたことのない
私たちには、たいへんなご馳走だった。
サザエは身を細かく刻んであるものと、丸ごと入っているのがあって、
どちらでも選べたが、私たちはもちろん刻んであるほうで、
爪楊枝の先でちょっとづつ惜しんで食べた。


ある夏の日、友だちと海岸に出て泳いだり、砂に体を埋めたりして
遊んでいた。 そのとき砂浜にきれいな、手のひらほどの青い三角形の
風船が落ちていた。 私はそれをつかんで海に向かって投げた。

とたんに背中に、ビリビリするような電撃的な痛みを感じた。 
この風船には、砂にまぎれてとても長い足があったのだ。
振りかぶったとき、それがべったりと背中と太ももに張り付いたのだった。

友だちに見てもらうと、背中から太ももの裏側にかけて、赤いミミズ腫れが
できていたらしい。 あまりにも痛いので、事務所の人に見てもらった。 
青い風船みたいなものの話をしたら、それは電気クラゲだと教えられた。
電気と聞いただけで、 なおさらビリビリと痛んだ。

アンモニアをつけるといいといわれたが、事務所にはないという。 
それじゃ、誰かにオシッコをかけてもらえと言われ、友達にかけて
もらうことにした。

事務所の裏に出て、裸の背中を向けてしゃがむと、友だちは生温かい
オシッコをかけてくれた。 とても気持ち悪く、おまけにちっとも効かず
痛みは続いた。 すごく損した気分だった。


電気クラゲは正式名、カツオノエボシといい足の長さは2、3メートルも
あるそうだ。 このクラゲは単体ではなく、ヒドロ虫という生物が集まって
一つに形成されている群体だという。 それぞれが役割が決まっていて、
刺す部分を担うヒドロ虫群もいるというから驚く。 2度目に刺されると、
ショックを起こして死ぬこともあるという、危険な海の生物である。 
                       

からだの形は、生命の器
形之医学・しんそう療方 東京小石川
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薬草・ゲンノショウコ

2011-08-12 13:24:00 | 自然と野遊び

はじめてゲンノショウコを見たのは、夏の城址公園だった。 
実際にはどこかで何度も見ていたのかもしれない。 
気をつけて見れば、それほど珍しい野草ではない。

これがゲンノショウコとわかったのは、咲いていた花を調べてだった。 
民間で古くから薬草としてよく知られている。 
名前は「現に効く証拠」から、「ゲンノショウコ」と大昔につけられたという。
おかしいほどそのままの名前だが、それほど効能ありということか。

子どもの頃、母親に飲まされたような気がするが、どんな味だったのか、
おぼえていない。 たぶんセンブリのように苦くはなかったように思う。 
健胃整腸薬として、胃の調子が悪いときや下痢のときになどに使われるようだ。

葉の切れ込み方が、キンポウゲ科の植物によく似ている。 
キンポウゲ科の植物には、毒草として有名なあのトリカブトがある。 
田舎の古くからの家々では、花で確かめた後の土用の頃に、
自家用の薬草として採取したという。 フウロソウ(風露草)科で、
花はトリカブトとはまったく違い、花を見れば間違えることはない。 
ピンクの花もある。



ゲンノショウコが種をつけ、それが弾け飛んだあとは写真のような形になる。 
お神輿(みこし)によく似ている。 ゲンノショウコの別名を「神輿草」という。
                      

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コジュケイ(小綬鶏)

2011-06-24 18:12:15 | 自然と野遊び

城址公園の雑木林のどこかでコジュケイが鳴き始めている。
たいへん用心深い鳥で、めったに姿を見ないが、鳴き声だけは
はっきり聞こえてくる。 
この鳥、かん高い声で「ピー!ピー! ピー!」から始まり 
最後に「 ちょっと来い、ちょっと来い 」 と鳴く。
いったんそう聞こえると、それ以外には聞こえないから不思議だ。

愛犬レオはもともと音に敏感で、この「 ちょっと来い 」が聞こえると
鳴き声のするほうに向かって吠えまくる。 早朝鳴くことが多いから、
こっちはたまらない。 たちまち眠りを破られる。 
「 ちょっと来い 」に、「 なにー! 」 のつもりか。
コジュケイより、レオのほうがよっぽどうるさい。
「 うるさい! 」 私の怒鳴り声で、レオは吠えるのをやめる。





鳴くのはオスで、繁殖期の今頃がその時期。
キジの仲間で、温暖な地方の雑木林の多いところや里山に生息する留鳥。


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ザリガニの味

2011-06-22 15:46:52 | 自然と野遊び

小学校低学年の頃、東京駅までおふくろに連れていかれ、
初めて一人で汽車に乗って、おふくろの郷里、桑名まで行った。 
といっても一人で行ったのは名古屋までで、名古屋駅には
おふくろの姉の旦那、イサオおじさんが迎えにきてくれていた。

イサオおじさんは頭がきれいに禿げていたが背が高く、
とてもほがらかな人だった。 駅で私を見たとたん、
「おお!一人でよく来たな~!」  
と大きな声をかけてくれた。

名古屋で桑名行きの電車に乗ろうとしたら、乗客が降りないうちから、
みんながド~ッと乗り込んで行った。 降りるほうは必死で、泳ぐように
して降りていた。 イサオおじさんも、大きな体にまかせて先に乗り込み、
小さい私はおじさんにしがみついて一緒に乗った。 当時の日本は今と違い、
マナーがメチャクチャ悪かったが、人々のバイタリティーは凄かった。

翌日から大好きな網でやる魚獲り三昧の生活が始まった。 
その頃は都会でも田舎でも、子どもたちは集団でよく遊んでいた。 
リーダー格の年長の少年が、みんなをまとめて面倒を見、小さな子も
リーダーにくっついて遊んでいた。 

連れられて行って驚いたのは、田んぼのそばの小川に、ザリガニが
たくさんいたことだ。 濁った水の中に垂れ下がった、アシの葉っぱに
つかまって、遠い向こうまでズラーっと並んでいた。 
もっと驚いたのは、子どもたちがザリガニを見向きもしないことだ。 
東京じゃ考えられなく、みんなが獲ろうとしているのは魚だけだった。

その魚獲りも、私から見たらシロウトの獲りかたじゃなかった。 
東京の子どもが、竹の棒の先についた丸い網で、頼りなげに獲るのと
違うのだ。 連中は手慣れたふうに小川に入り、柄のない大きなザル
みたいな網をアシの茂みの中に受け、サッと片足で茂みを反対から、
ガシャガシャとかき混ぜ、網の中に逃げてきた魚をすくい取る。 
なんでもU字の形に穴があって、片方から脅すと反対側から飛び出してくる
そうだ。 魚は大小のナマズやフナ、鯉、雷魚、たまにウナギが入った。

私はザリガニが気になってしかたなく、リーダーのマサシちゃんに
獲ってよと頼んだ。 みんなはなんでこんなものを?!みたいな、
びっくり顔で私を見たが、それでも獲ってくれた。

簡単である。 ただ網を持って、アシの葉っぱにつかまっているザリガニを
道を歩きながら、ザーっとすくい取るだけだ。 2、3回すくって持っていった
バケツにいっぱいになった。 私はバケツを持って帰り、叔母に茹でて食べ
させてくれるように頼んだ。

夕食にそれが出てきた。 真っ赤に塩茹でにされたザリガニは、竹の大ザルに
山盛りでうまそうだった。  ところが食べてみると意外に身がなく、
けっこうな大きさのものでも、尻尾のところにほんの小指の先ほどしかないのだ。 
それにかなり泥臭かったが、全部食べた。 夜中になってお腹を下し 
何度も便所に駆け込んだ。


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錦鯉でガックリ

2011-06-10 15:17:31 | 自然と野遊び

千葉の片田舎、佐倉に来た当初、友人たちがよく来て、
小さな川で一緒に魚獲りをした。 子どもの頃にやった
魚獲りを、またやってみたいというのだ。

私の住むところは、広い印旛沼に直接、間接につながる、
中小の川が網の目のようになっている。 魚の多そうな
小川で、挟みうちにして魚を獲ろうと、いつも手製の大きな
網を2つ持っていく。

向こうで友だちが網を構え、こちらからも挟みうちで、
互いに近寄っていく。 すぐ近くまで来ると、網には
逃げ場を失った大きな魚が網にぶつかり、ゴツゴツと
当たる感触がたまらない。

あるとき、よ~し、せーの と一気に網を上げると、
なんと友だちの網に、他の魚に混じって、紅白の錦鯉が
入っていた。 30センチぐらいものだが、なんだかガッカリした。 
自然の魚を獲ってるのに、なんで錦鯉?  という気分なのだ。 
錦鯉はどこかの庭の池でしか見たことがない。 
赤と白の模様は、どこか人工の匂いがして自然の場所に合わない。 
川や沼にいるのは、あの黒っぽい野性的な鯉だ。 
きっとあの錦鯉は、どこかから逃げ出してきたのだろう。 


子どもの頃、台風などが来た後には、ちょっとした楽しみがあった。
今のようにマンションなどなく、家々では、庭に小さな池をつくっている
家がずいぶんあった。 池には縁日の金魚すくいで獲った、金魚などが
入れてあった。 私の家でも、コンクリートでできた、オヤジの手作りの
ひょうたん型の小さな池があった。 

当時は今のような、大きな下水道がなく、道の脇のドブが下水みたいな
ものだった。 だから大雨が降ると、すぐに水があふれ、池とドブが
つながり、金魚が逃げ出して、ずいぶん離れたドブに泳いでいたりした。 
いつもは家庭から流される、黒っぽいドブ水だけで生き物がいないから、
赤い金魚が泳いでいると、なんとなく不思議な感じがした。 
金魚はすくって、家の池に入れ、儲かった気分になった。


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ギシギシを食べてみた

2011-05-27 13:59:50 | 自然と野遊び

以前から食べられる野草の本にのっている、ギシギシを食べてみようと
思っていた。 だが原っぱに生えている身近な野草は、どうも山菜という
感じもなく、今までに食べたものはごく少ない。

ギシギシはたいていの人は見たことがあると思う。 成長すれば草丈
1メートルはあるタデ科の大型の植物。 多年草で、地上部を刈っても
刈っても出てくる丈夫な植物だ。 和名を羊蹄(ようてい)といい、
根っこは、羊蹄根(ようていこん)で生薬に入っている。 古くから
民間で皮膚病に使われてきた。 掘り出すと、頑丈なゴボウのように
太い根が出てきて、それを割ると中は黄色い。



家の裏の草むらに数本出ていたギシギシの若芽を採って食べてみた。 
丸まって薄い膜に包まれた芽は、ジュンサイのようなぬめりがある。 
ギシギシはシュウ酸を多くふくむので、生で食べるのは避けたほうがよく、
茹でてオヒタシにして食べることにした。 



茹でると鮮やかな緑色が色あせてしまうが、ぬめりはそのまま残る。 
味はほろ苦い。 うまいか? と聞かれれば、特別うまくはない。 
それじゃマズイのか? と聞かれても、それほどマズクもない。 
風味が少ないかな。 5点満点で3点!
                     

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毒草・狐のボタン

2011-05-20 13:59:56 | 自然と野遊び
今まで、狐のボタンの「ボタン」は、服のボタンのことだとばかり
思っていた。 とくに理由はなく、お菓子の金平糖(こんぺいとう)
のような実が、狐のボタンというイメージにぴったりだなと思っていた。 
ボタンにしては丸い実だが、昔の人がおもしろがって、狐のボタンと
つけたのだろうと。 

ところが調べてみたら、葉が牡丹の葉に似ているからつけられたらしい。 
なので「狐の牡丹」が正しいようだが、どうも腑に落ちない。 
牡丹の葉に似ているだけで、牡丹とつけるかな? 

葉にはキンポウゲ科特有の切れ込みが入っていて、見慣れると、
これは毒草の多いキンポウゲ科じゃないかなと見当がつく。 
だが毒草は同時に薬草になっているものも多い。 
毒と薬は使い方によって表裏一体だ。  



キツネノボタンは湿地や田の畦などによく見かける野草で、水気の
多いところを好む多年草。 毒草で、草汁が皮膚につくとかぶれる。 
またセリが出るところと同じようなところに生えるので、間違って採り、
誤食して口内や胃に炎症を起こす例もあるようだ。 



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ガスを噴射する虫

2011-05-02 19:15:22 | 自然と野遊び

昭和30年代、東京にもいたるところに原っぱがあった。 ただの雑草の
生えた空き地で、そこには大きな石や板切れ、コンクリートの塊など、
いろいろなものが放り込まれていた。そこは絶好の子どもたちの遊び場だ。
大人の考え出した遊具を、整然と並べてある公園より、子供たちには
ずっとおもしろい場所だった。

落ちているものをかき集め、自分たちで工夫して、いろいろな遊びを作り出した。
ときには、集めた板切れや丸太ん棒を、石ころを金づち代わりにして、拾った
錆び釘を伸ばして打ちつけ、犬小屋のような小さな家を建てたこともあった。

そんな原っぱに仲間たちと行くと、まずやることは落ちている板や石を、サッと
どかすことだった。 その下にはいろいろな生きものが潜んでいて、突然差し込ん
できた陽の光に、右往左往して逃げ出す。

その中に、ガスをお尻から噴射する虫がいる。 子供たちが真っ先に探す虫だ。
逃げ出すこの虫の背中を小枝で押さえると、まるでスカンクのように、お尻から
タバコの煙のような、薄紫のガスをキュッと音をたてて噴射するのだ。
発射できるのはせいぜい3、4回ぐらいで、ガス欠になると、それまで余裕の
よっちゃんみたいな虫は、おかしいほどあわてて逃げ出す。

ただ誰もこのガスの匂いを嗅いだ子供はいなかった。 きっと臭いに違いなく、
いかにも体に悪そうで、子どもたちは鼻をつまみ、息を止めて虫の背中を
押して遊んでいた。 

調べてみたら、やはりガスは毒性と悪臭のあるもので、なんと100度もの
高温があるそうだ。カエルなどがエサにしようと舌を伸ばすと火傷するらしい。 
東京ではこの虫も見かけなくなった。ミイデラゴミムシという、ゴミムシの仲間。


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ナズ菜の一夜漬け

2011-04-27 14:53:36 | 自然と野遊び

久しぶりに、散歩の途中で採ったナズ菜を、一夜漬けにして
食べてみた。 採ったナズ菜は花が終わり、すでに青い種子を
つけトウが立ち始めていた。 でも上のほう三分の一ぐらいと
若葉を摘んで、漬けてみたが味は変わらない。


ナズ菜はペンペン草という名前でも呼ばれている。
種子が三味線のバチに似ているところからきたようだ。
子どもの頃、枯れたナズナの、種のついた細い茎の部分を
少し引いて垂らし、茎をクルクル回すと、シャラシャラと
乾いた音がして、子どもたちは面白がって遊んでいた。


ナズ菜は正月の七草がゆの材料の一つとして知られている。
どこにも生えて、今はまったく雑草扱いにされているが、 
江戸時代には冬の野菜として、ナズ菜売りというのがいたそうだ。 
当時の川柳にも、
「 ナズ菜売り、もとはタダだと値切られる 」 
という句が残されている。

山歩きをしていた頃、山麓に向かっていると、群生している
ナズ菜を見つけることがあった。 採って刻み、薄く塩で揉ん
でビニール袋に入れ、ザックに放り込んでおく。 
夕飯の頃には、ちょうどいい一夜漬の一品が出来上がる。 
大根などと同じアブラナ科なので、クセがなく意外にうまい。
久しぶりに食べたナズ菜の味も、かわらない懐かしい味がした。

                     (2009、4・3 記)


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ノルディックスキー

2011-02-15 20:02:14 | 自然と野遊び

20代後半の2年間、仕事で山形に住んでいた。 ちょうど行ったのが暮れの
粉雪の舞う寒い時期で、休みにはいとこに誘われて、蔵王の坊平によくスキー
に行った。 日曜日に行くのだが、むこうは冬はすることがないので、休みの
前日はよく飲み会をする。 それにみんな酒がとても強い。 なので、たいてい
二日酔いの状態でスキーに行くはめになる。 チェーンを巻いた、
いとこの車の後部座席でへばって寝ていくと、チェーンの端がガンガンと
凄い音で車に当たり、それが二日酔いの頭に響いてつらい。

坊平にはいとこの友人夫婦がやっているペンションがある。 奥さんは
元スキー回転の学生チャンピョンで、初心者の私のスキー用具一式をみつく
ろってくれた人だ。 顔の広い人らしく、ペンションにはなぜか北欧の人が、
入れ替わり立ち代わり泊まりに来ていた。

向こうの人のスキーは面白い。 ノルディックというそうだが、ゲレンデで滑るより、
人の入らないような森の中を、かなり細長いスキーで歩き回る。 
普通の日本のスキー靴は、板にがっちり固定されているが、歩くスキーは踵が
板から持ち上がるから、見ていると何かヘンな感じだ。
「キミたち、スキーは滑るものじゃないの~?」 と言いたくなるが、
きっと向こうの人たちは、森の中をスキーで移動する生活の延長としての、
スキーなのだろう。 スキーでいえば日本人は新参者なのだ。

朝、朝食を終えて滑りにゲレンデに行こうと外に出ると、彼らはペンションから、
ゲレンデには向かわず、すぐ近くの雪深い森の中に消えていく。 
見慣れない光景で不思議な感じがした。 スキーの跡などついていないところでも、
平気で入り込んでいく。 それも滑るというより、歩く。

昼飯を食べにもどろうと歩いていると、突然、森の中から熊のような大男が
出てきて、びっくりした。

                      
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寒の花・蝋梅(ロウバイ)

2011-01-21 13:49:49 | 自然と野遊び

今、蝋梅の花が咲いている。 香りのいい花だ。
この寒い時期、城址公園でも花を見ることはほとんどない。
冬に黄色い蝋梅の花を見ると気持ちがやわらぐ。
蝋細工のような透明感のある花から、この名前がついたという。

花の中心に赤味のあるのが蝋梅で、黄色一色のものは素心蝋梅。
写真は素心蝋梅。 梅とつくが、梅とは全然別の種である。
花の感じが梅に似ているところからつけられたのだろう。 
毒々しさなど微塵もない花だが、種子はアルカロイドの毒を含む。
                    

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ふんわり

2010-11-19 16:28:04 | 自然と野遊び

過去を振り返ってみると、ああ危なかったなと思うことが、誰にでもあるので
はないだろうか。 危ないというのは、直接、命がというのもあるだろうし、
そこまでいかなくとも、肉体的に大きなダメージを残しかねないものもある。 
社会的な意味で危なかった、ということもあるかもしれない。 あるいは本人
はまったく知らずに、それらの危険を、間一髪で逃れている場合もきっとある
のだろう。

尊敬する、かなり昔に亡くなられた方の本を以前読んでいたら、その中で、
自分は振り返ってみると、何かに守られているような気がしてならない、
ということを書かれていた。 その方は生きていた当時、新興宗教のいく
つかと巨岩のように対峙し、峻烈に闘ったこともある方で、迷信家などで
はない。

本を読んだちょうどその頃、私も昔にあったことをなんとなく振り返って
いて、あのときは危なかった、運がよかったなということを考えていた。 
それは一つ二つではなかった。 だからその方の、何かに守られている、
という言葉が妙に心に入った。 こういうと、守護霊とかいう人もいるが、
そういうことは私にはわからない。


二十歳の頃、幼なじみの友人と丹沢の葛葉川に沢登りに行った。 その頃の
葛葉川はあまり人の入るところではなく、休日でもめったに人に行き交った
ことがなかった。 最近の沢の案内書などを見ると、今はけっこう人気があ
るようだ。


秋も終わりに近い頃、私たちは紅葉の葛葉川を快適に遡行していた。葛葉川
は小滝などが連続するところもあり、明るく登りやすい沢である。

沢の終りは、それまでの景色とは打ってかわって、荒涼とした大小の岩が
ゴロゴロと転がるガレ場になり、前方には断崖が見えてくる。

友人はそれを避けて、草付きの尾根につけられた道を歩いていったが、私は、
少しだけと命綱もつけずにその岩を登ってみた。 近くには「危険、登るな」
「落石危険」などの立て札があった。(丹沢は関東大震災のときの、マグニ
チュード7を越える余震の震源地で、岩がゆるんでいる。)

登ってみると階段状で、一段一段の間隔は高いが楽に登れる壁だった。
私は知らず知らずに、いつのまにか高度を上げていて、下を見たときビルの
6、7階ぐらいの高さまで登っていた。 足をかけている階段状の岩の幅は、
次第にごく狭くなってくる。 谷底には巨岩がゴロゴロしていて、落ちたら
助からないなと思い、そこから横に移動して草付きに出て道に戻ろうとした。

そのときだった。 手で確かめて掴んだはずの岩が、力を入れたとたんスポッ
と抜けた。 体が岩に乗せた足を軸にして、弧を描くように、ふんわり後ろに
浮いた。 とっさに目の前にあった、岩の裂け目に根を張ったごく小さな潅木
を、拝むように両手で掴み、転落をまぬがれた。 瞬間のことで、そのときは
恐怖も何もない。 私は握り締めた潅木を頼りに、体勢を立て直し草付きに
上がった。 あの潅木が抜けていたら・・・・・震えるような恐怖感はあとから
やってきた。
                     

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ワライタケ(笑い茸)

2010-09-14 18:27:36 | 自然と野遊び

小学校の夏休みに、山形に行ったときのこと。
いとこや近所の子どもたちと一緒に、山にキノコ採りに行った。

明るい沢沿いの道を歩いて、奥に入っていったが、夏ということも
あってか、キノコはいくらも見つからなかった。 だいたい、みんな
キノコのことを、ほとんど知らないのに採りにいったのだ。

同じことは、以前にもあった。
ワラビ採りに 「あべっ!」(行こう!) と連れて行かれて、背負って
いったカゴに、沢山採ってきたのはいいが、そのほとんどは食べられ
ないものだった。 

叔父の家は山にわりあい近いから、キノコや山菜にくわしい人が身近に
いて、採ってきたものをすぐ鑑別してくれた。 太く立派なワラビに似た
のは、鬼ワラビといったと思うが、同じシダの仲間だが食べられないらしい。 
「こだなもの、食(け)ねは!」 と、どんどんはじかれ、残ったのは子どもの
手で一握りほどのワラビで、がっかりしたことがあった。


2、3時間ぐらいもキノコを探したろうか。 見つけたのはほんのわずか
で、見分けられないから全部持って帰った。 それをキノコにくわしい人が
見てくれたが、毒キノコとわかるものは捨てられ、一種類だけわからない
キノコが数本残った。 細く、少し黒味がかって、とても旨そうには見え
ないキノコだった。

夜、私の家に下宿して、東京の大学に行っていた従兄たちの長男が、
ちょうど夏休みで帰っていた。 その従兄が、正体不明のキノコを
焼いてくれといって、焼かれたキノコをつまんでお酒を飲み始めた。 
みんなは従兄の様子を見守っていたが、なにも起きない。

そのうち、従兄弟はやたらに笑い始めた。 私はきっとこれは、
笑い茸に当たったのだと思った。 笑い茸のことを、少年漫画の雑誌で
読んだことがあったのだ。 そこには、このキノコを食べると、死ぬまで
笑い続けると、怖ろしいことが書いてあった。

従兄はもともと陽気な性格なのだが、お酒が入るともっと陽気に
なるのを知ったのは、私がずっと大きくなってからだ。 それで私は、
あれは笑い茸と思ったのは間違いで、お酒のせいで笑っていたのだ
と思っていた。

さらにあとになって、笑い茸の写真を図鑑で見て、あっ!と思った。 
あの食べたキノコにそっくりなのだ。 いまだに、あの大笑いがお酒で
なのか、笑い茸のせいなのか、わからない。

* 笑い茸は神経性の毒があって、
  食べると顔面が痙攣して笑ったように見えるそうだ。
                     (2009、9・7 記)
 
読んでいただいて、ありがとう!

形之医学・しんそう療方 東京小石川
http://www.shinso-tokyo-koisikawa.com/


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たき火

2009-11-26 19:25:49 | 自然と野遊び

子どもがまだ小さい頃、筑波にできたオートキャンプ場に行った。
新聞にそのキャンプ場が、オープンしたことを知らせるチラシが
入っていて、せがまれてイヤイヤ車で出かけていった。

オートキャンプ場というのはどうも苦手だ。
何よりキャンプ場で、電気まで使えるというのが一番いやなのだ。
日常生活を野外に移し変えただけのものの、どこが面白いのか、
まったくわからない。


着いたのは暗く、もう夕食の時間だった。
そのキャンプ場は野外なんていうものではなく、ほとんど町中に近い
町外れにあった。 おまけによく見れば、隣が墓地だった!
子供らを指図してテントを張り、その近くで薪で火を起こし手早く炊飯した。 
そばの木の枝に懐中電灯を逆さに吊るし、広げたゴザの上のカレーライスを照らす。  
うまそー、いただきまーす! と食べようとしたとき、下の子が、
「お父さん、なんかカッコ悪いよ~」  などと言う。

ふっと見ると、私たちは地面に座り込んでカレーの皿を抱え込んでいるが、
なんと他の家族連れはみんな、私たちの目線より、ずっと高いところで食事を
しているではないか。 思わず立って見ると、綺麗なクロスを敷いたテーブル
には、煌々と明るいランプがつき、うまそうなステーキと、お洒落なサラダ
みたいなものが並んでいる。 たしかに、カッコ悪い。 

まだ食事の用意をしている連中を見ると、キャンプ用グリルというらしいが、
小型ガスボンベを使った、2つ口の背の高いコンロで何か炒めものを作って
いる様子。 正直、そんなものがあることも知らなかった。 あれほど明るい
ランプがあるのも。

だが、やはり日常を移動しただけのようでつまらないと思う。 キャンプは
便利にすればするほどその分だけつまらなくなる。 便利さは何か大切な
ものを置き去りにするのだ。 大切なものとは、" 過程のもっている意味 " だ。

焚き火の楽しさや面白さだって同じだ。 天気のいい日に焚き火をするのは
やさしいが、雨の日でも濡れた薪を取ってきて火を熾し、炊飯することができ
る。 薪の組み方によって、少ない薪を長く燃やすこともできる。それには
経験とコツがいる。 焚き火も野外の技術の一つだ。 チャッカマンでボッと
火をつけておしまいだけではわからない楽しさが焚き火にはある。
みなさん、キャンプ用品メーカーにのせられ過ぎていないだろうか? 
お金を沢山使って、せっかくのキャンプの面白さを、なくしてしまっている
ような気がしてならない。


話は変わるが、高校生のとき仲のいい同級生と、二人とも大ファンだった
渡哲也の家に、焚き火をしているのを見に行ったことがあった。 
雑誌のインタビューの中で、渡哲也は庭で静かに焚き火をしているときが、
一番落ち着く好きな時間だと話していた。 それで大量の焚き火用の薪まで
買い込んでいるという。 家は田園調布に近い方だったと思うが、大きな
高い塀に囲まれた家で、木の多いかなり広い庭だった。 だが塀が高くて
何も見えず、2人でがっかりして帰ってきた。

形之医学・しんそう療方 東京小石川
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光にさそわれて

2009-03-16 16:51:37 | 自然と野遊び

のどかな光にさそわれて、久しぶりにカメラを持って城址公園を歩いた。
天気はよかったが、まだまだ寒さが残り、花をつけた野草を見つけることは
ほとんどできない。



踊り子草たちもまだ、紫陽花の株元で春を待っている様子。

わずかにタネツケバナ(種浸け花)が花を咲かせていた。
この野草は水気の多い田んぼなどでよく見かける野草。
城址公園でも菖蒲田の片隅で、毎年、小さな白い花を咲かせている。






タネツケバナの名前の由来は、この花が咲く頃に、
稲の種もみを水に浸けて準備するからだという。
アブラナ科の植物。

形之医学・しんそう療方 東京小石川
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