私がまだ幼稚園の頃、子供たちはよく集団で遊んでいた。
あるとき近所で、中学生ぐらいの子が隊長になって、
名前は忘れたがかっこいいグループがつくられた。
7、8人ほども集まっていただろうか。 月々5円か
10円の会費を積み立てて、いろいろな遊びに使うという、
ワクワクするような話だった。
ある日、隊長から池上本門寺でターザンごっこをやるから、
連れてってやるといわれた。 日曜日にみんなが集まり、
一列縦隊になって池上本門寺に向かった。 しんがりは、
その中で一番幼い私だった。
途中で駄菓子屋に寄り、きれいに巻かれた白い綿の
ロープを、積み立て金で買った。 細いロープだった。
その頃の駄菓子屋には、そんなものまで売っていた。
みんなのロープ!
それだけでもワクワク感は高まった。
30分ほど歩くと池上本門寺に着く。 広い本門寺の境内の
裏手には、林の中に小さなプールほどの大きさの池がある。
現在あるのとは、少し位置が違うように思う。 池は大きな
石や木々に囲まれ、さほど深くない。 そこで池の上に張り
出している木の枝にロープを掛け、それにつかまって、池の
端の大きな岩の上から、ターザンよろしく雄叫びをあげながら、
反対側に渡るのである。
少年たちの頭には、密林の王者、ワイズ・ミューラー扮する
ターザンの姿が自分と重なっていたに違いない。
その頃、あのほれぼれするような、ジャングルに響く叫びは、
少年たちを夢中にさせていた。
隊長から始まり、次々に雄叫びを上げながら渡っていった。
最後に一番小さな私の番がきた。 私も真似をしてロープにつかまり、
「あ~ あ~ ア~ッ!!」 とぶら下がった。ところが、雄叫びの
最後の 「ア~ッ!!
」 は、みんなと違って悲鳴だった。
小さな私は握力がなく、ロープをつかんでいられずに、池に落ちていった。
池の水はあまり落ちたくない色をしていたが仕方ない。
隊長はすぐ池に飛び込み、ずぶ濡れの私を助けにきてくれた。
あの頃はみんな貧しかったが、今よりもずっと、
ほんとうは豊かだったように思う。
からだの形は、
生命の器
形之医学・しんそう療方 東京小石川
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