形之医学・しんそう療方 小石川院長 エッセー

昭和の頃、自然と野遊び、健康と医療のことなど。

ドクダミとガキ科学者

2010-06-08 17:10:49 | 昭和の頃

真夏のうだるような昼下がり、3人のガキ科学者は
家の雨戸を締め切り、薄暗い灯りの下で、試験管を
アルコールランプの火であぶっていた。

ガラスの試験管の中に入っているのは、水とドクダミの葉。
やがて、ぐつぐつと試験管のドクダミ入りの水が沸騰を始める。

次第に猛烈なドクダミの臭気が部屋の中に漂ってくる。
吐きそうになるのをこらえて、あぶり続けた。

ガキ科学者たちの顔から、暑さとは別の汗が吹き出る。
だんだん匂いで鼻のずっと奥、眉間のあたりが気持ち悪くなってくる。

そのうち一人が、たまらずゲーッと声をあげて部屋から
飛び出していった。 それを合図に、あとの二人もそれぞれ
雨戸に飛びついて開け放った。 真夏の昼間なのに、外の空気が
涼しいような気がした。

何をしようとしていたのかおぼえていない。
ただガキ科学者たちは、漫画で見たように、薄暗いところで
ヒミツの研究をする科学者のようになってみたかったのだ。 


それ以来、もともと苦手だったドクダミの匂いが、トラウマの
ようになって、遊んでいて知らずに踏んづけて匂っても、
吐き気がするようになった。

ところが大人になって、これを日に干して乾燥させると、
ウソのように匂いが消えるのを知った。 ドクダミ茶と
いうのが流行って、それを、だまされたと思って飲んでごらんと、
無理やり飲まされてからである。


ドクダミは秋頃になると、葉をわずかに紅葉させる。
それは白い花とともに、ひそやかな趣のある美しさがある。
亡くなったオフクロは日本画や藍染の題材によく使っていた。
だが私は、きれいだなと思う反面、あの匂いが鼻の奥に
ツーンっとよみがえってきてどうもいけない。

ドクダミは強い生命力をもつ野草で、暗い林内でも旺盛に
勢力を広げる。 十薬(ジュウヤク)という名前で、生薬として
日本薬局方にも入っている。 また民間薬としても使われてきた。
                      (2009、6・18 記)

読んでいただいてありがとう!

形之医学・しんそう療方 東京小石川
http://www.shinso-tokyo-koisikawa.com/


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