形之医学・しんそう療方 小石川院長 エッセー

昭和の頃、自然と野遊び、健康と医療のことなど。

ドラキュラ伯爵、部屋を舞う

2013-12-14 16:39:15 | Weblog

小学校の頃、近所の靴屋のおじさんに、コウモリをもらった。
飛んできたのを庭で捕まえたらしい。 コウモリは夕方、よく校庭の
空に5、6匹が来てパタパタと飛んでいた。 子どもたちが小石を
空に放り投げると、それに近寄ってくるから、私たちは面白がって、
石を投げて遊んでいた。

それほどなじみのある生きものだったが、少年漫画の雑誌に、
牙から血を流している、恐ろしい吸血コウモリの絵なんてよく出ていた。
なので、触るのはかなり気持ちが悪いが、おっかなびっくり持ってみた。

小さな真っ黒い顔を見ると、豚の鼻をつけた耳の大きなネズミみたいだ。
持った感触は、やわらかいビロードのようで、皮が肉と密着していないで
グニャ~ッと伸び、かなり気持ちが悪い。

このドラキュラ伯爵を、四畳半の子供部屋で飼うことにした。
さっそく小さなボール箱に穴をあけ、中に布切れを入れて巣を作り、
棚の上に置いてやる。 伯爵をその中に入れると、おとなしくしていた。

だが、エサをやらなくちゃと、虫を捕まえて口もとにもっていっても食べ
ようとしない。 オフクロから、肉の切れはしをもらってやってもだめ。
喉が渇くだろうと、水や牛乳を綿にふくませてやっても口にしなかった。

夕方になると、伯爵は巣箱から抜け出して、狭い部屋の中をヒラヒラ
飛んだ。 私の部屋には石炭ストーブがあり、その煙突があるのだが、
ちゃんとそれを避けて飛んでいた。

遠目でもわかるぐらい、コウモリの飛び方は鳥とは違う。 まるで大き
な蝶が飛んでいるように、羽というのか知らないが、手をパタパタと
動かして飛ぶ。

夜中に目を覚ますと、ヒラヒラと狭い部屋を飛んでいるのを見るのは、
何か愉快だった。 ただ水も食べ物も食べないので、このままだと死ぬ
と思い3日目ぐらいに逃がした。 腹が減ってたのか、ドラキュラ伯爵は
ヒョロヒョロと、夕方の空に消えていった。


からだの形は、生命の器
形之医学・しんそう療方 東京小石川
http://www.shinso-tokyo-koisikawa.com/


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