形之医学・しんそう療方 小石川院長 エッセー

昭和の頃、自然と野遊び、健康と医療のことなど。

日夏耿之介 『道士、月夜の旅』 から

2013-06-28 12:57:06 | Weblog

            
      くに
『 わが家郷の指す方は

  くろき                          おがわ  かちわたり
  黔き寒林をかいくぐり 性急の小渓を徒渉り

                  しゅんざん おくが    あ
  灰白の雲垂るる峻山の奥秘に在る


   いわけ
  稚なきころ わが身はいつも沈黙と

   じゃくばく
  寂莫の水銀液深く潜み入り

                     てんじょう
  たまたま燃え出る格天井の

        ほかげ
  銀の燈影をなつかしみ
    』 


  

日夏耿之介(1890~1971) 英文学者、詩人


からだの形は、生命の器
形之医学・しんそう療方 東京小石川
http://www.shinso-tokyo-koisikawa.com/
  
                    
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初夏の花・半夏生(ハンゲショウ)

2013-06-27 19:20:38 | Weblog

庭のハンゲショウ(半夏生)が葉を開き始めている。
今頃は葉に白い斑が入り、しっとりした趣きのある植物だ。

1枚の葉の中で白い斑の形や大きさはさまざま。
この白い斑は、8月の夏真っ盛りになると消えて
薄い緑に変化する。 こうしたところからと思うが、
別名を、片白草(カタシロソウ)、または半化粧ともいう。
ドクダミ科の植物だが、ドクダミのあの匂いはない。

半夏生という名前は、暦で7月の始めを半夏といい、
この頃に咲くからこの名前がつけられたという。
しかしカラスビシャクの根茎も、生薬で半夏というからややこしい。

植物の名前を調べていると、うまい名前だな、と感心するものがある。 
反対にどこからその名がついたのか、不思議に思うようなものがある。 
どのような過程で、植物の一般に呼ばれる名が決まっていくのか、
興味をもっていた。

最近、「植物の名前の話」という本を読んだ。 
故・前川文夫 著。(植物学者で元東大名誉教授)。
1994年、八坂書房刊。

『 植物の語源については、古来たくさんの見解が発表されている。
いずれも一理あるが、それにもかかわらず、なるほどとうなずかせる
ものに乏しいのは事実である。 
これは従来の国語学者の手に委ねられていた語源考が、
おそらく命名の本来の、歴史的展開とは遊離した見地に立って、
単なる字句や、文字の音の上の扱いに終始してしまったこと。 
その名を負う植物の実体とその当時の人との接触点が、
まったく考慮されなかったことに大きな原因がある。』  
      (「植物の名前の話」の冒頭の一節から引用。)

この一文を読んだとき、なるほどと思った。
こういうことなら、首を傾げたくなるような名前が、
なぜつけられたのか合点がいく。

                  
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背中をのぼったトカゲ

2013-06-24 14:10:10 | Weblog

小学校の頃、遊び好きの男の子のあいだで、小さな緑色の雨ガエルや
カナヘビの子を、ポケットに入れて持ち歩くのが流行った。
朝、学校にも持って行き、休み時間にポケットから出して友だちと見せあう。
それらにはちゃんと、チビとかタロウのような名前がつけられていた。

私も4、5センチのカナヘビの子を持ち歩いていた。
カナヘビは、名前はヘビと付くが蛇ではない。 正式名は、ニホンカナヘビ
という名前の日本固有のトカゲで、どこにでもいるやつだ。 捕まえて指で
突っつくと、怒って噛みつくが、ごく小さなヤスリのような歯しかないので、
痛くもなんともない。 子どもの遊び相手に格好だった。

ある日、いつものようにポケットに入れて学校に持っていった。
暖かい日の授業。 気持ちよく居眠りしていた。
突然、真ん前でウギャー!!というかん高い悲鳴がして、
ビックリして目がさめた。
                                  
知らないうちに、胸のポケットからカナヘビが逃げだし、私の前に座って、
机に寄りかかっていた、K子ちゃんの背中を攀じ登っていったらしい。
払いのけられたカナヘビは、教室の床を逃げ回ったあげく、誰かが捕まえて
先生に渡した。 先生は指でつまんで窓から下の花壇に捨て、
私は立たされた。
「なんでこんなもの、学校に持ってくるんだー!」 バッコンッ ! 
黒いボール紙で挟まれた出席簿で、頭のテッペンを殴られた。
目から白い光が出た。 漫画によくある、頭をぶつけると目から
☆が出るっていうのは、ほんとうだと思った。
「他に持ってるヤツいるか?!」
ギョッとした友だち数人が手を上げて、 
カエルやカナヘビを差し出し花壇に捨てさせられた。

                      
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薬草・ゲンノショウコ

2013-06-18 14:08:21 | Weblog

はじめてゲンノショウコを見たのは、夏の城址公園だった。
名前は、子どもの頃から薬草として聞いていたが、実物を知らなかった。 
これがゲンノショウコとわかったのは、咲いている花を見てなんだろうと思い
調べたら、ゲンノショウコだった。 いままでに何度も見ていたかもしれない。 
それほど珍しい野草ではない。

民間で古くから薬草としてよく知られている。 
名前は「現に効く証拠」から、「ゲンノショウコ」と大昔につけられたという。
おかしいほどそのままの名前だが、それほど効能ありということか。

子どもの頃、母親に飲まされたような気がするが、どんな味だったのか、
記憶にない。 たぶんセンブリのように苦くはなかったと思う。 
健胃整腸薬として、胃の調子が悪いときや下痢したときに使われるようだ。

葉の切れ込み方が、キンポウゲ科の植物によく似ている。 
キンポウゲ科の植物には、毒草として有名なあのトリカブトがある。 
田舎の古くからの家々では、花で確かめた後の土用の頃に、
自家用薬草として採取したという。 フウロソウ(風露草)科で、
花はトリカブトとはまったく違う。 花を見れば間違えることはない。 
ピンクの花もある。



ゲンノショウコが種をつけ、それが弾け飛んだあとは写真のような形になる。 
お神輿(みこし)によく似ている。 ゲンノショウコの別名を「神輿草」という。

                      
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アリ地獄

2013-06-15 13:54:01 | Weblog

小学校の頃、アリ地獄を捕まえ、空き缶に入れて飼うのが、
男の子のあいだで流行った。 近所の神社の床下にもぐりこむと、
小さいもので直径3センチから、大きなものは5センチぐらいの、
すり鉢形の穴が地面にポコポコ開いている。 

それまでは見てなんだろうと思っても、アリ地獄とは知らなかった。 
一緒に捕まえにいった友だちに、それがアリ地獄だと教えられた。
このスリ鉢の底を、深めにすくうとアリ地獄がいる。 
どこにでもいるが、見つけるコツは雨のあたらないところ。 
木の根元の小さなホコラの中などでも、簡単に見つけることができる。

子どもがまだ小さい頃、高尾山にハイキングにつれていった。
アリ地獄のことを教えると、あっちこっちの木のほこらを探しながら歩き、
オンブもせがまず4時間近くも歩き通した。 小さな子どもでも、
こうして何か探しながらだと夢中になって歩く。

 

体長1センチほどだが、見た目はグロテスクな姿をしている。
もっと大きかったら、アニメの悪役にぴったりの姿だ。
でも捕まえても噛みつくこともなく、ただ身を縮めている。



これがあの薄羽(ウスバ)カゲロウの幼虫だというのだから驚く。
成虫になったカゲロウは、見るからに儚い(はかない)感じがするが、
幼虫の姿からは想像もつかない。
* 写真は薄羽カゲロウではなく、草カゲロウ。


空き缶にいっぱい砂を入れ、アリ地獄をそこに置くと、お尻のほうから
クルクル回りながらもぐり出す。 大きな円から、だんだん小さく回り、
頭にある2本のツノで、砂をパッ パッと外に放り投げる。 
最後はきれいなスリ鉢型の穴になり、その真ん中にもぐって、
じっと獲物が来るのを待っている。

通りがかったアリがそこに落ちると、まさに地獄で、足元のサラサラと
崩れる砂の斜面を登ることがなかなかできない。 なかには懸命に登って、
穴からの脱出に成功しそうになるのもいるが、アリ地獄は下からツノで
砂をはね上げてアリにかけ、落としてしまう。

自然の創りだす、こうした生態の巧妙さは驚嘆するしかない。
蜘蛛が体から出す糸で、巧みに網を張っていく様子を見ていることがある。 
その仕組みを、親から受け継いだというのはわかるが、その親も親から・・・・
と考えていくとわからなくなる。 一口に進化とか遺伝子というが、
それを獲得するまでの膨大な時間の流れの中で、どのようにして
獲得していったのだろうか。 
                   

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山の扉

2013-06-14 18:15:13 | Weblog

山深く 蝶をかくまう扉あり


           桂 信子(1914~2004)


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