小学生の頃、土木技師だったオヤジは、湘南の道路公団の事務所で
仕事をしていた。 事務所は海岸通り沿いにあり、いくどか友だち数人と
電車に乗って遊びに行った。
海で遊ぶのも楽しいが、私たちの楽しみは帰りにもあった。
夕方、仕事の終わったオヤジは、一緒に帰るとき、江ノ島の
ほうをまわって、サザエの壺焼きをそれぞれにご馳走してくれた。
当時、魚屋でもサザエはあまり売ってなく、家で食べたことのない
私たちには、たいへんなご馳走だった。
サザエは身を細かく刻んであるものと、丸ごと入っているのがあって、
どちらでも選べたが、私たちはもちろん刻んであるほうで、
爪楊枝の先でちょっとづつ惜しんで食べた。
ある夏の日、友だちと海岸に出て泳いだり、砂に体を埋めたりして
遊んでいた。 そのとき砂浜にきれいな、手のひらほどの青い三角形の
風船が落ちていた。 私はそれをつかんで海に向かって投げた。
とたんに背中に、ビリビリするような電撃的な痛みを感じた。
この風船には、砂にまぎれてとても長い足があったのだ。
振りかぶったとき、それがべったりと背中と太ももに張り付いたのだった。
友だちに見てもらうと、背中から太ももの裏側にかけて、赤いミミズ腫れが
できていたらしい。 あまりにも痛いので、事務所の人に見てもらった。
青い風船みたいなものの話をしたら、それは電気クラゲだと教えられた。
電気と聞いただけで、 なおさらビリビリと痛んだ。
アンモニアをつけるといいといわれたが、事務所にはないという。
それじゃ、誰かにオシッコをかけてもらえと言われ、友達にかけて
もらうことにした。
事務所の裏に出て、裸の背中を向けてしゃがむと、友だちは生温かい
オシッコをかけてくれた。 とても気持ち悪く、おまけにちっとも効かず
痛みは続いた。 すごく損した気分だった。
電気クラゲは正式名、カツオノエボシといい足の長さは2、3メートルも
あるそうだ。 このクラゲは単体ではなく、ヒドロ虫という生物が集まって
一つに形成されている群体だという。 それぞれが役割が決まっていて、
刺す部分を担うヒドロ虫群もいるというから驚く。 2度目に刺されると、
ショックを起こして死ぬこともあるという、危険な海の生物である。
からだの形は、生命の器
形之医学・しんそう療方 東京小石川
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