小学校の頃、友達が手品を見せてやるというので見ていた。
前に突き出した、何も持っていない指同士を、ゆっくり擦り合わせ始めた。
と、指のあいだから、なんと煙が出てきてびっくりした。
友達はアッチッチなどと言いながら煙を出し続けた。
ほんとうの煙だった。 そのお化け煙は、どこかの夜店で買ってきたらしい。
その後とても流行ったが、じきにこのお化け煙は姿を消し、妖怪煙という
名前に変わった。 だがこんどのは、ほんとうの煙じゃなくなってしまった。
こっちは小さな厚紙にベタベタしたものが塗ってある。 それを指に取って、
指と指をくっつけたり離したりする。指の間のベタベタしたものは微細な
糸になって空中を漂い、煙に見えるというものだった。
だが、ほんもののお化け煙を見てしまった私たちには、どうもインチキ
臭い。 空中をふわふわ漂うが、ほんものと違って消えないのだ。
あるとき少年漫画の雑誌に、ほんものの煙を出すお化け煙の作り方が
出ているのを見つけ、大喜びで友達と作ってみた。
作り方は簡単で、マッチ箱の側面のマッチを擦るところを薄く剥がして、
皿の上で燃やすと茶色いネバネバしたものが残る。 これを指にとって
擦り合わせると、ほんとうの煙が出てくるのだ。
煙の元はほんのわずかしか取れないから、多いめのマッチ箱が必要だった。
指から煙は出るが、なぜか全然熱くない。 友達のアッチッチ というのは
演技だった。 マッチ箱の擦るところは燐が使われていて、これが煙の元に
なるのだという。
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形之医学・しんそう療方 東京小石川
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