形之医学・しんそう療方 小石川院長 エッセー

昭和の頃、自然と野遊び、健康と医療のことなど。

マムシ山

2010-05-27 13:38:18 | 昭和の頃

小学校の頃、オヤジの仕事場のある湘南に遊びに行ったある日。
さんざん海岸で遊んだ私たちは、こんどは事務所の裏にある山に
探検に行こうということになった。
 
山というより、丘の連なりといったほうがいいぐらいのものだが、
ガキ探検隊は隊列を組み、歌をうたい意気揚々と進んでいった。
平坦な、ほの暗い林の中を進んでいくと、突然、林がきれて明るくなり、
山を登る細い山道があらわれた。 道の入り口には、平屋の粗末な
小屋があった。

そして私たちは、あっちこっちに立つ、手書きの看板にギョッとした。
「危険!入るべからず」 「マムシに注意!」というようなことが書いてある。
もっと探検隊を驚かせたのは、小屋の前の金網を張った木の箱だ。

箱の中には、ウジャウジャともの凄い数のマムシがトグロを巻いていた。
ギャッ! と叫びたいのをこらえて、どうするか相談が始まった。

みんな帰りたいのだが、弱虫と言われるのがイヤで言い出せない。
話し合いで、ちょっとだけ行こうか、ということになった。
全員が手に手に、落ちていた木の棒切れを拾った。

ジャンケンで、先頭になる隊長がイヤイヤ決められ、
隊長はへっぴり腰で、やたらにあたりを棒切れで叩きながら
進んでいった。 ほんのちょっと、ガサッと音がするだびに全員
棒立ちになりながら、それでも進んだ。

山道を半分進んだところで、隊長が突然、ギャーッと悲鳴をあげ、
Uタウンして、一目散に坂道を駆け下りだした。
ガキ隊員もわけがわからないまま棒切れを放り出して続いた。 
見えたらしい。 隊長の少し前を横断する、太短いヤツが。

事務所に帰ってオヤジに話したら、こっぴどく怒られた。
そのあたりでは、小山にマムシを放って繁殖させ、
それを獲って生計を立てている人がいたらしい。


形之医学・しんそう療方 東京小石川
http://www.shinso-tokyo-koisikawa.com/



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