晴れ、ときどき映画三昧

「めまい」(58・米) 80点

  

 ・前衛映像で心理サスペンスを描いたヒッチコック。

 「悪魔のような女」のピエール・ボアロー、トーマス・ナルスジャック原作「死者の中から」を、ヒッチコックが斬新なカメラワークを駆使入して映像化したサスペンス。

 高度恐怖症のため退職した刑事・スコティ(ジェームズ・スチュワート)が、旧友の依頼で彼の妻マデリン(キム・ノヴァク)を尾行する。曾祖母の霊に取付かれたという彼女は、奇怪な行動の末海に飛び込んでしまう。

 ソールバスのタイトル・デザインから始まる前半は、スコティとマデリンのミステリアスなラブ・ロマンスの雰囲気。サンフランシスコの観光名所(アーニーズ・レストラン、ゴールデンゲート公園、パレス美術館、エンパイア・ホテルなど)が楽しめる。

 カメラワークが独特で、レストランでスコティがマデリンに出会うシーンや曲がりくねった坂道を俯瞰で捉えた映像はとても斬新。とくに「めまいショット」と言われる鐘楼の螺旋階段をズームアウトしながらカメラを前方へ動かす手法は思わず頭がクラクラしてしまうほど。

 鐘楼から飛び降りたマデリンを救えなかったスコティが療養所を退院し、街で良く似た女を偶然みつけた後半からは、心理サスペンスへと変貌する。

 若いころ観た時はミステリータッチのラブ・ロマンスとしか思わなかったが、ヒッチコックはこの作品を「<死姦願望>を持った男の物語」と称しているとおり、よく似た女・ジュディ(K・ノヴァクの二役)をマリガンそっくりに変えて行く。療養所以降はスコティの妄想では?という説があるほど、別人の狂気じみた男を演じたJ・スチュアートが頑張った作品でもある。

 ヒロインK・ノヴァクの起用はヴェラ・マイルズが妊娠したための代りで、ヒッチコックはミス・キャストだと思ったようだが前半の謎の女の雰囲気はハッとするような美しさ。おそらく後半がお気に召さなかったのだろうが彼女には出世作となった。

今観ると、テンポの緩さやCGの映像に50年前の作品であることを再認識させられるが、当時としては前衛的な心理サスペンス・ミステリーでトリュフォーが絶賛したのが頷ける。
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