月のたび

日々の日記

今月の諸君でおもしろかったこと

2008-08-31 00:11:36 | 読書(興)

今日、来月号の「諸君!」が届いたので、よんだ。久しぶりに読んだが、久々に面白い記事が多かった。いつも目を通すのは、「紳士と淑女」と「ネット論壇時評」だが、今月は佐々木俊尚さんの記事がもう一つあり、ブロガーとの対談がなかなか良かった。私はここ5年くらい前から戦中派に注目し始め、ご先祖様や近所の爺さんの戦争体験を直接、間接聞いているうちに、なかなか興味を持ち、伊藤桂一さんの小説の面白さをわかり始めた。

だから、記事の中で、失われた世代が戦中派に惹かれるというのは直感的にわかる。理屈じゃなく、共感する。 限りなく共感する。

なかでも、伊藤桂一さんの戦争小説って、多くの人に読んで欲しいと思う。

なぜかというと、私は、自分が今こうして生きている訳がわからない。

だから、「本当の自分」を知りたい。そして、本当の自分を知るために、自分なりに幾らか努力した。その努力はうまくいかなかった。そして、自分探しをあきらめて、一からやり直している。そして今、「一からやり直すのって大変だ」と思いつつ、理由もなく生きている。これが今の自分だ。

そこで、まず思い返して、「何のために生きているのかわからんが、とりあえず、与えられた縁を大事にすることから始めよう」って思っている。同時に、現在、私の同年代の一部が、それぞれの仕方で自分探しを続けていることに対して、同年代として共感する。こういう思いって、戦争に行った日本人同士の気持ちのつながりほど強くはないけど、心のどこかで、他人事にはできない。

苦行者みたいな自分探しの旅。自分を肯定してくれるものがない、っていう悩みは、贅沢な悩みだけど、何か、さすらいの風情を感じさせる切なさだ。使命感がない空虚さ。宗教につながっていくような存在意義でもいいから満たされたい。そんなものナイのは、とっくにわかってる。ナイけど、探してる。だから、気の毒と思う、けど、見つけたら私にも教えて欲しい秘密。だから、他人事にはできない。

なのに、インターネットの世界って、関係の仕方がキレギレでバラバラだから、すぐ付き合いが切れちゃう。一度切れた縁を取り戻せないのがインターネットのコミュニティ。みんなが集まればすごい力になるけど、あとは他人。「暗闇から来て、暗闇に戻る」のが運命。これがインターネットの結ぶ縁。

最後に伊藤桂一さんの一節を引用します。

頭を焼いてもらえた人はしあわせだった、と、私は思いました。八月二十日以降、守備体制が崩れてからは、私たちは確たる居所もない、草原の彷徨者となり果て、その日その日の運命で、野に屍をさらすことになっていたのです。生きのびたとしても、次の日、安心して死ねる陣地もないのです。そうした一寸先は闇の生き方だったのです。(伊藤桂一著、『静かなノモンハン』)