だから、自分の体験や知見を空間的に拡張したいだけであって、日本の外に出たいと思った人が海外に行っても、そのうち海外旅行に飽きれば、宇宙旅行に行ってみたいと思うだけで、そういう発想ってずっと続けていればきりがなくなる。
「どこか遠くへ行きたい」って気持ちはわかるけど、遠くへ行って何をしたいのか、は人それぞれ。そして、その遠くへ着いてしまって、何もすることがないのに気づくのが私。
だから、私は植物に興味のあるふりをして、なんでもない土地に降りてなんでもない風景を見るために植物や地形を観察するのがよいと発見した。それは私の気まぐれを他人に説明するのに立派に成立する口実だろう。気まぐれをわかってもらうためには口実が必要でしょ。
今日は1月にしては風のない暖かな晴天であった。我が住む地域は、町並みは寂びれ、年寄りばかり多いし、発展から取り残され、錆びたトタン屋根の家々が時間をとめたまま蛇行する道沿いに建つかと思えば、そういうのと一緒に、レンガ建ての新しい2階屋や公団住宅など、ごっちゃにバラバラに混在する、何のまとまりもない風景であって、こういうのは日本国中普通の風景なのだが、それでも、今日の冬の晴れた日差しの中で眺めてみると、気分的に違ったように見えなくもない。無理矢理の思い込ませに近いが、全然自分が知らない土地に行っても抱くような不思議な気持ち。おそらく、仕事中ではなく、さまよったとしたら、もっと違ったふうに見えてきそうな見慣れた町。