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ちょっと気になるいい事、言葉、最新技術

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上司の貪欲な権限に仕える『冬の蝉』

2024-09-12 07:42:16 | ビジネス小説
@これは、武家時代の「騙す、騙される」「仕う、仕われる」など6編の短編小説である。出世欲から家老・奉行の刺殺を計画、それも出世を望んだ本人ではなく家臣を使いその刺殺計画を果たす。その刺殺する理由の背景には、賄賂、横領と言う嘘の仕掛けを作って、あくまで悪事を暴くような計画をでっち上げ無罪の家老・奉行を刺殺したことだ。 現代社会、企業社会にもある出世欲、もしくは賄賂、横領を隠す為に上司の権限を使い部下を言いなりに動かす事件事故が多い。その背景はいつも「出世・金にまつわる貪欲さ」から善人を巻き込み私欲を稼ぐ世界を描いている。「仁義」(人の善の道徳)を意識し、欲を貪欲にさせない時代だ。
冬の蝉
坂岡真2024年9月
「概要」心の襞を巧みに織り交ぜる、独特の乾いた筆致の著者が、「死に様」をテーマに描いたオリジナル短篇時代小説集。6編ある中の2編を紹介する。
ー「逆月」出世に惑わされ下手人になる
    出世に欲を出した筆頭目付が家臣を騙し、賄賂をしているという次席家老を殺害、家臣はその後殺人罪として逃げまくる。ところがそれはまるで逆で事件後、次席家老になった上司が出世の為に疑惑を持ちかけたことが明る煮になり、再び次席家老を刺殺する。刺殺を計画したのは同胞の二人でその一人の面が割れて追われる事になったが残ったもう一人は出世し逃げた同胞の女性を娶り子も持った。だが、同胞を思う決着は悲しい結果となる。
ー案山子 仲間の裏切り
    横領の罪で腹を切った奉行が実は家老による罠だった。その奉行の仇討に声をかけられ参画する事にした剣の達人の武士。妻には当日まで何も言わないようにしていたが、誘い出した仲間が事前に妻に耳打ちしており、敵討の当日、妻は夫がいない世は生きる甲斐がないと自殺する。覚悟を決め家老を刺殺する場所に出かけるとそこには見せかけの籠と数人の武士しかいない。ましてやこの誘いを促した本人の姿もいない。それは家老を刺殺しようとした仲間を炙り出す家老の罠で、誘った仲間が家老の計画に参画し裏切っていた、事を知る。


資本主義は欲望を作り、富を独占する社会『クソったれ資本主義が倒れた後のもう一つの世界』

2024-08-08 07:41:14 | ビジネス小説
これは資本主義の後の世界を求めた思想家、経済学者、IT技術者によるSFチックな世界を妄想し、現実の史上分析からなる創造力豊かな世界を描いた小説だ。「資本主義」とは「私たちの中に欲望を作り出す世界」だから富む者はより富む社会システムであり、人々の間には様々な格差が生じる、と言う。その資本主義が滅びた後、GAFAのような独占巨大資本が失くなり銀行は中央銀行だけとなる。富の分配を公平にする世界が始まり、企業が納税者となり国民は納税の義務はなくなる。よって富の根源である投資・株市場も一変し社員が一人1株、議決権1票を持ち企業、個人を評価することで給与・ボーナスは定額を中央銀行から配給される。いわゆる富の集中化を無くし大きな格差も無くなる世界を模倣させるのだ。
現実の記事:「ザッカーバーグが「世界3位の富豪」に、株価急騰で資産27兆円」、これは一人の人間の域を超えた額であり、このような富が集中することが「資本主義」の典型なのだ。
『クソったれ資本主義が倒れた後のもう一つの世界』ヤニス・バルファキス
「概要」「株式市場をぶっ壊せ。21世紀の革命は、いま始まったばかりだ」「公平で正しい民主主義」が実現した2025年にいるもう一人の自分と遭遇した。分岐点は2008年、そうリーマンショックがあった年だ。2011年に「ウォール街を占拠せよ」と叫んだ、強欲な資本家と政治家に対する民衆の抗議活動はほどなく終わったが、「もう一つの世界」では別の発展をたどることになった。
資本主義が滅びた「もう一つの世界」では……。
→銀行がなくなる、残るのは中央銀行1行だけ
→株式市場がなくなる、社員は1人1株、議決権1票
→独占巨大資本がなくなる、GAFA消滅
→格差がなくなる、中央銀行が国民全員に定額を給付
→上司がいなくなる、好きな相手とチームをつくり基本給は全員同額
・「もう一つの世界」(本文中で注目されるキーワード)
ー文中にある興味ある言葉文章
「銀行家がお得意なのは破壊することだけ、それは小悪党には桁はずれの融資をし、本当に必要とする人や役立つことに使おうと絶対に貸さないで、大儲けする」
「利益を出す最善の方法は、まずは市場を独占して、製品市場を戦略的に飢えさせることだよ」
「銀行と裕福な顧客は架空の資金を使って企業の株を買い求め、投資に回すのではなく売り利益を得る」
「大手企業や金融業界の大物が手を組み思い描く未来(GAFA)を作り上げた」
「世のCEOたちは社会の富を増やすためではなく私物化する為に金融業界の大物と化していた」
「資本主義は人間と地球の価値あるもので企業に金融業界に搾取させてきた」
「どれほど新しい税金を次々に導入しても資本主義の未来に賭けたら私たちに未来はない」
「商業銀行と投資銀行が如何に貨幣を作り出すかは簡単、融資金額をキーで打ち込むだけ」
「企業が事業の基盤とする財産や資産、資金、市場の独占を国家に課してもらい実施している」
「国家はアプリ等を使い国民の行動を何もかも追跡する世界になった」
「次の世界で成功するためには善良な人間の振りをする方法を身につけることだ」


名誉と地位を守る「冤罪」の罪『慈雨』

2024-05-13 07:36:13 | ビジネス小説
この小説のテーマは、真実を追求する正義感を持った個人と、名誉と権力によって真実が歪められる組織との対立を描いている。内容は退職警官が冤罪事件の真相解明に執着、「罪を犯した者は罰せられるべき」という正義感を持っていること、しかし組織が、「冤罪」ということに対して名誉と地位を守るために過ちや罪を隠すのが当たり前になっている。 現実、官庁、特に政治権力を用いた真実の隠滅、消滅、改竄、破棄など自分達の過ち、罪を隠そうとする行為は近年頻繁にあるように感じる。「正義を正す」善人や組織が減少し、金と権力で歪められた社会があることを認識しておくべきだ。
『慈雨』柚月裕子
「概要」警察官を定年退職した神場智則は、妻の香代子とお遍路の旅に出た。42年の警察官人生を振り返る旅の途中で、神場は幼女殺害事件の発生を知り、動揺する。16年前、自らも捜査に加わり、犯人逮捕に至った事件と酷似していたのだ。神場の心に深い傷と悔恨を残した、あの事件に――。かつての部下を通して捜査に関わり始めた神場は、消せない過去と向き合い始める。組織への忠誠、正義への信念……様々な思いの狭間で葛藤する元警察官が真実を追う
ー16年前に6歳の幼児が殺害され犯人が逮捕された。その後犯人は無実だと訴えたがDNAの証拠で有罪となり、服役した。その後刑事神場は退年退職し、警察、裁判所の冤罪では無いかと何かにつけ悪夢を見た。それは幼児が「おうちに帰りたい」という夢を見た。
ー神場が四国八十八番札巡礼中にまたしても同じような幼児殺害事件が発生したが、手掛かりとなるものは見つからず捜査は難航していた。神場はもしかしたらこの事件は同一犯か、同じケースだと悟り元部下に共通点を探させた。そして2つの事件から内密に16年前の事件を捜査し出した。
「人間がやることに完璧という言葉は存在しない。どこかに微細とはいえ瑕ある。だからこそ、我々捜査員は、疑念を限りなくゼロに近づけなければならない」
「刑事のお前が私情を向けるべき場所は、警察組織や課長、ましてや俺じゃない。第3の純子ちゃんを決して生み出してはいけないという、1点だけだ。」


「使命」と「責任感」が欠け始めた社会を映す『機捜235』

2024-04-16 07:37:17 | ビジネス小説
@この小説は、若手警察官の高丸巡査部長と、間もなく定年退職を迎える「ベテラン」縞長巡査部長のコンビが、様々な事件や事故に遭遇し、犯人を発見・確保していく物語。縞長部長の豊富な経験と「感」から、高丸部長は多くのことを学んでいく。特に、縞長部長の「亀の功より歳の功だけじゃないんだな。人生、幾つになっても勉強だ」という言葉は印象的です。一方で、作品は現代社会における「使命」と「責任感」の欠如、特に政治家の「闇金」問題に警鐘を鳴らしている。国民のためではなく自分のためだけに行動する政治家の存在は、日本の将来に不安を感じさせる。全体として、本作品は若手警察官の成長と、社会の抱える問題を描いた作品といえるでしょう。
『機捜235』今野敏
「概要」渋谷署に分駐所を置く警視庁第二機動捜査隊所属の高丸。公務中に負傷した同僚にかわり、高丸の相棒として新たに着任したのは、白髪頭で風采のあがらない定年間際の男・縞長だった。しょぼくれた相棒に心の中で意気消沈する高丸だが、実は、そんな縞長が以前にいた部署は捜査共助課見当たり捜査班、独特の能力と実力を求められる専門家集団だった……。


会社でのストレスは即座に転職を『黄金比の縁』

2024-04-08 07:37:24 | ビジネス小説
「会社の不利益になる人間」と烙印を押された社員が人事部に左遷され、会社への復讐に燃える、ビジネス短編小説だ。新入社員採用に対して人事は最終的に「縁」で合否を決める、それは一般的に「総合的に判断した」と言う理由だが、実際は「何となく決めた」で「そう言う時代」なのだ、と言う。採用合否に「美の黄金比」(比に遇う者は転職する確率が高い)で合否を独断で決めようと、会社にダメージを与える最適な新社員を発見、採用したいと詰め依る。現実、入社3年で退職する率が高いと言うが、それは余りにも入社時に「甘み」(給与・休暇・出世)だけを飲まされているからなのかとも思う。それと「良い上司」に恵まれるかどうか、これが一番の課題であり運命とも言える。それと、ストレスを溜めないように悩み始めた時には、早々に転職をした方が時間的にも精神的、肉体的にも健康だと、思う。
『黄金比の縁』石田夏穂
「概要」「会社の不利益になる人間を採る」不当な辞令に憤る人事部採用チームの小野は、会社への密かな復讐を始める――。(株)Kエンジニアリングの人事部で働く小野は、不当な辞令への恨みから、会社の不利益になる人間の採用を心に誓う。彼女が導き出した選考方法は、顔の縦と横の黄金比を満たす者を選ぶというものだった。自身が辿り着いた評価軸をもとに業務に邁進していくが、黄金比の「縁」が手繰り寄せたのは、会社の思わぬ真実だった……。