昨日、元教え子で現在乳児院で働いているIさんが研究室にやってきた。乳児院のリアルな話はとても興味深い。現在の日本の家庭の問題がそこから浮かび上がってくる。もちろん現場の保育士は赤ちゃんの詳しい現状について詳しく知らされているわけではないが、それなりに情報は伝わってくる。
そんな彼女の話の中で、こんな話がでた。
乳児院や養護施設での養護っていうのは世界でも日本だけなんですね。世界では養子縁組が圧倒的に多いってよく聞きます。養子縁組の方がいいのか、施設養護がいいのか。どっちがいいんでしょうね。子どもにとってもそうだし、養護者にとっても。施設養護をしている私でもよく分かりません。
なるほど。たしかにその通りで、海外では圧倒的に養子による養護が定番となっている。もちろん養護施設がないわけではない。もともと欧州では、例えばペスタロッチのように、孤児院という施設養護が主流だったはずだ。だが、現在、世界各国で施設養護を推し進めようとしている国はほとんど見られない。「ホスピタリズム」という言葉で施設養護が厳しく批判されたことを受けてか、施設養護はあまり評判がよくない。ただ日本という国や国民性を考慮すると、単純に「世界が養子縁組なのだから日本でもそうしよう」とはすぐに言うのは難しい。血のつながりは日本ではかなり強烈に作用するからだ。(海外では白人夫婦が黒人の子どもを養子にとることもめずらしくはない)
じゃあ、実際海外ではどんなものなのか。ドイツの例を見てみたい。以下、翻訳である。
統計的にみると、この数年間養子縁組の数は減少している。2001年、ドイツでは合計5909人の子どもたちが養子となった。そのうち、4120人(約70%)の子どもがドイツ国籍を取得した。外国国籍を取得した子どもは1789人だったが、その約半分弱(48%)の子どもが養子縁組の際に母国へと連れていかれた。5909人の養子の中で該当する外国養子(Fremdadoptionen)は、2226人であった。それ以外の3683人の子どもたちは親戚や義理の両親に引き取られている。養子による養護の始まりにおける家族状況に関しては、次の通りである。2776のケース(47%)で、手放した親又は養育権をもつ親は独身だった。養子として預けた405人は結婚していて同居している両親だった。154人は結婚しているが別居中の両親だった。また、養子として受け入れた2034人の親が離婚していた。未亡人は236人だった。89人の子どもが孤児(Waisen)であった。215人の子どもの家族状況は不明であった。肉親の大部分(93%)が承諾説明書で自分の子どもの養子委譲に自ら同意している。司法上、424件の同意表明書が取り替えられた。その197件(46%)が未婚の親/未婚の母だった。
この一文から色々考えることはできそうだ。
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