Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

中華ソバ坂本@銚子 千葉県で一番僕が愛する中華そば!

人にはいろんな好みがあります。

トレンディーなラーメンが好きな人もいる。昔ながらのあっさりとしたラーメンが好きな人もいる。濃厚でドロドロっとしたラーメンが好きな人もいる。店主さんのお人柄に惚れて常連になる人もいる。中国料理としてのラーメンを愛する人もいるし、蕎麦屋のラーメンを愛する人もいる。安くて庶民的なラーメンが好きな人もいるし、高級なラーメンを愛する人もいる。

ラーメンの魅力は、その味のバリエーションの豊富さにあって、それゆえに、ここまで根強い人気を誇っているんだとも思います。他の料理でここまでむきになれる飲食店ってないですよね。「●●軒がうまい!」、「いや、××亭の方がいい」、そういうやりとりも、ラーメンならではかとも。

ただ、「うまい」「まずい」、「好き」「嫌い」という尺度ではなく、「限りある人生の中で今自分が食べる意味や価値のある一杯」という尺度で考えると、なかなか語れなくなります。「今、食べるべきラーメン店はどこですか?」という質問に、さっと答えられる人はいるでしょうか。

好きなラーメン店や人気のあるラーメン店を答えるのは簡単です。「主観的判断」や「客観的判断」は、どちらも基本的に単純ですから。自分の趣味嗜好については、他者は文句が言えないし、「人気」=「売れ行き」という客観的判断も、これまたなかなか否定できません。僕は、そのどちらの判断も疑っているので、この二つの判断ではない判断を自分に課しています(すごい面倒くさい人間なので…)

それを、とりあえず「人間学的判断」と言っておきます。簡単に言えば、一人の人間が徹底的に考え抜いて、悩み抜いて、そして、あらゆる価値や判断を留保して、本当のラーメンとは何かを考えながら、苦しみながら決断した先の一杯、ということです。それは、自分の単なる主観(感覚的判断)でもなく、また外部の数値化できる判断(データ的判断)でもない、人間の理性の限界に向かおうとする判断です。

「好き嫌いを超えて、また数字を超えて、このまさに今、ラーメンを語る上で、食べておかなければならない一杯」。そういうラーメンというのもあると思うんです。その例としてよく僕が使うのが、神保町の「さぶちゃん」です。かなり個性やクセがあるので、好き嫌いは分かれると思います。が、やはり「食べておかなければならない一杯」だと心底思います。

千葉県のラーメンで、この考え方を適用すると、僕がどうしても挙げたいのが、銚子にある老舗で無名のお店、「中華ソバ坂本」なのです。

考え抜きました。本当の本当に価値のあるホンモノの中華そばとはどこの一杯だろう、と。多分そのために、僕は食べ歩いていたんだと思います。今の自分が知り得る限りで一番「意味」のあるお店がここだと思います。

現在の店主さんのお母様?が始められたお店。ただし、その当時は、ラーメン屋さんではなかったそうです。お店自体としては、戦前から存在するということになります。

転機が訪れるのは、戦後。今から60年くらい前に、つまりは敗戦から数年後だったそうです。この当時、あまり商いがうまくいかず、どうしようかと困っていた時に、「流れ」の料理人が銚子にふらりとやってきたんだそうです。今の人にはあまりピンとこないかもしれませんが、当時は、「旅人」みたいな「包丁人」が全国をまわっていたんですね。

店主さんにお話を聞きましたが、名前もどういう人物かも覚えておられないそうです。日本人だったそうですが… 

その流れの包丁人から教わったのが、こちらのラーメンなんですって。これには驚きました。

つまり、銚子のお店なんですけど、その味のルーツは、銚子以外の場所、となります。その場所がいったいどこなのか。何県なのか。どういう勉強をされた方なのか。いっさい分からないんです。

ただ、「味」として、今も銚子に残されている。それだけなのです。

これを聴いて、僕は震えました。和の要素がうまくレトロな中華そばに入り込んだこちらのラーメンは、流れの料理人から伝来されたもので、しかもそれが戦後間もない頃だった、と。

その誰だか分からない「流れの料理人」のことを想像しながら、このラーメンを食べるとまた違った味わいになるのではないか、と思われます。

さて。

こちらのメニュー構成はこういう感じです。

タクシーの運転手さん曰く、「ここのカケラーメン、僕が小さい頃によく食べに行ったよー。銚子の子どもたちは、みんなこれを食べているよ。昔、この近くで、サーカスがやってたんだ。サーカスを見て、楽しんで、そして坂本でラーメンを食べる。それが本当に楽しみだったんだ」、とのこと。

この話は、店主さんとの話とも合致する。「戦争が終わって、今のラーメンを出してから、ものすごい売れたんだ。すごい人気店だったよ。色んな人たちが食べに来てくれたんだ」、と。

きっと今の60歳~80歳くらいの人たちが若い頃、この付近では、みんながサーカスを楽しんで、その後、家族等と一緒に、坂本のラーメンを食べたのでしょう。

このお店では、そういうことをイメージしながら食べてみると、もっともっと味わい深くなると思います。みんな口をそろえていいます。「銚子にも色んなラーメン屋さんがあるけれど、銚子の人間はみんな坂本のラーメンが大好きなんだよ」、と。

店主さんにも言われました。「なんで、うちのお店を知ったの?」、と。

本当に素晴らしいお店でありながら、決して表舞台(メディア等)には出ないお店。でも、地元では知らない人はいないくらいに有名で、よく知られたお店。加えて言うならば、いつでも地元のお客さんで溢れ返っているお店。

この日も、既に満席でした。

上にも書きましたが、「意味」のあるラーメン、ラーメン店というのは、こういうお店のことをいうんだと僕は思います。「食べる価値」と言ってもいい。

ラーメンとは何か。そして、ラーメン店とは何か。それを考える上で、まずここのラーメンを食べることが(千葉のラーメン店等)には必須だと思います。

それこそ、「文化としてのラーメン」がここにあるのです。

話は長くなりました。

今回は、ラーメン(420円)をいただきました。

   

もう、語りつくせぬお味です。

今風のこってりラーメンではないですが、それこそ60年前のこってりラーメンって、こういう味だったのかな、と思うような味わい。今で言えば、「あっさり」なんでしょうけど、よくよく考えると、「あっさり」でもない。

そして、口の中に広がる和風の味わい。これもまた「坂本」でしか経験できない和風感なんです。これ、言葉にするのは、とても難しい。似ている味がないので、「~っぽい」ともいえない。でも、突出した味わいでもなく、すんなり受け入れられる。そして、「はー、日本人でよかった♪」って思える。

麺は老舗店だけあって、柔らか目ですが、これはこれでいいんです。この場所で食べるラーメンですから。高齢者のお客さんも多いです。なので、これがベストの麺なんだとも思います。

そして、こちらのトレードマークとなっている昆布。

昆布ダシの美味しさが坂本の味の決め手となっていますが、それだけじゃなくて、そのまま昆布が入っているんです。そこが、またなんとも比類のなさになっている、というか。

中華ソバという冠が付いていますが、まさに日本で生まれた中華そばのイデアそのものといいますか。本当に、深く、そして、味わいの豊かなスープになっていると僕は断言したいです。

餃子も、老舗店らしく、これ以上にない出来栄えでした。

あまり餃子については語れないのですが、ここの餃子は端的に王道で、お手本となりそうな餃子となっています。

銚子で、まぎれもない老舗の人気ラーメン店です。

僕の中では、千葉県内で最も価値の高い一杯だと思います。420円のラーメンですが、その価値ははかりしれません。

全国レベルで見ても、本当にハイレベルだと思いますし、それよりなにより「伝統」があります。「権威」こそは、近所の「大塚支店」に及ばないかもしれませんが、「伝統」としては決して負けていません。

最近、思うんです。僕は、「権威」のない「伝統」のあるお店が大好きなんだって。もちろん「権威」と「伝統」の両方があれば素晴らしいと思います。大勝軒や春木屋なんかは、まさにその典型ですよね。でも、僕は「権威」がない、でも伝統のあるお店が好きです。

自分もこれから、「権威」と戦いながら、かつ「伝統」を大切にする人間でありたいと思います。そういうことを考えさせてくれるのも、やはり坂本なんだと思います。

ちなみに、現在定休日は水曜日。10時30分~17時(スープ切れ)まで、です!

コメント一覧

ラーメン大好き
小さい時から
祖母に連れられて食べに行ったのが中華坂本です。
ラーメンも美味しいが、カレーライスも絶品です。
具は、肉と玉ねぎ近くにカツカレーの有名な一心食堂もありますけど。飾り気のない親父さんが、一生懸命作ってくれます。銚子に生まれて、本当によかった!
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「千葉 銚子<最強エリア>」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事