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Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

若者離職率から見えてくるコミュニケーションの重圧

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121031/k10013152371000.html

興味深い記事があった。厚生労働省もいろいろやっているなぁ、と改めて実感。

厚生労働省の発表もあった。

http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/24.html

大卒
http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/dl/24-18.pdf

***

第三次産業の離職率の高さが浮き彫りにでた感じがする。また、第二次産業の離職率の低さもまた顕在化されたような感じがする。

僕の持論だけど、ADHDやアスペルガーが世に広まった背景に、この第三次産業化がある、ということと合致する。コミュニケーションが必要な労働が増えたがゆえに、そのことが問題となり、「発達障害」が取りざたされた、と。うつ病の広まりや、過呼吸なども、またこのコミュニケーション労働ゆえの問題ではないか、とも思っている。

医療・福祉、高卒のデータを見ると、実に半分以上が離職している。

このデータから、僕が一番強く思うのは、「なんでこんな産業構造になってしまったのか」、ということだ。これまでの人類史の中で、ここまでサービス産業を中心とする第三次産業まみれの社会はなかった。僕らの人類史では、人間のほとんどが第一次産業に従事していた。だから、とりたてて「コミュニケーション力」なんていう怪しい言葉を使う必要もなかった。商人たちは、世界どこでも、話術を必要としていた。近代の公教育のはじまりの基にあるのは、ハンザ時代の商人の交渉力だった。

今や、ほとんどの人間が生産者ではなく、商人になってしまった。生産は海外に委ね、日本人(あるいは先進国の人々)は、皆、売り買いにかかわるようになってしまった。

本当に大切なもの、例えば食べるもの、着るもの、住むもの、そういうものを作る仕事は、全部海外まかせ。でも、上のデータが示すように、日本でも、そういう生産的な仕事の離職者は少ない。インフラにかかわる仕事の離職率が低い、というのは、まさにそのことを示している。

そういう人間の基礎の部分を作る仕事は、他人とのコミュニケーション力はあまり問われない。人とかかわるよりも、そのものとかかわることが重視されるからだ。だから、人間関係のストレスは、ショップ店員や飲食店従事者のストレスよりもはるかに低い。 

さらに日本人という島国精神をもった人間たちは、「他者」とかかわることがとにかく苦痛である。宗教的にも、「隣人愛」のない人間たちであるがゆえに、他人との交渉は極端に苦手な人々だと思う。もちろん海外においても、そういう交渉はとてもしんどいものではある。が、日本人は、その中でも突出して、他者とのコミュニケーションに苦痛を感じる性質をもっていると思えてならない。

だから、離職の問題も、うつの問題も、ワーキングプアの問題も、ニートの問題も、貧困の問題も、産業構造の問題から出発する必要があるのではないか。

僕らが今、一番必要としているのは、「人とかかわらない仕事」だと思う。もう、みんな、人間関係に疲れ切っている。作り笑いに疲れ果てている。感情を殺して、他人に頭を下げることに嫌気をさしている。人とかかわらないで、ただ黙って生産する仕事。あるいは、人とかかわるよりも、事物を育て、作り、完成させ、出荷する、そういうことに力を入れられる仕事を一番必要としているのではないか。

でも、考えてみれば、生活のライフラインや衣食住にかかわる仕事は、最も人間生活にとって大事な仕事でもある。そういう仕事は、派手さこそないが、一番やりがいのある仕事でもあるし、また、変な人間とかかわる必要がない分、ストレスもかからない。問題の根源に、人とかかわる仕事しかない産業構造のひずみがあるように思えてならない。

グローバル化も大いに結構だ。が、足元をぐらつかせながら、ひたすらに海外に追従するのは、とても危険なことだと思う。ギリシャやスペインなどを見れば、それは一目瞭然だろう。スカンジナビア諸国は、グローバル化に対応しつつも、意外と冷静に足元をみている。(ただ、スウェーデンなんかは、新自由主義の風が押し寄せていて、足元がぐらつきつつあるようだが、、、)

この国の仕事が、第三次産業中心であるかぎり、人は病み続けるだろう。第三次産業は、勝者を生みやすいのと同時に、敗者をたくさん作り出す。もちろん第二次産業もそういう側面があった。が、第二次産業は、精神の荒廃までは引き起こさなかった。工場労働者の悲惨な状況を考えると、単純にそうはいえないかもしれないけれど、少なくとも第三次産業ほど、コミュニケーションスキルは強要されなかった。

教育界は、「コミュニケーションスキル」を教えることに躍起になっているが、そこには限界がある。コミュニケーションが苦手な人は行き場をなくすだけである。逆に、教育によって、みんながコミュニケーションスキルが向上したら、それはそれでとても恐ろしいことだと思う。

だから、一番大事なのは、コミュニケーションスキルを問題としない安定した労働環境をどう創造するか、ということだと思う。様々な仕事があり、その職業をそれぞれの能力に応じて、選択できる社会。そして、どの仕事も尊重される社会。どの仕事であっても、安心して働ける社会、そういう社会が、一番健全な社会だと思う。

人間の「生」から切り離された仕事ばかりだと、人はどんどん荒んでいくに違いない。

労働環境や産業構造の問題は、経済の問題というよりは、政治の問題であり、また教育の問題でもある。コミュニケーションを必要としない仕事を目指す人のための窓口、受け皿、可能性は常に残しておきたい。そして、その仕事が、みんなから尊重され、大切にされる社会づくりが欠かせないだろう。

コメント一覧(10/1 コメント投稿終了予定)

マルボロ
いろいろ同感
「離職率」で検索し、ここに着地しました。第三次産業に就業し11年。いや~ 常日頃思っていることを言葉で具現化されてて大変興味深く読ませて頂きました。オモロイ。
私の職種は特にコミュニケーション能力を要する仕事でして(今は第一線は退き、管理する側ですが)、離職率の高さに日々辟易しております。コミュニケーション能力ってホント何なんですかね?OJTで「この仕事は高いコミュニケーション能力が必要です。これから学んでいきましょう」ってやっているを横目に、いつも違和感を感じています。そりゃ、学ぶべきテックニックはあるでしょうが、そもそもコミュニケーション能力って人から学ばなきゃならんるものでしたっけ?人が成長の過程で自然に身に着けていくものじゃなかったっけ? 言語学習に近いものがあるわけで、それをいい大人が今更学ぶって・・・と考えてしまいます。 これまで多くの退職者をこの目で見て
参りました。病んで辞める者も少なくありませんでした。これからもそれが続くのは自明の事ですし、増加するのではと考えています。何らかの資源を採取する事に対しての労働価値、加工・製造することに対しての労働価値など、これらが本来は全うだろうというのは同感です。コミュニケーション能力とか、人と人の繋がりに労働価値を見出そうとする労働市場は、「そもそも、それって売り物だったけ?」という気がしてなりません。第三次産業のすべてを否定する気は毛頭ないんですが、生活必需品が市場で投機対象にされている危うさと同等の匂いがする、今日この頃です。「サービス」とは何らかの事象に対しての付加価値的なものだったのに、「サービス」そのもの切り離して商売した時点で、面倒くささ、ストレス、持続性の無さに気づき始めたように見えます。ホットドックとマスタードだから旨いのであって、マスタードだけは食えたもんじゃねえ・・・みたいな。。

kei
廣田様

コメントありがとうございます。コミュニケーションの内実はもっと吟味して議論しないといけないですよね。

それを踏まえた上で、現在の労働環境の問題を指摘すべきではあると思います。

が、そこまで原理的に突き詰める話とは別に、その表面上の問題として、コミュニケーション依存の労働しか「選択肢」がないことを問題にしたいと思うのです。上の離職率は見事にそのことを示しているように思います。

日々、学生を見ていて、「この人たちは、きっと人と話さない仕事なら、活躍できるんだろうな」、と感じる時が多々あります。特に「非エリート層」です。

コミュニケーションが極度に苦手なので、そういう仕事に就いてもとても苦労します。かといって、他の選択肢はなく、ただそれに甘んじるしかない。そういう状況を唾棄できないものでしょうか?!

動植物となら愛情をもって育てられる人もたくさんいます。対人間となると厳しくなる若者をみるにつけ、「なんとかならないだろうか」と思ってしまいます。

考えれば考えるほど、答えの出てこない問題でもありますね。
廣田鉄斎
賛成、しかし、反対。
コミュニケーションは「社会的(ポリス的)存在」としての人間の「本質」にかかわる部分だと思います。だから、コミュニケーション全般を全面否定するのはまずいのでは? いま求められている商業的・サービス業的コミュニケーションが「疎外されたコミュニケーション」だという発想は古いでしょうか? わたしは自然ともコミュニケートしたいし、「商売を離れ」赤の他人と何気ないコミュニケートをしたくなることもある。人付き合いの悪いわたしでも、そういう時間はハッピーな時間です。つまり、コミュニケーションにも色々あるのでは?
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