2015年もそろそろ終わっちゃう。
ずっと書き途中だった「音楽記事」を呼び起こし中です(苦笑)。
今回は、今年10月にリリースしたlynchのフルアルバム。
このアルバム、まさに今、よく聴いています。(冬に聴きたい曲がいっぱい!)
久々に「全曲解説」☆
01.INTRODUCTION
優雅で美しく、しかし「嵐」を予感させる静かなSE。クラシック作品のよう。
02.D.A.R.K.
そして、間をおかずに一気にlynch worldへと展開する。ヘヴィーなギターリフに重なる美しいピアノの旋律。狂気と美が共存する荘厳な一曲。グロさと美しさと切なさを感じる大陸的な一曲。「あなたに捧げたい この闇を この愛を」というフレーズが印象的。最後まで不気味に鳴り響くピアノがやっぱり印象的。
03.ANTARES
ここに来て、lynchお得意のパワーチューン。「これぞ、V系の伝統!」って感じのカッコいい曲。でも、ただ伝統を継承するだけでなく、ところどころに「今っぽさ」をちりばめていて、「進化」も感じる。「Fight!」ってところも面白い。「廃に満ちたこの海へ 深く沈みなさい」と何度も歌うところに、この曲の面白さがある…かな!?
04.EVOKE
先行シングル曲ですね。今、ROUAGEが活動していたら、こんな感じなのかな?と思うような曲。90年代後半V系の雰囲気を漂わせつつ、でも、音的には10年代のラウド&ヘビーサウンド。やっぱlynchってカッコいいよねって素直に言える曲。シングルと微妙に違うところも面白い。
05.GHOST
ここに来て、シャッフルビート♪ 80年代っぽさを少し感じ、どこか黒夢っぽさも感じながら、新しさも感じられる未来永劫系サウンド。空間系のギターのリフに僕は心踊りましたね。今の僕には、02や03よりこういう曲の方が聴きたくなる。大人になったからかな。でも、2:04頃に不敵な笑いが零れ、むちゃくちゃ早いツービートになって暴れ狂う。この辺もまたlynchの遊び心が表れていて面白い。ライブでは盛り上がるんだろうなぁー。
06.ILLUMINATI
タイトルを見て、「お、マリス?」って思った人もいる(!?)。これは実験的な曲かな。基本的にlynchっぽいサウンドだけど、リズム的には結構面倒くさいことをしている。ところどころにノイズが入っていて、80年代からV系を好んでいる人にはたまらない「おまけ」となっていますね。「悪魔よ 黒の羽根で飛び込め 無限の未来へ」と歌い、歌詞はどこかポジティブ。そうか、この曲、「ポジパン」だったのか…。
07.ETERNITY
先行シングル曲。この曲を聴いて、「やっぱ、lynch、好きだわー」って思った。V系の歴史を感じる。タイトル通り「永遠」の「別れ」がテーマになっている。ヴィジュアル系は、もともと暗くて、切なくて、どこまでも絶望的なシチュエーションを大事にする。根底に流れる「死」というテーマで挑んだlynchの今を証明する確かな一曲。
08.FALLEN
いきなり「今すぐに~」と歌う曲。この曲もすごい気に入った。何気に16でハイハットを刻んでいて、どこかダンサブル。でも、曲はどこまでも退廃的。このデカダントな香りを出せるヴィジュアル系バンドって、消えたよなぁ、と。ギターソロもすごい泣きのギターになっていて、気持ちよい。LUNA SEAっぽさも全快!?(歌詞カードの自体がLUNA SEAモードなんだよなー) サビの「ああ」ってところが僕的にキュンと来た。僕ら世代のかつてのV系好きの人に是非聴いてもらいたいなぁー。
09.BEAST
ここで、演奏的に遊び心満載の曲が登場。楽曲的に楽しい構成になっていて、メンバーたちも楽しく演奏できそう。本作の後半戦を感じさせるパワフルでストレートでメロディアスな一曲。何気に映画『復讐したい』の主題歌になっていたりする…。
10.INVADER
DARK系のヴィジュアル系バンドには絶対必要な「破壊曲」。ライブ向けの突き抜ける曲。何気にベースのスラップがすごい素敵。キャリアたっぷりのこのバンドならではの一曲かな。
11.COSMOS
これまたダーク系ヴィジュアルの王道的な楽曲。激しさと繊細さが共存している曲で、途中、とても退廃的な音に変わり、最後は突っ走る感じ。ヘヴィーさと壮大さと疾走感が代わる代わる立ち現れていく。今っぽいサウンド構成になっているって感じかな。サビはめっちゃカッコいいです。
12.MELANCHOLIC
ギタリストが作った曲だなぁっていう感じの曲。タイトル通り、むっちゃメランコリックな曲。LUNA SEAが好きな人なら絶対気に入ると思うな。ドラムのリズムパターンもちょっと凝ってて、真似したくなる(苦笑)。真夜中に、ひとりで、膝を抱えて聴きたい曲。最後のアウトロのギターの音がとっても心地よい☆
13.MOON
そして、ラスト! MOONですよー。lynch渾身のフルアルバムのラストを心から味わいましょう、的な。結構キャッチ―なはずなんだけど、そこはlynch、キャッチーに聴こえてこない…(苦笑)。サビもどこか不思議なリズムになっていて、素直にノレない…。ある意味で、クセの強い曲になっているんじゃないかな、、、と。僕だったら、12のMELANCHOLICで「打ち止め」にしておくかなぁ。そうじゃなくて、この曲をラストにもってきたところに、「彼ららしさ」がある気もするなぁ。。。
2015年。
ヴィジュアル系のみならず、音楽業界はとっても静かでした。
音楽の危機も、もはや叫ばれなくなりました。
(危機から絶望へ、という感じかも!?)
でも、そういう時代だからこそ、lynchのようなバンドが必要なのだろうと思います。
今回の作品を聴く限り、lynchはヴィジュアル系の王道を突き進んでいます。
「伝統」を背負うバンドになりつつあります。
merryもそういうバンドだと思いますが、今やmerry以上にヴィジュアル系バンド。
変な話だけど、もっと業界が彼らをサポートしなければいけないのでは?と思います。
ヴィジュアル系の歴史もそろそろ25年~30年になります。
今や、(信じられないけど)世界の音楽カテゴリーになっています。
なんていうんだろうな。
「売れる」とか「売れない」とかじゃなくて、ヴィジュアル系の正当な伝統を守る、というある種の政治的な動きも必要なのでは、と思うんですよね。今売れてるかどうかだと、たしかに「ゴールデンボンバー」なんかには敵わない。
でも、lynchほどに、まっすぐにヴィジュアル系バンドの道を歩んでいるバンドはそうそういません。売れるか売れないかだけで考えたら、たしかに厳しいかもしれない。だけど、こういうバンドがいなくなったら、ヴィジュアル系の伝統は本当に崩れ落ちてしまう。それならそれでいいのかもしれないけど…。
一つの<音楽×スタイル>としてここまで確立されたのって、何気に「ジャニーズ」と「ヴィジュアル系」だけなんじゃないかなって思います。「アイドル」もある意味でジャンルとして確立されてますけど…。(ジャニーズも、近藤さんや田原さんの残した道を守ろうと頑張っているように思えます。事務所は離れたとしても…)
ただ、ジャニーズやアイドルが「上から」なのに対して、ヴィジュアル系は「下から」の発展を見せています。ある意味で、日本の「下の層」の人たちが、下剋上精神で築き上げてきたもの、というか。ヴィジュアル系シーンの中で、いったい何人の人が亡くなったことだろう、と考えると、ホント文化として承認されるのに時間がかかったと思います。
一般の人は、今も昔も、ヴィジュアル系なんて聴きませんし、興味もありません。
いつでもそんなもんです。
でも、一般社会から零れ落ちた人、突き落とされた人、世間から隔離された場所にいる人、誰も何も信じられない人にとっては、ヴィジュアル系サウンドは、大きな力となります。
一般人が共感できないことを歌うバンドばかりですからね。lynchの音世界は、きっと幸せな人には理解できないことと思います。生きる辛さや、苦しさや、孤独に押しつぶされそうな人のための「音」だから。
日陰にいる人たちのための音楽。
幸せじゃない人のための音楽。
ヴィジュアル系の音楽に救われた人がどれだけいることか。
そこに、文化本来の大きな力があるんです。
2016年。
世界はもっともっと混乱するように思います。
日本国内も、もっともっとカオスに陥りそうに思います。
自分を保つのも難しい時代です。
先も見えない時代。
それに抗うことはやはり難しい。
その中で、絶望せずに生きていくための武器。
その一つが、音楽、とりわけV系の音楽だったりするのかな、と。
V系の精神は死んでないんだ。