散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

今日の庭から

2007-05-05 22:12:25 | 思考錯誤


今私のお気に入りの薔薇はWilliam Shakespeare 2000である。
紫の影を従えた濃紅色の花弁はビロウドのように艶やかで豪奢だ。
色の美しさは言う間でもなく、実に魅惑的な香がある。
中世では人を惑わすとして教会が薔薇を持つことをタブーとしたという事だけれども、確かにそんな魅力がある。
日暮れなずむ頃、濃い紫の影をまとった花はまだ、ほのかに香っている。

もう一方の薔薇には16世紀フランスの詩人Pierre de Ronsardの名前がつけられており、これは甘酸っぱいようなかわいらしい香を振りまく。姿も愛らしい。



暖冬で虫が今年は多いようで、毛虫、青虫が花の蕾を傷つけたとはいえ何とか元気に咲き始めた。
毎朝毎晩色々なアブラムシ撃退作戦を繰り広げているにもかかわらず敵はあっという間に定位置について何事も無かったかのように見えるのが不思議に思う。
大した奴等だな、と妙に感心しながらも手は自動的に攻撃再開。
優雅な気分で香、色姿を愛でる前に戦いがあるのだよね。

昨日はエンゲルスキルヒェンと言う街での展示を済ませてきた。
社会主義者エンゲルスの父F.エンゲルスの旧邸宅で中々りっぱな屋敷が会場である。
庭に聳える赤ブナは当時植えられたものだろうか、かなりの巨木で堂々とした風格であり、窓際のアールコーブからは外を見ると窓壁を伝う満開の藤房が絵のようであった。
夜、窓を開けているとMelolontha melolontha L - ヨーロッパコフキコガネが迷い込んできて窓枠にひっくり返っていた。この甲虫はどうやらひっくり返ると具合が悪いようで、中々自力で起き上がれない。
よく見ると中々美しい甲虫である。
食欲旺盛なこの虫は30~45年周期で大量発生し、森をすっかり食い尽くしたので害虫として嫌われる事もある。DDTをかけても死なないと言われるほど丈夫な甲虫だが、昔はこれを食べた地方もあるらしい。
ヨーロッパコフキコガネのブイヨン。
脚と翅を外して内臓を出し、バターでカラッと香ばしくといためて鶏がらスープに入れる。牛レバーの細切りをいれ、仕上がりにチャイブとクルトンを浮かべて出来上がり。触感を楽しんだのでもあろうか?
またはキャンディーのなかに仕込んだコフキコガネが一時はやったという1925年の新聞記事に残っている。生で丸齧りするという人もいたようだ。
私は何でも試しに食べてみる方だが、これには抵抗を感じてしまう。

しばらく指にに乗せて観察していると落ち着いたのかすっかり休憩体勢に入ってしまったが、そのまま指飾りとして連れてかえるわけにもゆかないので、暗くなった庭の石楠花に彼の寝場所を見つけた。