WSJにWhy stocks are rallying in the midst of a war and soaring inflation?という記事がでていた。「何故戦争と物価上昇の最中で株価が上昇しているのか?」という話だ。米国株が上昇したというのは、3月8日を今年の底値(S&P500の)としてその後急反発したことを指している。もっとも先週あたりは少しヨタヨタしていたが。
記事は6つの理由を挙げている。
1.歴史的に見ると株価に上昇余地がある。
金利上昇は株価の頭を押さえると考えられているが、実際には連銀が政策金利を引き上げた後株価が上昇していることが多い。
1990年以降5回の政策金利引き上げを見ると株価は第1回目の金利引き上げ後下落したが6カ月後には上昇し、1年後には株価は80%上昇した。
一方でリセッションを懸念する投資家もいる。ドイチェバンクのアナリストは振り返る過去を70年に広げると11回の金利引き上げ局面の内8回はリセッションを伴ったと述べている。
2.経済はなお強い。
3月の非農業部門雇用者増は431千人で11ケ月連続で400千人を超える雇用が生み出された。これは1939年以降最高に強い雇用記録である。また賃金も堅調に伸びている。3月の時間給は前年比5.6%上昇した。
3.実質金利は以前としてマイナスである。
表面金利からインフレ率を差し引いた実質金利はなおマイナスである。5年の物価連動債の先週の利回りはマイナス0.6%で昨年末のマイナス1.6%からは上昇しているが、2018年につけた1%よりかなり低い水準に留まっている。
4.個人投資家による底値買い
個人投資家によるミーム株(はやり株)や利益が出ていないハイテク銘柄の買いが相場を支えている。
5.強い企業業績への期待
今週から本格化する第1四半期の決算発表で多くの企業は原材料価格の上昇を製品価格に転嫁し利益率を維持・上昇させると見るアナリストが多い。
FactSetのデータによるとS&P500の第1四半期の純利益率予想は12.1%で過去5年の平均より11.2%より高い。
6.テクニカルな急反発
インフレ懸念やロシアのウクライナ侵略などでderisking(リスク回避)のため株式を処分していた機関投資家が相場の反発に取り残されることを懸念して株を買いに回ることによる株価上昇が起きている。
米国企業は回復力が強い。そしてその企業も発行する株式もまた回復力が強い。その理由の一つは中央銀行が日本のように無制限で規律のない金融政策で企業や家計を甘やかすのではなく、必要に応じて政策金利を引き上げるというdiscipline(規律・鍛錬)を与えていることによる。そしてそれが反発力のある株式市場を生み出していると思う。