梅雨の最中、コロナウイルス感染も拡大傾向ですから自宅で好きな歴史本でも読んで過ごすのが一番良いでしょう。
多くの本を安く読むには「図書館で借りる」「ブックオフなどで古本を探す」「アマゾンのKindle Unlimitedで無料の電子本を読む」という方法があります。
思い立ったらその場で読みたい本が読めるという点で電子本は優れているのですが、残念なことに読みホーダイの中にはあまり歴史本はありません(というか日本語のUnlimited全体があまり充実していません)。
そんな中でたまたま見つけたのが磯田道史さんが書いた「『司馬遼太郎』で学ぶ日本史」(NHK出版新書)です。
この本は司馬遼太郎の歴史観を磯田さんが解釈しながら現在に日本の弱みに言及しているものです。この本はコロナウイルス感染問題の2年以上も前に書かれた本ですが、司馬遼太郎が指摘した日本人の弱みはいみじくもコロナ対応で露呈してると思いました。
それは本の最後の「おわりに」の次の文章です。
「日本型の組織は役割分担を任せると強みを発揮する一方で、誰も守備範囲が決まっていない、想定外と言われるような事態に対してはレーダー機能が弱いこと。また情報を内部に貯め込み、組織外で共有する、未来に向けて動いていく姿勢をなかなかとれないといった、日本人の弱みの部分をその作品中に描き出しています。」
磯田さんは想定外の事態への対応力が弱い日本人の特性を別の個所で「日本人というのは、前例にとらわれやすい『経路依存性』を持っています。」と分析しています。
しかし司馬遼太郎は日本人の弱さを指摘しているだけではありません。長所にも言及しています。磯田さんは司馬遼太郎が一番伝えたかったことは「相手の気持ちに溶け込むことができる『共感性』だったと思う」と述べています。
そして強い共感性を持って人の命を救うことに生涯をささげたのが幕末の医師緒方洪庵だったと磯田さんは述べています。
今回のコロナウイルス感染問題でも前例主義にとらわれる日本はアメリカやイギリスのような大胆で迅速なワクチン接種対策を展開できませんでした。ここにきて世界各国のワクチン接種が前例化してきたことで日本のワクチン接種もペースが上がりつつあるようですが。
一方司馬遼太郎が持ち上げた日本人の美質の共感性はどうでしょうか?
私は休業要請などで資金面の苦労が続いている人への持続化補助金など補助金の交付が遅れているといった話を耳にするたびに、お役所仕事を少し見直して本当に困っている人に迅速に寄り添えないものか?と思います。つまり官における「共感性」が劣化しているのではないか?と感じるのです。
この辺りアメリカはある意味実に大雑把でコロナ支援金の受給資格のない海外勤務経験者にまで給付金小切手を配布するという有り様でした(もっともその後の管理はしっかりしている可能性がありますから不正受給をしてはいけまん)。困っている人には早く支援金を配るがもし受給資格に該当しない場合などは後日返金を請求する(あるいは返金しない場合は各種の交付金などと相殺する)という弾力的な対応があってよいと思います。
「想定外の事態への対応力不足」を「共感性」で補ってきた日本において、困っている人に対する「共感性」が劣化すると良いところなしになってしまいますね。